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もしも、昔話の登場人物が中二病だったら【短編集・その3】  作者: 三羽高明


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【みにくいアヒルの子】美しきドラゴンの末裔

「オレ様は世界で一番美しい種族、ドラゴンの末裔だ!」


 それがアヒル一家の末っ子の口癖でした。


 その言葉を聞く度、きょうだいや両親は笑います。


「何をバカなことを言っているの」

「お前は間違いなくアヒルだよ」


 そんなやり取りを何回も重ねる内に末っ子アヒルは腹を立て、ついには家出を決意します。


「オレ様は本当の家族のところへ行くんだ! それで幸せになってやる!」


 巣を飛び出した末っ子アヒルはドラゴンの住処を探すため、長く苦しい旅に出ます。道中、色々な生き物に会いました。


「オレ様は世界で一番美しい種族、ドラゴンの末裔だ! その尾は地を薙ぎ、叫び声は天を割るんだぞ!」


 末っ子アヒルはクマに向かって言いました。


 クマは首を振って否定します。


「そんなバカな」


 プリプリ怒って、末っ子アヒルはクマの元を離れました。


「オレ様は世界で一番美しい種族、ドラゴンの末裔だ! その尾は地を薙ぎ、叫び声は天を割るんだぞ! 闇色の鱗は夜のしじまに溶け込むんだ!」


 末っ子アヒルはウサギに向かって言いました。


 ウサギは口をポカンと開けます。


「へー」


 ガッカリして、末っ子アヒルはウサギと別れました。


「オレ様は世界で一番美しい種族、ドラゴンの末裔だ! その尾は地を薙ぎ、叫び声は天を割るんだぞ! 闇色の鱗は夜のしじまに溶け込むんだ! 一度火を噴けば、生きとし生けるもの全てが焼き尽くされる!」


 末っ子アヒルはフクロウに向かって言いました。


 フクロウは眠たそうに目をしょぼつかせます。


「ふぅん」


 遣る瀬なくなって、末っ子アヒルはフクロウの傍から足早に去りました。


「どうして誰もオレ様を理解しようとしないんだ?」


 自分の正体を明かしても動物たちが信じてくれないことが、末っ子アヒルには不思議で仕方ありませんでした。


 疑問を抱きつつも、末っ子アヒルは旅を続けます。


 そして、ついに洞窟にあるドラゴンの住処を見つけました。


 そこには夢にまで見た仲間たちがたくさんいます。「我が血族たちよ!」と言いながら、末っ子アヒルは感動の再会に震えました。


「オレ様は世界で一番美しい種族、ドラゴンの末裔だ! その尾は地を薙ぎ、叫び声は天を割るんだぞ! 闇色の鱗は夜のしじまに溶け込むんだ! 一度火を噴けば、生きとし生けるもの全てが焼き尽くされる! オレ様こそが、地上で最強の生き物なんだ!」


 末っ子アヒルはドラゴンたちに向かって言いました。


 ドラゴンたちは鼻で笑います。


「お前がドラゴンだって?」

「そのフワフワの尻尾で地を薙ぐのか?」

「可愛らしい鳴き声ねえ。でも、天には届かないわ」

「鱗なんか生えてないだろ」

「火、吹けるの?」

「あんたはアヒルだよ、ア・ヒ・ル!」


 言いたい放題言って、ドラゴンたちは洞窟を出て飛んでいきます。末っ子アヒルも後を追おうとしましたが、すぐに引き離され、見失ってしまいました。


「そんな……」


 仲間だと思っていたドラゴンから見放され、末っ子アヒルはショックで呆然となります。やがて、重たい体を引きずりながらトボトボと故郷へ帰ることにしました。


 しかし、末っ子アヒルを待ち受けていたのは空っぽになった巣でした。どうやら末っ子アヒルが旅をしている間に、一家はどこかに引っ越してしまったらしいのです。


 一人になった末っ子アヒルは、ポツリと呟きます。


「オレ様は妄想に取り憑かれていた、みにくいアヒルの子だ……」


 その声は無人の巣に虚しく響き渡りました。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  中二病 癒えたときには 手遅れに(季語無し) [一言]  鳥が恐竜の末裔なこと、あんまり関係ないですか?
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