コング君はスーパーヒーロー!!
《須佐視点》
逃げるように源さんを担いで飛び出したあと、商店街の真ん中程にある、「榑松診療所」にやってきました。ここは、内科から整体まで、何でもござれな先生で、僕も小さな頃からお世話になってます。毎年、お正月になるとそれはそれは立派な門松が診療所の入口に、先生自らお作りになっておいてあるので、この街の住人は親しみを込めて「門松先生」と呼んでいます。榑松先生と呼ぶ人は大体は引っ越してきてすぐの人だったりします。
「こんにちはー!門松先生!」
診療所の玄関を開けて門松先生を呼びます。時刻は夕方。診療時間は終わっているので事務のお姉さんも看護師のお姉さんもいません。静かな診療所の奥から、髪の毛は真っ白で黒淵の眼鏡を掛けた痩せたおじいさんが出てきました。
「おぉ、誰かと思えばコングかい。どうした?お前が病気や怪我になってるところは想像出来んが・・・」
いやいやいや、僕だって人間です。病気や怪我もしますよ!・・・そういや最後に診療所きたのいつだっけ?2年?いや3年?ま、まぁいいや。それより
「僕じゃないです。源さんが今日、ぎっくり腰になったみたいで連れてきました。」
僕は背中に背負ってる源さんを門松先生に見せました。
「へへへ、門松先生どうも、お世話になりやす。」
源さんはばつが悪そうに挨拶します。
「はぁ、源一郎よ。どうせ見栄はって無茶したんだろ。お前も、若くない・・・というか立派にジジイなんだから、無茶するなよ。」
呆れ顔で門松先生が言います。門松先生は源さんの1学年上で、源さんが頭があがらない人だそうです。
「へい、これからは気を付けやす。」
「まったく・・・じゃあコング、奥の部屋のベッドに寝かしてくれ。あと、帰りは自分で歩いて帰らすから置いてけ。きっちりかっちり動けるようにしてやる。」
そう言いながら接骨院にあるような電極をだしてきました。本当に何でもあるなここ。
僕は源さんをベッドに寝かして足下に毛布を用意しました。
「須佐・・・ありがとよ。須佐、やっぱり理穂と澪をお前が貰ってくれ!」
またそう言うことを言う。理穂さんは源さんの奥さんでしょうに。源さんの冗談を聞きながら門松先生が電極をつけ終わりました。
「少しづつ強くしていくぞ?」
そう言った門松先生と目で会話。門松先生は悪い笑みを浮かべながらコクリと頷くと・・・電気のパワーを最強に。
「うぎゃぁぁ!よ、よ、よ、よ、よ、よ、よ、わ、わ、わ、わ、わ、わ、く、く、く、く、く、じじじじじでででで!!あばばばば!」
「おう、こりゃ失礼。しかし、まぁ反省したろ?」
「はい、反省しましだだだだだだ、やややめめめでででえええ!」
門松先生はまた、最強に・・・何て良い笑顔。門松先生恐るべし。
「それじゃ、お願いします。」
「はいよ、ほら源一郎、お礼言え。」
「今日の手伝いは理穂と澪に言ってあるから、須佐、ありがとよよよよよよよ!!!だだだだめめめめどどどめめめででで!」
うわぁ、容赦なし。
「ハハハ、それでは失礼します。」
大丈夫かな?「あばばばば!」
大丈夫だよね?それじゃ源さんは門松先生に任してお店に戻ってお仕事、お仕事。
診療所を出て荒木酒造に向かって歩いて行くとみんなが店から飛び出して何か?いや誰かか?を探しています。どうしたんだろう?そう思って何気なく商店街の先、道路の方を見ると、そこには今にも車道に飛び出そうな小さな子が・・・まずい!
そう思ったと同時に駆け出しました。みんなの「危ない!!」って叫びを聞きつつ追い越し、小さな子まであと少し・・・はっ!車がきてる!しかもあれ気づいてない?ちっくしょう!!全力だぁぁ!
小さな子と車との距離5メートルくらいで子供を抱き抱えたが、車はもう目の前。今さら気づいても遅いぞ運転手さん!
