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105話 『借用』

 既にそこに暴食スライムは居ない。

 元々、暴食スライムが居た場所には無数の魔核が散らばっている。

 それはレッドスライムの成れの果てだ。

 レッドスライムが捕食していたモンスターも含め、拳の衝撃の余波で全てを蹴散らした結果だろう。


 そして、その爆心地の中央には、魔核とは異なるキューブ状の物体があり、うっすらと青く輝いている。

 そしてその隣には同じく青い光を放つ魔核も存在している。


『む。あやつ、我の身体を抱えたまま休眠しおった』


 確かに、暴食スライムを倒した訳だが、アルの肉体は現れていない。

 だが、アルの言葉によると拳の衝撃でアルの肉体すら討伐してしまったのではなく、暴食スライムが抱えたまま魔核化してしまったらしい。

 否応なくそうなってしまったのか、暴食スライムが意図的にそうしたのかは判らない。

 だが、別に暴食スライムは死んだわけでもない。

 リスボーンした後に返して貰えば良いだろう。


「暴食スライムが復活したら返して貰うよう説得するさ。それが厳しければアルの肉体を新たに造るでもなんでもしてやる」


『ふむ。こうなってしまえば仕方がない事でもある。今はその約束で許してやる事にしよう。今後も長い付き合いになりそうであるしな』


 ドラゴンの肉体を造ろうなんて、実現性を無視した約束に聞こえるかもしれないが、実はそんなに破綻している訳でもない。

 コアを7つ集めれば世界を造れるのであれば、幾らかがあればドラゴン1体程度の肉体を造るなんて大したことでもないだろう。


 この世界にはまだ4つ未知のコアがある筈だ。

 ショウゾウ先生とした契約により、今後は残ったモンスターに対応するのが仕事になる。

 その一環でコアを探すのは今後の人生の方向性としても別に矛盾もしていない。


「さて、とりあえず1つじゃ流石に無理があるかな」


 そのコアの1つ、青のコアが落ちている。

 アルはそのコアと俺の相性が良いような話をしていたが、本当に制御できるかは試してみないと判らないだろう。

 まずは実験とばかりに、コアへと手を延ばす。

 だが、そのコアがいきなり視界から消えた。


「――――お前は……。逃げ出していたのか?」


 コアは自然と消えた訳ではない。

 そいつを横からかっさらっていった何者かが居ただけだ。

 身体のサイズは子供程度、反面、目鼻口、手足のサイズがアンバランスにも大きい。

 そして、それらの色は緑色だ。


『グブブブ』


 レッドスライムの元となっていたゴブリンに間違いはない。

 恐らく、暴食スライムごとやられる寸前、レッドスライムとしての構成部分全てを投げ出して、本体のゴブリンだけなんとか脱出でもしたのだろう。

 だが、その状態であれば強さとしてはほぼ最弱。

 レベルが1だったとしても工夫次第でなんなく倒せる程度だ。


 問題は口を大きく開けて青のコアを呑み込もうとしているところのみだ。

 ゴブリンが青のコアをまた取り込むと、またレッドスライム相当まで進化する可能性がある。

 その為の材料となる魔核なら辺りに無数に転がっているため、その進化は急激に行われるだろう。


 だが、呑み込むまでの時間があれば、その前に接近し討伐するなんて朝飯前だ。

 そう思い、足に力を込めようとした訳だが――――、


「くっ! まだ痺れが取れてないのか」


 暴食スライムの紫色の触手により受けた麻痺だ。

 時間の経過と、アルが封印されたアミュレットの効果でだいぶ改善していたが、未だ残っていた。

 それが魔核が散らばる床の状態と相まって、足がもつれて転んでしまった。

 この状態では、ゴブリンが青のコアを取り込む前に間に合わない。


 せめて紫色の触手による麻痺を受けていなければ、仮に遠隔攻撃する手段を持っていれば違っていたのだが――――、


「いや、あるじゃないか。こんな事も想定していたとすると流石だなあいつは」


 手の届かない位置にあると思っていた手段――それは、既に所持していた。

 制服の右ポケットに手を入れると、そのアイテムは間違いなくそこにあった。

 それを握り混み、ゴブリンに向けて使う。


「『電光(ライトニング)』!」


 特に必要もない詠唱であるが、本来の主が使っていて聞き馴染んだ言葉であるため、口に出した方がイメージがしやすい。

 そして、そのイメージとはだいぶ小さいが、間違いなく雷魔法は形成され、ゴブリンに放たれた。


 俺が握り混んでいるのは、ナズナから渡された雷魔法の『修正パッチ』だ。

 どのみちメカニックドラゴンには属性的に無効であるため、渡された通りに受け取っていたが、こんなところで使い道があった。


 元々『修正パッチ』は本来の所持者以外でも使用可能だったのは、初日に確認済だ。

 ただ、効果は著しく減少する。

 その時は静電気程度の威力しか出なかったので、恐らく1パーセント以下の効力しかない。


 それでも使える事には間違いない。

 俺のステータスの異常さからすると、ある程度の威力までは底上げが可能だ。

 そして、今は威力ではなく別の部分を底上げした。


『グブッ! グググググ』


「どうだ? 痺れるだろ? これで条件は一緒だな」

最後まで書ききりましたので、以降は毎日投稿予定です(忘れなければ)。

108話で完結します。

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