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1話 『開幕』 (1999年3月19日 1日目)

1作目と2作目と同じ世界軸の話ですが、本作が時間軸的には初めです。

どこから読み始めても問題ないですので、もし少しでも気になる様でしたらそちらにも手を伸ばして頂けると幸いです。

 身体が痛い。後、寒い。

 目が覚めた時に感じた感想はそれだ。

 身体を起こしてみると、その原因は明らかだった。

 周囲は開けており、地面はコンクリート、未だ冬の名残が残る季節に屋外で寝転んでいれば身体にガタが来て当然だ。


「……屋上、か? 何でこんなところに……」


 ここが何処かなんて言うのは、周囲を見渡した時にすぐ判明した。

 2、30メートル離れた所に赤みがかった新校舎が見えているので旧校舎で間違いない。

 但し屋上というには、周囲は4メートル四方程のスペースしかなく、そこから先は地面が無い。

 屋上というよりは、屋上にある部屋の屋根に当たる場所とみた方が正しいだろう。


 他の学校では屋上へ続く階段の出入口があるエリアのような場所だが、うちの高校では階段の先には小部屋があり、屋上は開放されていない。

 そのため、ここまで来るには小部屋の前にある窓から出る必要がある。

 新入生の際に屋上に出ようとして階段を登ってみたものの、そこで絶望を味わうのは恒例行事らしい。


 うちは進学校であるためか、その障害を窓から出てまで乗り越える猛者は滅多にいないらしいが、毎年数人は発生するらしい。

 だが、この場合は新校舎から丸見えであるため速攻でばれる。

 その上で強烈なお叱りを受けるわけだが、誰もそんな公開処刑を受けたくないので、以降は皆ルールを守るようになる。

 学校の対応としてもそれが正しいだろう。

 屋上にはフェンスが無いため、事故でも起きようものなら大きな責任問題になるためだ。


 最初の疑問に戻るとしよう。

 はてさて、自分は何故ここにいるのか。

 特別不良なわけでもなければ、血迷った新入生でもないので、わざわざ開放感を味わうために屋上に出ようとも思わないし、出たことすらない。

 誰かに連れてこられたなんて考えが妥当そうに思えてしまうが、自分の意思で来た可能性が捨てきれない。

 なにせ、気を失う直前の記憶がない。


 最後に残っている記憶は教室だ。

 その時の状況から考えれば、わざわざここまで出てこようとするのは判らないこともない。

 わざわざ注意するような先生達もいないし、今後のことを考える必要もない。

 いや、そんな事情よりも目的の方が優先される。

 ここであればよく見える(・・・)だろう。


 そう思い、空を眺めようとしたところで不意に声が掛かった。


「あぁ、居た居た、やっと見つけた。一緒に最後を迎えようとしていたのに動かなくなって、直後に急に走りだしたから唖然としたわよ。――――もっとも、最後ではなくなってしまったけどね」


 このスペースの外側、屋根の淵からニュッと首が生えている。

 別に怪奇現象でもなんでもなく、恐らくそこにタラップか何かがあるのだろう。


「よいしょっと。ふぅ、やっぱりここまで登ると結構怖いわね。風も強いし」


 肩を越える程度に伸ばされた長髪、特に纏めていないため山から吹き下ろされる風により激しくなびいている。

 それを煩わしそうに、切れ長の片目を細めながら片手で押さえつけている人物は、先程教室で話をしていた神薙(かんなぎ)ナズナだ。


 怖いと言いつつスラッとした立ち姿からは、物怖じしている様子は感じられない。

 成績も優秀であり、服装自由でありながら律儀に学校指定のブレザータイプの制服を身に纏っている様子はまさに優等生の鏡と言える。

 その制服は襟に沿って2本の白線が刺繍されており、その線の集合点である胸元でボタンで留められているが、その内側には2年生を示す青色のスカーフが頚もとから伸びている。

 更にその内側の膨らみに関して言えば……まぁ、普通だ。モデル体型とでも言えば良いだろう。

 実際女子にしては身長も高く、脚も長い方だろう。

 その脚の膝上を隠すようなチェック柄のスカートは、風にヒラヒラと揺れ動き、今にも捲れ上がりそうで――もう片方の手で押さえ付けられた。


「――――」


 何か言いたげな目線を感じた瞬間、スッと立ち上がり目線をナズナと合わせる。

 紳士として当然の振る舞いだ。


「それで、最後ではなくなったってのは? 想像より規模が小さかったとか、外れていったとか?」


 話を逸らす意味もあったが、見上げた空は雲一つ無い快晴だ。

 だが、それがおかしい。

 つい先程まで空一面を埋め尽くしていた物体が忽然と消えて居なくなっている。


「はぁ……。こんな特定席に居たのに見てなかったとでも言うのね。貴方の行動は全く読めないわ」


「見てないのかは判らんが、記憶が全くない」


 ナズナが呆れ顔で溜め息をついてくるが、これに関しては自分自身意味不明なので、あまり文句も言えない。

 もっとも、ナズナとは幼い頃からの長い付き合いだ。

 こんな時は呆れながらも詳しい説明をしてくれる筈だ。


「――――いい? 私がこんな非論理的な話をすることになるなんて思わなかったけれど、今はそれしか言いようがないから事実をそのまま言うわね」


 ナズナが珍しく言い淀んでいる。

 オカルト現象やSF作品にすら論理的な解釈や見解を織り混ぜながら説明ができるナズナがだ。

 よっぽどの異常現象でも起きたのかもしれない。

 

「――――爆散したわ。その莫大なエネルギーによる余波も無しにね」

多少書き溜めておりますので、初めは10話程、1週間以内は1日2話程度投稿します。


その後は暫く1日1話として……その後はどうだろう。

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