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覚醒

 風が舞う。

 木々が揺れる。

 葉が羽を生やす。

 神々しく輝く純白の光源が世界にぬくもりを与える。


 蘇る無数の記憶。

 めまぐるしく流れる一つの星の運命。

 果てなく強き怪物の姿。

 晩餐はなく、託したそれは一つの生命。

 当てはめたピースはその行き場をなくし宙にさまよった。


 魂の格は高かった。

 消えるべき運命だったそれは、逞しく彷徨い、行きつくべき場所を見つける。

 そこに天地はなく、色はなく、音もない。

 無の苦しみは想像を絶する。

 耐えに耐え、やがてそれはたどり着く。

 迎えの手は、確かにあった。


 『面白い、歓迎しよう。ようこそ、我が世界へ。』


 静まり返っている。

 何も聞こえない。

 何も感じない。

 いや、何かある。

 重い響きがある。

 あたたかい。

 胸が熱い。

 なんだ、これは。

 私は、誰だ。

 私は、私だ。

 私は、創造主だ。

 いや、おかしい、なぜだ。

 なぜ私は、私が創造主であると知っている。

 おかしい、調和がとれない。

 私に記憶がある。

 まさか、いやそんなはずはない。

 あってはならない。

 いや、落ち着け。

 可能性の一つにすぎない。

 大丈夫だ、きっと私の世界は存在する。

 いや、ではなぜ記憶がある。

 自己の世界に干渉する代償は、記憶だ。

 今私には記憶がある。

 つまり、つまりだ。

 認めたくない。

 認めてはならない。

 いや、どうしようもない。

 残念だがこれは事実だ。

 私の力ではどうにもならない。

 そうか、私は、私の世界は。

 滅びたのか。

 

 「ふざけるな!!!!!!!!!!!!!!!」


 声が聞こえる。

 私の声だ。

 ああ、ああ。

 私は創造者失格だ。

 しかし、なぜだ。

 なぜ私は生きている。

 ここはどこだ。

 可能性は、一つだ。

 ここは、そう、異界の地だ。

 はは、はははは。

 どうやら、私の魂は無の境地を乗り越えたようだ。

 いや、だとしたら、救えたのではないか?

 私の魂は私の世界よりも格が高いということになる。

 創造者は、自己の世界と直接接続し、世界システムへの干渉権限を大幅に上昇させることができる。

 しかし、魂の格が低いと、その世界ごと、創造者も消滅してしまうため、命を懸けた賭けとなる。

 魂の格を正確に認識することは非常に困難で、今回のように無の境地を乗り越えるなど、命を懸けた経験をしてもなお、その限界は分からない。

 だから私は、最悪の結果を恐れて自分の世界に生を得るという比較的安全な選択をした。

 結果、私の世界は消滅し、私だけが生き残った。

 私たち創造者にとって、自分の世界は子供のようなもの。

 何に代えても守らなくてはならないのだ。

 私は、、、、私は創造者失格だ。

 怪物、、、、か。

 もともと私の世界はレベル5だった。

 長き年月をかけ、育ててきた。

 そして、怪物によって、一瞬で破壊された。

 私は知っていた。

 怪物がまた来るであろうことを。

 怪物がなぜ私の世界に来たのかは分からなかったが、再び来るであろうことは、理解していた。

 これに備えるために、私は決断をしたのだ。

 しかし、あまりにも早すぎた。

 私が転生するまでにかかるはずの時間はわずか1年。

 怪物はその間に再来したということだ。

 怪物はそれ単体では特定の星を意図的に狙うことはしない。

 そもそも、怪物は私の世界があったような場所には生息しない。

 あの場所は、怪物が生息するにはあまりにもエネルギーが不足しているからだ。

 つまり、あれは何者かが意図的に送り込んだものなのだ。

 怪物は一度生息地域に帰ってから再び戻ることとなる。

 その間には、最低でも100年の時間が必要であるはずだ。

 だからこそ、私はそれまでに世界レベルをあげ、対抗する準備を整えようとした。

 理由はわからない。

 しかし、怪物は1年を待たずに再来した。

 異常事態。

 確かに、異常事態だ。

 しかし、そもそも怪物が来ること自体が異常事態であり、異常事態が重なることは、容易に考えられたはずだ・・・・。

 



 瞼があがっていく。

 視界が開ける。

 青い。

 青き空だ。

 はあ、まったく、綺麗だな。

 視界が完全に開ける。

 

 「なんだ、ここは。一体、どれだけ・・・・。」


 高く高く、左右に聳え立つ二つの純白の柱。

 凝りに凝った装飾が施された柱。

 そしてその奥には、天国の入り口のような、巨大で清く、神々しい、水の色を帯びた扉。

 あたりには神聖な雰囲気を漂わせる、精霊でもいそうな大樹が茂っている。

 この世界は、格が、凄まじい程に高い。

 自分が守ろうとした世界を遥か超えた高みにある世界。

 悔しいという感情すら湧いてこない。

 このような世界があることそのものが、幸福である。

 そして、あらためて実感する。


 本当に、私の世界は、もう、ないのだな。 

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