パチンコ屋

作者：渡井　彩加

登場人物

店員(男)……ボケ

客(男)……ツッコミ

台に座っている男性客がランプを押す動作をする。

店員(男)がやって来る。

店員「お待たせしましたー」

男「あ、箱一杯になったから箱を下ろしてくれ」

店員「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

男「あ？待つって、何を……？」

店員、退場。

男「箱でも取りに行ったのか……？」

包丁を持って戻ってくる。

店員「お待たせしましたー」

男「お、おいおい！何物騒なもん持ってんだよ！！」

店員「え、何って、ご要望通り、半殺しにしようと思ったのですが……」

男「半殺しじゃねぇよ！誰もそんなもん頼まんわ！！は・こ・お・ろ・し！！」

店員「あ、ああ！大変失礼いたしました」

男「わかったか？分かったなら、さっさと下ろしてくれ！」

店員「かしこまりました！少々お待ちくださいませ！」

男「え、おい、どこいくんだよ！」

店員、男性の制止も聞かずに走って立ち去る。

男「ったく、何なんだよ……」

店員、何やら皿を持って走って戻ってくる。

店員「お待たせしました！」

男、皿の中を見る。

男「これ、大根おろしじゃねーか！！」

店員「はい、大根おろしですぅ」

男「当たり前みたいな感じで言うんじゃねぇよ！パチンコ屋で大根おろし頼む奴がいるか！？」

店員「いやぁ、僕も三年働いてますけど、初めてのことで……」

男「だろうな！つーか、三年も働いてて、んな間違え方ふるか！？」

店員、皿の中を数秒見つめてから

店員「あ、三枚おろしの方でしたか！？」

男「ちっげーよ！俺はパチンコ屋で半殺しにしてくれって頼んだり、食いもん頼むバカじゃねぇんだよ！」

店員「え、違うんですか！？」

男「頼むわけねぇだろ！お前、俺を何だと思ってたんだよ！？」

店員「いやぁ、変わった方だなぁと」

男「お前に言われたくねぇよ！！」

男性客、立ち上がる。

男「箱おろし！！してくれ！！」

店員「……は、はい！かしこまりました！」

店員、男性客のズボンを半分くらいまで下ろす。

男「ちょちょちょちょちょ、何してんだよ！？」

慌ててズボンを押さえる男性客。

店員「ズホン下ろしを……」

男性客、ズボンを直しながら

男「誰がズボン下ろしてくれなんて頼むんだよ！？変態かよ！！」

店員「いやぁ、僕も変態なお客様だなぁと思いましたー」

男「客に向かって変態とか言ってんじゃねぇよ！ああもう我慢ならん！店長呼べ！店長！！」

店員「あ、僕が店長ですー」

男「お前よく店長になれたな！！どうしてくれんだよ、この落とし前！！」

店員「すみません、お年玉は十八歳までで……」

男「お年玉をねだってるわけじゃねぇんだよ！！あー、もういい！帰る！！箱交換してくれ！！」

店員「え、そんなこと……お客様ぁ」

男「もう引き止めたって無駄だからな！早く交換しろ！！」

店員「えぇ……少々お待ちを！」

男「おいっ！どこに……っ！」

店員、走って退場。

暫くしてから、入れ歯を持って戻ってくる。

店員「あちらのお客様にお願いしたらOKだと言ってくださりました！！」

男「『……歯、交換』じゃねぇよ！！気持ちわりぃな！！」

店員「いやぁ、お客様も趣味が悪い……」

男「お前のただの聞き間違いだよ！つーか、よくOKしてくれたな！！」

店員「大根おろしが役にたちました！」

男「どや顔で言うんじゃねぇよ！もういい！交換もしなくていい！！帰る！！」

店員「ありがとうございました！またのご来店を！！」

男「二度と来るか！！」