コング君と幼なじみ
《須佐視点》
僕が通う私立神原大学付属神原高校は、S県にある大城市の海岸線から2キロほど内陸に入ったところに高校の校舎が建っています。近くには付属の小学校と中学校の校舎、少し離れたところに大学のキャンパスもあります。
季節は4月、桜並木が3つの校舎を取り囲み、近くの川土手にも何本ものソメイヨシノが植えられていて、高校の屋上から眼下を見れば桜色の絨毯のようです。まぁ5月になると毛虫の雨が降ったりしますが(笑)
「おはようございます。コング先輩。」
「あぁ、おはよう。」
皆さんお察しの通り、下級生にもひろまっています。うん、諦めよう。ぶっちゃけ、コングが本名って言っても、みんな信じそうです。
桜並木の中、たまに吹く風が桜吹雪を起こすなかをのんびり学校に向かっていると、「スタタタタッ!」軽い足音が猛然と後ろから向かって来る気配が・・・そして、僕の高校生にしては広い背中に、それはジャンプ一番はりついてきました。
「すぅぅぅさぁぁぁ!やっっっと追い付いた!おはよう!」
「わぁぁ!ミク!おはよう!じゃなくて女子高生がスカートで背中にはりつくんじゃない!」
「大丈夫スカートの下にスパッツはいてるから!」
「そういう問題じゃないです!」
この天真爛漫を体現したような女の子は幼なじみの笹川 ミク。身長145㎝、髪は短め、可愛いヘアピンが低い身長と相まって小学生に間違われることしばしば
「ガシッ!」「今、須佐チビとか、小学生とか思ったでしょ?」
「イイエオモッテナイヨ」
身長の事はタブーだけど、胸はあるロリ巨乳美少女さんである。
「なぁに須佐?背中にピチピチのJKのおっぱい当たって朝から欲情した?ねぇした?ねぇした?したよね?したでしょ?したって言え!」
そう言いながらミクは僕のお腹を蟹ばさみしつつ、コアラのようにさらに密着して抱きついてきます。
「うわーうざいうざい!朝からなんちゅう事は口走ってるの!そうじゃなくてこういう事は彼氏にしなさい!というか、彼氏の前で他の男に引っ付くな!」
「だって、才斗。須佐はそう申してますが?」
「ハハハ。須佐なら昔から一緒だし問題ないよ。それに俺だといくらミクが軽くても途中でバテる。」
この一見チャラそうに見える茶髪のイケメンは内田 才斗僕の幼なじみその2。スポーツ万能、いつもニコニコ天然さわやかイケメンなのです。ミクと才斗とは幼稚園の頃からの付き合いでいつも一緒にいます。去年の3月、高校にあがる前に、才斗がミクに告白して晴れて恋人になったのでした。あの時は驚いたなぁ、才斗がミクを女性として好きなんてまったく知らなかったです。教えてくれても良かったのに。
「よっし。彼氏の許可も出たから問題ないね!さぁ須佐、存分に私のDカップのおっぱいを堪能しなさい!」
「いや、あのね?ミクさんや。お前さんが毎度毎度べったり僕の背中にひっついているから今だに僕、彼女出来ないんじゃない?」
「おや?須佐君は彼女がほしいのかな?」
「そりゃ人並みには。」
こっちは見えないけども、健全な男子高校生。そりゃ彼女は欲しいに決まっています。
「ふむふむ。才斗君。学校での須佐君の女子生徒からの評判は?」
「はっ!ミク隊長。「優しいけど見た目がこわい。」「気がきくけど、あの時激しそう。」「頼りになるけどあの時壊されそう。」「良い人なんだけど野獣になりそう。」「大きそう、きっと私には入らない。」などになります。」「ビシッ」敬礼。
「ミクと才斗がいじめる!というかほとんど下ネタだし!」
そりゃ体が大きくて厳ついから怖いってのはわかるけど、みんなひどくない?こっちは経験がないチェリーボーイ何だからどうなるかわからないじゃん!
「ワハハハ!別にいじめてないって須佐。つまり学校の女子生徒の大半は須佐の事を恋愛対象外にしているという事。だから、私は須佐の背中にひっついていても問題ないのだよ。何故なら来る子がいないから!」
「うぉぉ、ミクが暴論で追い詰めてくるのです。ミクの彼氏さんや何とかするです!」
「いや、無理だから。ミクは須佐の背中が大好きなの!・・・しかし、須佐、彼女欲しいなら女の子紹介しようか?他校の子でも良ければいくらでも可愛い子いるよ?」
「・・・・・・・・・いや、辞めとくよ。去年のゴールデンウィークの時みたいに女の子泣かせたくないし。」
「「あぁ、あの時はねぇ・・・」」
実は去年のゴールデンウィーク、才斗とミクがデートに僕も一緒に行こうと誘ってきた事があって、ふたりがラブラブしているところにお邪魔虫が1人でついていく事が嫌だった僕に、ミクと才斗が女の子を紹介した事がありました。ダブルデート?なら僕も来るだろうとの判断らしいです。でも、その女の子は僕を見るなり泣き出してしまって、何とかなだめて、謝って、1日だけ我慢してもらってダブルデート?してもらったことがあります。あれは、なかなかきつかったなぁ。同じ年の女の子にいきなり泣かれて、やっぱり自分は怖いんだなって思って、結構落ち込みました。その女の子も帰るときは「泣いたりしてごめんなさい!」って謝ってくれたけど、流石に二度目はなかったです。連絡先知らないし。ミクも才斗も僕に謝ってくれたけど、女の子のフォローを頼みました。大変だったです。
「あの時は本当に申し訳なかった。良い子なんだけどまさか泣くとは思わなかった。」
「気にしてないよ、才斗。ミクの友達でしょ?1日付き合ってくれただけありがたいです。」
背中のミクがやけに静かだなぁ?本当に気にしてないんだけど。
「ミクも、僕は気にしてないから。ありがとうね。」
「・・・うん・・・」
小さくうなずくと、ミクはさらにぎゅっと抱きついてきました。
「・・・ところで、ミクさんいつまで背中におんぶしてれば良いのですか?」
「そんなの、私の机までに決まってるでしょ!さぁ、須佐。ゴーゴー!」
「・・・まじか。」
「須佐。あきらめろ。」
「ゴーゴー!ゴーゴー!」
「はいはい。」
結局、教室の机までミクをおんぶして行きました。周りの視線が生温かい、もしくは孫を見るおじいちゃんおばあちゃんのようだったのは、きっとミクの可愛さと人徳の賜物でしょう。何せ生活指導の先生にも注意されずに「コング、朝から大変だな。子供の面倒見て。」って言われました。
《ミク&才斗会話》
「才斗、どのくらいで決着がつきそう?」
「予定通り、学園祭最終日の夜だね。・・・ごめんねミク。変な事に永く付き合わせて。」
「気にしないで、幼なじみなんだから。・・・須佐には決着がついてから私が言うわ。全部を隠さずに。いい?」
「もちろんさ!須佐は一番の親友だから。理由はどうあれ須佐に嘘をつき続けさせちまって悪かった。」
「仕方ないわ。私も気づいたのがあの時なんだから。才斗・・・絶対成功して須佐にも祝ってもらお?」
「祝ってくれるかな?」
「大丈夫よ。私たちの須佐だもの。」
「ミクも頑張れよ。」
「ええ。」