表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

【北風と太陽】空の好敵手

 北風と太陽は永遠のライバル。今日も今日とて火花を散らし合っていました。


「太陽! 我こそは北より吹き荒ぶ嵐を呼ぶもの! いざ尋常に勝負!」

「よかろう、受けて立つ!」


 カチコミにやって来た北風に、太陽は肩をそびやかして返します。北風は道を歩いている旅人を指差しました。


「あれを地獄の底へ落とした方の勝ちだ」


「ほう、そんなものでよいのか? その程度、私にとっては児戯に等しいわ。我が力、とくとごろうじろ!」


 太陽は体を伸び縮みさせ、山の端から出たり入ったりしました。その影響で、辺りは昼になったり夜になったりします。


 けれど、旅人が地獄に落ちる気配はまったくありませんでした。


「太陽よ、大口を叩いた割にはつまらん結果になったではないか」


 北風はニヤリと笑います。


「この勝負もらった! 嵐よ来たれ!」


 遠くの木々がざわつき、雨雲がどこからともなく流れてきました。


 一雨来そうだと予感した旅人は、近くの居酒屋に避難します。


「何っ!? 逃げるか、卑怯者め!」

「ふん、手こずりおって。次は私の番だ! はああっ!」


 太陽が強烈な日差しを放ちます。その熱気で、雨雲はたちまち霧散してしまいました。北風は「ああっ!」と叫びます。


「何するんだよ! このっ! こうしてやる!」


「おい、やめろ! 私を吹き飛ばそうとするんじゃない! くそっ! これでも食らえ!」


「痛っ! よくもやったな、このアンポンタン!」


 思わず素が出てしまった北風と太陽はポカポカと殴り合います。外は太陽が遠くに飛んでいったり、風が下から上に吹き付けたりと、めちゃくちゃな天気になっていました。


 その様子を店の中から見ながら旅人は不思議がります。


「この辺りは随分と変な気候なんですねぇ」

「ケンカするほど仲が良い、格好つけたがりの二人組がいるんですよ」


 店主や店に来ていた地元の人たちが苦笑いします。


「くそー! 覚えてろよー!」


 どちらからともなく言い合って、北風と太陽は別れました。似たもの同士の二人だから、きっとこの先も勝負がつくことはないでしょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 凄く面白いです!北風と太陽が、バトルになっていますね(笑)それを冷静に見守る店主や旅人のリアクションがまたとてもいいです。笑いとともに、楽しませていただきました。ありがとうございます。
[良い点]  いや、天変地異のスケールのはずなんですが(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