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10話 『召喚』

「良かったじゃない。異世界転移は無かったけれど、代わりに異世界召喚があったわよ」


「いや、そうは言ってもどうするんだあれ。今は寝てるみたいだけどあんなのが暴れたらたまったものじゃないぞ」


 特殊な能力を授かっているならいざ知らず、生身であんなモンスターに敵うわけもない。

 ましてやドラゴンなんて一般的に最上級の魔物だ。

 そんじょそこらの能力があったとしても太刀打ちできるとは思えない。


「襲ってこないなら無視すればいいじゃない。私は別の魔物の方が脅威だと思うわね」


「別の魔物――スライムとか、ミノタウロスとか、フェンリルとかか? そいつらもいるのか?」


 別の魔物と聞いて、弱い魔物から段々と強くなるイメージで想像してみた。

 他にもゲームを思い浮かべれば魔物の名前は数多く思い出せる。


「それぞれ出典が異なるから全部居たらあまりに整合性が無さすぎるけれど、少なくとも似たようなのは居るみたいね。ほら、あれとか」


 出典とは、元になった神話とかだろうか。

 北欧神話だとか、ギリシア神話やクトゥルフ神話等が思い浮かぶ。

 確かにそれぞれに魔物は出てくるようだが、色々なゲームをしているとそれらがごちゃごちゃになっており、どれがどれにあたるかは今一判らない。

 とにかく、ナズナの示す方向をみるとそこには何かが飛んでいた。


「鳥? に、しては大きいな」


 遠目であるため良く判らないが、人位の大きさがありそうな――と言うより人型の謎の生き物が地面と空中を行き来していた。


「便宜的にハーピィとでも名付けましょうか。あんなのがそこら中に沸いて出たなら、道も簡単に歩けないわね」


「なるほど。あれが3つ目の確証ってわけか」


 異世界が召喚され、物理法則もねじ曲がった。

 異世界にいたであろう魔物も現れ、恐らく人を襲っている。

 とても対応できるとは思えないので、とにかく逃げ回る日々を繰り返すことになるだろう。


「え? 違うわよ。まだ気づいてないの? それ」


「ん? ……なんだこれ……」


 ナズナの視線を辿ると、行き着いたのは丁度俺の真横だ。

 その空中に白い板がゆらゆらと浮かんでいた。

 何気なく手を延ばすと特別妨害もなく手に収まった。


 重さは感じない。

 重力を無視して浮かんでいたのだから当然と言えば当然か。

 但し、空想の産物ではなく触感はしっかりとある。

 表面はツルツルとしており、出っ張りの様なものはない。


「能力とかが書いてあるものじゃない? こんなゲームみたいな世界なら付き物でしょ」


「ステータスボード? そんなものあり得るか? まぁ、確かに何か書いてあるが……」


 板の表側、その上部には何か大き目の文字があり、その下には何個かの文字が列挙されている。

 ゲーム的なイメージでは、名前とか職業とかレベルや各種パラメータを示すのだろうが、それであるとは断言できそうにない。


「あー、クリン……コフセヌだと。絶対違うが……」


 文字らしきものは書かれていたが、全く読めなかった。

 直線で構成されたその文字は、平仮名でも片仮名でも漢字でもアルファベットでもない。

 無理やり形状から似たような片仮名を宛がったのが口にした言葉だ。

 恐らく異世界の言語とかそういったものなのだろう。


「不親切ね。上位存在の神様でも居たのかと思ったのだけど」


 確かにドラゴンにせよ、ハーピィにせよ、こちらの世界における空想上の姿そのものだ。

 そこにステータスみたいなお誂え向きの物があれば、誰かの意志的なものを感じざるを得ない。

 ただそれが翻訳に対応していないのは、全知全能の神様にしては片手落ちもいいところだろう。


「とりあえず、ステータスだって言うなら。ナズナも出せるんじゃないか? これ」


「出すって、念じてみたり? ……んー、出ないわね」


 念じるのは流石に無理じゃないだろうか。

 そう思いながらも『消えろ』と念じてみると、あっけなくその姿は消えていった。


「意外にも、念じるのが正解みたいだな。ほら、こんな感じで」


 ナズナの目の前で出し入れをしてみる。

 あまりに自由自在なので、『こっちに動け』とか『丸くなれ』なんて駄目もとで念じてみると、その通りに動き出した。


「なんで俺だけなんだろうな。結局、制御できても文字が読めないから肝心の特殊能力とかがあるかは判らないし」


「それなら、他の人でも探してみましょ。そしたら、貴方がおかしいのか、私がおかしいのかはっきりするでしょう。それに、あんなのが飛び交っているようなら、屋内の方がまだましでしょうし」


「それもそうだな」


 ナズナの言うことは最もである。

 こんな自体になったならば、状況の確認と当面の安全確保が最優先だ。

 新しくできるようになった事の検証はそれからでも十分であるし、相談するにも人手があった方が良いだろう。

 

 この学校に残っている人は大部分は新校舎にいるだろうが、渡り廊下は使えない。

 そのため、一度外に出る必要があるがそこにはあのドラゴンがいる。

 まずは、旧校舎に居るかもしれない人達との合流を考えよう。

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