「はっ!!!」
僕は気合いを入れて小さな子を抱きしめながらジャンプ!良かったトラックじゃなくて、車の屋根に一瞬片手をついて飛び越えます。もちろん小さな子は絶対離しません!
「うおおおりゃ!」
・・・着地!!どうだ!心臓バクバクだぁぁ!流石にビビった!あっ!そうだ!子供!そう思って腕の中にいる子を見ると
「きゃきゃきゃ♪すごい!すごい!ぎゅんてなって、ぐるんてなって、すごい!たのしい!ねぇねぇおじさん、もっかいやって!」
大丈夫そうだね。しかし・・・おじさん、おじさんかぁ・・・いや、まぁこのくらいの子からみたら確かにおじさんだし!見た目関係無い無い!
「楓!」
「あっ!ママ!」
どうやらこの子のお母さんが来たみたいです。何か凄い美人なお母さんだなぁ・・・おっぱい大きいし。
おっと、また澪さんの殺気が。・・・この子は楓ちゃんって言うのか。ふむふむ。
「楓!大丈夫?怪我はない?」
「うん♪すごかったよっ!ぎゅんてなってぐるんてなって、ねぇねぇおじさんもっかいやって!もっかいやって!ねぇおじさん!」
「ハハハ、元気だねぇ。でも、お母さんが心配しちゃうからお母さんから離れちゃめっだよ?」
「あうっ!ごめんなしゃい。」
ちゃんと反省してるみたいです。うんうん良い子です。
「楓ちゃんは良い子だね!よしよし。」
お母さんに楓ちゃんを渡して、頭を撫でてあげます。
「あの、娘を助けていただいてありがとうございます。」
「いえ、怪我がなくて何よりです。」
「あの、お仕事中でしたのに本当にありがとうございます!あの、是非お礼をしたいので名刺をいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
・・・うん?お仕事中?名刺?
「いえ、おきになさらず「そうはいきません!お仕事中でしかも年上の方にご迷惑をおかけしてお礼もしない何て・・・」」
・・・うん?年上?このお母さん十代?いや、十代でこの子生んだならいつ生んだんだよ?
「あ、あの?」
その時後ろで楓ちゃんのお母さんとのやり取りを見ていた澪さん理穂さん唯さん紗ゆり先生が笑いを堪えながらやってきました。
「ねぇ、桜ちゃんこの人いくつ上に見えるの?」
「えっ?そんな、失礼だけど30才くらいかな?でも、全然お若く見えますよ?」
さ、30才・・・しかも若く見えるって、そりゃ17才だもん見えなきゃ困るって、でもそれフォローしてだから・・・?あっヤバい泣きそうになってきた。
「ぷっ、フッフッフッ、ハッハッハッ!!」
ついに理穂さんと澪さんと紗ゆり先生が堪えきれず笑いだしました。
「ちょっと!ひどいよ!先生、理穂さん、澪さん!笑うなんて!」
笑いすぎて涙目になりながら
「ごめんごめん、フッフッも、もう笑わないから・・・ぷっ、フッフッフッ。」
「笑ってるじゃん!もう!!」
「あっ、あの?」
楓ちゃんのお母さんが何が何だかわからないようでこちらを見ています。
「桜ちゃん、紹介するわ。この人は近藤 須佐。近藤先生の一人息子で、こう見えてまだ17才よ・・・ぷっ!」
「唯さんまで笑って!もう・・・近藤 須佐です。神原高校2年です。よろしくお願いします。」
呆然としてる楓ちゃんのお母さんと不思議そうに見る楓ちゃん
「あ、あの、す、すいません。年上何て言っちゃって。私は一ノ瀬 桜。唯ちゃん達の同級生で幼なじみです。」
「そうなんですね。」
「ねぇねぇ、こうこうせいなの?」
「うん、そうだよ。」
「じゃあおじさんはおにいさんで、おじさんにみえるけどほんとうはおにいさんのおじさんなんだね!・・・あれ?」
お兄さんのおじさんって何?無邪気な子供の一撃は須佐お兄さん。お・に・い・さ・ん!にクリティカルヒットでした。
お読みいただきありがとうございます。