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コング君とマドンナ先生



 《須佐視点》



 お昼休みになりました。皆さんはお昼ご飯どうしてますか?食堂でいわゆる学食を食べるか、購買に行ってパンやおむすびを買うか、お弁当を作って持って来るかだと思います。えっ?ダイエットで食べない?それはおやめになった方が良いと思いますよ?1日しっかり楽しむには3食きっちり食べましょう。僕はというと、見た目に反して趣味が(料理)なので毎朝5時に起きて朝食とお弁当を作っています。今日のお弁当は唐揚げと卵焼き。胡瓜の浅漬、アスパラのベーコン巻き、あとはたっぷり筍ご飯を持ってきました。

 教室で食べても良いのですが、飢えた男子達、たまに女子にとられてしまうので図書室に移動しましょう。


 4階建て校舎の最上階、一番東側が図書室です。海が遠くに見えて大変眺めが良いのです。ちなみに2年生の僕は3階に教室があります。教室を出て図書室に向かっていると、目の前に大きな段ボール箱を3つ廊下に置いて途方にくれてる先生がいらっしゃいます。


 「(ゆり先生。どうかしましたか?」


 黒田 紗ゆり先生。2年1組、つまり僕らの担任の先生。確か27才、国語の先生で丁寧でわかりやすい授業、透き通るような白い肌、黒いきれいな髪、笑うと出来るエクボがチャーミングなスラッとしたモデルさんのような美女先生。神原高校のマドンナとか言われています。


 「あっ、須佐くん。実はね、3年の生徒達が皆で(オススメの本)を図書室に寄付してくれてね。それを図書室の隣の司書室まで運ぼうと思ったんだけど・・・。」


 重そうだなぁ・・・


 「これで全部ですか?一箱に何冊入ってるんですか?」

 「1クラス一箱に入れてくれてあるからだいたい40から50冊くらいね、独りで2冊とか3冊入れてくれた子もいたから。」


 今の3年生は本好きな人がたくさんいるなぁ。きっと紗ゆり先生のおかげかなぁ。紗ゆり先生は確か図書室の司書もしてるから。人気がある先生だから当然かな?


 「運ぶの手伝いますよ。よっと。・・・ふん!」


 僕はそう言うと、3箱重ねて腰を落とし力を込めて持ち上げました。重いものを持つときはしっかり腰を落とさないと、どんなに力があっても腰を痛めたりしますから。まぁ僕は鍛えてますから200キロくらい余裕ですけど。歩くジャッキとか、人間ダンプカーとか昔言われたなぁ・・・だから(コング)が定着したのか?まぁいいや。


 「ありがとう須佐くん。重くない?大丈夫?気をつけてね?」


 心配そうに紗ゆり先生が僕を見上げます。


 「ありがとうございます。大丈夫です。自分鍛えてますから。」


 そう言いながら、僕は笑いかけます。

 紗ゆり先生は僕に微笑みながら「須佐くんは優しいね。」と、ふたりで並んで廊下を歩いていると前から「黒田先生!」と呼ぶ男の人の声が。


 「幸田(こうだ先生、何かご用ですか?」


 と、紗ゆり先生の声が聞こえます。・・・幸田先生、確か今年度赴任してきたイケメンな数学の先生だったかな?うちのクラスは担当ではないからよくわからないけど、女子達がキャーキャー言っていたような気がします。


 「いや、先生とお昼をご一緒しようと思って探していたんです。」


 へぇ、幸田先生は紗ゆり先生の事が好きなのか。


 「すいません、お断りします。生徒に仕事を押しつけて自分だけお昼休みにするなんて出来るわけありません。」


 あれ?紗ゆり先生の態度がかたくなって、冷たい空気が出てる気がします。


 「なっ、なら僕が手伝いますよ!ほら、その箱をよこしたまえ。」


 そう言って幸田先生は無理やり本が詰まった段ボール3箱を僕からひったくるようにとろうとしました。あっ!そんな無理やり持とうとしたら・・・


 「ひぐっ!ふぅぅぅん!がはっ!ぐぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!おっおっおっもっもっいぃぃぃぃ!!だずげでぇぇぇ!」


 そう言って段ボール箱の下敷きになって、二枚目な顔が脂汗と、鼻水でグショグショです。


 「だっ大丈夫ですか先生!・・・よいしょっと、だめですよ先生重いものをいきなり持っては、怪我の元ですよ?」


 そう言いながら先生から段ボール3箱をどかしてあげました。


 「はふぅ!がはっ!ごほっごほっ!・・・はっ!用を思い出したのでこれで失礼する。では!」


 そう言って幸田先生はふらふらしながら去っていきます。


 「はあぁぁぁ・・・まったく!自分で潰れて須佐くんに助けてもらってお礼も謝罪も無しとは呆れます!・・・ごめんなさいね、須佐くん。」


 そう言って紗ゆり先生は申し訳なさそうに頭を下げてきました。


 「ほぇ?だ、大丈夫です。僕は気にしてませんから。怪我してなければ良いですけど。」

 「あんなの怪我すればいいんです!学校で教師から生徒にまで色目使ってるようなのは。」


 珍しい、紗ゆり先生はかなりご立腹のようです。何かあったのかな?


 「紗ゆり先生は幸田先生が苦手なのですか?何かいつもの紗ゆり先生じゃないみたいです。何かあったんですか?」

 「あら・・・ごめんなさい、別に大したことじゃないのよ。・・・ただ、今日みたいにお昼誘ってきたり、飲みに誘ってきたり、体に触ろうとしてきたり・・・しつこいのよ。はぁ。私は、あんな女たらしは大嫌いだから距離をおきたいんだけど、仕事をしてるとどうしても接点があって大変なの。」


 紗ゆり先生はそう言いながらため息を何度もついています。


 「先生が幸田先生を嫌いで、幸田先生がセクハラ先生なのはわかりました。・・・何かあったら言ってください。学校の中でも外でも尊敬する紗ゆり先生が困ってるのは僕たちもおもしろくありません。」


 そう言うと紗ゆり先生は優しい笑みを浮かべながら


 「ありがとう須佐くん。本当に優しいね君は。そうね・・・何かあったら助けを呼ぶわ。その時はよろしくね?」

 「はい!わかりました!必ず助けに向かいます。たとえ火の中でも水の中でも飛んできます。」


 そうして、ふたりで笑いあいながら司書室に向かったのです。



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