コング君の帰り道と大和撫子お姉さん
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《須佐視点》
さて、帰りますか。紗ゆり先生はブラウスの前側がビリビリなので、僕のブレザーを着てもらってます。紗ゆり先生は身長が170センチ位でスラッとしていてモデルさんみたいですが、やっぱり僕のブレザーだとコートみたいですね。
「すいません先生、僕のブレザーデカいから重いですよね?」
「ううん、大丈夫。ありがとう。何か須佐くんに包まれてるみたいで安心するよ?」
紗ゆり先生はそう言うと、はにかんだように笑いました。何かちょっと照れる・・・
「ゴホン。・・・そう言えば先生のお宅はどちらになりますか?」
「あぁ、私の家は商店街を抜けて左に折れた所にあるアパートよ。」
「じゃあ商店街はよく使われるんですね。」
「う、うん。いや、あんまり使わないかな。」
「?えっ、何で?近くて便利で何でも揃うのに。」
「昔、この辺りに住んでいてね。昔馴染みにあんまり会いたくなくて。へへへ。」
何かあったのかな?綺麗で美人な先生が商店街にあんまりきたくなくて、昔馴染み・・・あっ!そうか!
「わかりました!元カレが商店街にいて会いたくないんですね!」
「違います!かっかッ彼氏なんていたことありません!!」
先生は真っ赤な顔して怒ってきました。そんなに怒らんでも。
「わぁ!す、すいません。紗ゆり先生みたいな美人で真面目で優しい女の人なら彼氏の10人や20人いたっておかしくないと思ってました!」
「須佐くんひどい!私がそんなに軽い女に見えますか?10人や20人って・・・もう!」
そう言うと紗ゆり先生は頬をハムスターのように膨らませてプイッと横を向きます。しまった!失言!
「そ、そんなことは思ってないです。ごめんなさい!許してください!何でもしますから!」
そうしたら、先生がチラリと僕の方を見て
「何でも?本当に?」
「は、はい!だから許してください!」
先生は少し考えると、満面の笑みを浮かべ
「じゃあ・・・はい!」
と手を出してきました。
「・・・えっと?」
「手を繋いで下さい。荒木酒造まで先生と手を繋いで歩いて下さい!」
「えっ?いやでもそれは「何でもでしたよね?」」
「うッ!わ、わかりました。」
こんな美人な人と手を繋いで歩くなんて・・・ご褒美何ですけど?僕だって健全な男子高校生でドキドキしちゃうんですけど?いやいやでもでも紗ゆり先生にそんな事思えば嫌われる!これは心頭を滅却し、明鏡止水で挑まねば!
「えへへ、須佐くんの手大きくてあったかい。えへへ。」
そう言いながら先生はぎゅっと僕の手を握ってふわふわというかほわほわというか、ニコニコ笑みをこぼしています。・・・何、このかわいい生物。
商店街を紗ゆり先生と手を繋いでのんびり歩いていくと
「おっコング!えらいべっぴんな女の人連れてるな!ついに、春がきたか?」
「いや、肉屋のおじさん、こちらは担任の先生でちょっと色々あって送ってる最中です!ね?紗ゆり先生?」
「うん?紗ゆり?あっ!お前は鬼「こんにちはおじさま。お久しぶりです。」」
「あっ!えっ!ひ、久しぶりだな。元気そうで何よりだ!そうかい、先生になったのかい。そいつは頑張ったな。教科は体育か?」
「国語です!おじさま、面白い冗談を・・・ほほほ。」
「そ、そうか、ハハハ、まぁ元気そうで何よりだ、またきてくれやサービスするからよ。」
「あ、ありがとうございます。また、寄らせてもらいます。」
先生はそう言うと、また手を繋ぐというより指を絡ませて僕の腕にもたれ掛かりながら「いきましょう。」と言ってきたんだけど。・・・あの、結構大変なんですけど!心がてんてこまいですよ!あぁ、般若心経か、それとも素数を数えるか?円周率でもいいな。
「須佐くん。」
「えっ?はい、どうかしましたか先生?」
「今日はありがとう。何かたくさん助けてもらっちゃったね。」
「気にしないで下さい。それにほら、言ったじゃないですか。先生が困ってたら助けるって。」
「たとえ火の中、水の中でも飛んで行く・・・だったわね。ふふふ、まさか本当に4階の窓に飛び込んで来るとは思わなかったけどね。」
「有言実行!!カッコいいでしょ?日曜朝のヒーローみたいで。まぁ見た目は完全に怪人よりですけど。ハハハ。」
「ううん。そんな事ない。カッコよかったよ。須佐くんは私のヒーローだよ。」
何となく照れ臭くなって二人してちょっと赤くなりながら笑いました。
「こんにちはー!」
そう言いながらのれんをくぐると、理穂さんと澪さんが店の奥から出てきました。
「おかえり須佐くん。」
「おかえりなさい須佐くん。」
「ただいまです。理穂さん、澪さん。」
ふたりは僕に言葉をかけたあと、僕と手を繋いでる紗ゆり先生を見て
「須佐くん、こちらの方は?まさか、私というものがありながら、女の人と手を繋いで来るなんて!羨ましい!」
「須佐くんが女の人を連れてきた!やっぱり胸が大きい方がいいんだ!うえーん、りぃぃほぉぉ、須佐くんが須佐くんがたらしになっちゃったよぉ!」
ふたりとも抱き合いながらこっちを恨めしそうな目で見てきます。
「人聞きの悪い!こちらの方は僕の担任の先生で黒田紗ゆり先生!ちょっと学校でトラブルがあって僕が家に送って行くんだけど、ほら、みんなに仕事頼まれたでしょ?だから、申し訳ないけどついてきて貰ったの!」
まったくもう!理穂さんと澪さんが揃うと必ずと言っていいほどからかってきます。美人なお姉さんに構ってもらえるのは嬉しいんだけど。
「「黒田紗ゆり?」」
ふたりが先生ににじりより、じっと先生の顔を覗きこみます。
そうすると、澪さんと理穂さんが
「紗ゆりさん?」
「さゆりん先輩?」
「久しぶりだね、理穂、澪。」
「わぁ!本当にさゆりん先輩だぁ!久しぶりっす!」
「紗ゆりさんだぁ!お久しぶりです!会いたかったよぉ!」
ふたりは紗ゆり先生に抱きつき歓声をあげています。仲が良さそうだなぁ。
「ふたりは紗ゆり先生と知り合いだったんだね。何かふたりのキャラもいつもと違うし。」ピシッ
「あっ!そ、それはね、昔の若い頃の感覚が甦ったと言うか・・・」
「そ、そうそう。それに、紗ゆりさんがあまりにも違「コホン。澪。何を須佐くんに言うつもりなのかな?」いえ、何でもありません!!」
「私達、幼なじみなの。紗ゆりさんが2個上でみんなのお姉さんなの。」
へぇ、そうなんだ。
「あっ!じゃあ唯さんも幼なじみ何だ!」
澪さんが笑顔浮かべて
「その通り!唯も紗ゆりさんと幼なじみよ。」
ちなみに、唯さんは、僕のお父さんが5年前に再婚した人で、スラッとして、凛として、ザ・大和撫子って感じの美人なお姉さん。料理が下手くそ
「須佐。今、私の欠点を思いましたか?」
「うお!ゆ、ゆ、ゆ、唯さん!!滅相もございません!」
「あっ!唯!きてきて!ほら、紗ゆりさんだよ!」
心臓に悪い!気配がないから気づかなかった。あぁ、心臓バクバクいってる。
「お久しぶりです。紗ゆり姉さん。お会いしたかったです。」
涙目になりながら唯さんは紗ゆり先生に抱きついた。いつも凛としてる唯さんのあんなに嬉しそうな顔久々に見たなぁ。・・・父さんが死んでから4年半か・・・未亡人で血の繋がらない僕を20歳位からずっと面倒見てくれているから、何としても幸せになって欲しい。高校にあがったとき、唯さんに
『もう、父さんに操をたてなくて良いです。まだお若いですから唯さんの幸せを探して下さい。』
と厚くお礼を謂いながら頭を下げたら、唯さんが
『私の幸せは須佐を幸せにする事、このままそばにいさせて。』
そう言って泣きながら言われた。母を亡くし父を亡くした僕が独りにならず、こうしていられるのも、唯さんのおかげです。本当に感謝しかないです。
「久しぶり、唯。・・・えっと、須佐くんと一緒に住んでるの?」
「はい。須佐のお父上の近藤 益男さんの後妻になったのですが、結婚して半年もたたず旅先で益男さんは帰らぬ人になり、以来、近藤家で須佐とふたりで住んでいます。」
「そう・・・大変だったわね。私、何も知らなくて・・・」
目を伏せながら紗ゆり先生は唯さんを抱き締めた。
「私は、須佐がいたから大丈夫です。悲しみも乗り越える事が出来ました。」
「そう、良かったね唯。」
紗ゆり先生はみんなに慕われているんだなぁ。幼なじみのみんなと仲がよくて。
「そう言えば、澪さん理穂さん。幼なじみって4人何ですか?」
「ううん、あとふたり仲が良かった幼なじみがいるよ。今は近くにいないし、連絡もとれなくて心配してるの。」
「そうなんですね。仲がよくて良いですね!僕の幼なじみもひとりはどこにいるかわかんなくて心配しています。元気にやってると思うんですが・・・他3人はそばにいるしよくわかるんですけど。」
そう言いながら、そばにいる3人と小学校の時に海外に転校していった大事な幼なじみの「ふゆくん」のことを思い出していました。元気かなぁ、ふゆくん。