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二、隠れて付き合っていることへの不安


「こないだね。もしかしたら、お父さんにバレたかも、なんて思ったわけよ」


 彼女は二十二歳の女子大に通う西嶋麗娜(にしじまれいな)だ。

 もうすぐ付き合って一年が経とうかとしている。


 いつもカジュアルな服装を着、パンツスタイルが多い。

 性格が男ぽいところもあり、ヘアースタイルも短く、そのためか男の子と見間違えるほどだ。


 そんな彼女とは、普通に大手を振って交際を続けられるものでもなかった。

といっても、親の仇でもなければ、格差があるだとか、ましてや自分が犯罪者なんかでもない。


 だから、絶対にダメだと聞かれれば、実際のところはそうじゃないのかもしれないのだが。


 彼は、ともかく麗娜の親には、彼女と隠れて付き合っていた。

 相手の親に言っていないため、後ろめたいのもある。なので、自分の親にも、彼女がいることを報告はしていない。


 本当のところは、面倒なことになり兼ねないという思いからなのかもしれないが・・・・・。


 だから、今日も麗娜との映画デートは、勿論、二人だけの秘密にしているのだ。


「どういうこと?」

訊いてみた。


「何かね、普段はあまり詮索しないのに、この間、先月かな、そう私たちが美術館にいった日よ。

 あの日に限って、誰と、何処へ行ったんだ、ってしつこく訊いてきたんだから。

 ま、あの時、私がゴッホのグッズを買ったでしょ。それをパパに見られたのが、話しのきっかけになっちゃったんだけどね」


 二人は、カフェでコーヒーを飲みながら、会話を楽しんでいた。


「それが男とデートをしている、という推測にでも繋がったのかな?」


「ええ。パパなりに疑っている節も、あるみたいなのよ」

 麗娜は、カフェラテを一口飲み、唇に付いた泡を拭きながら言った。

「だって、女の子と行く時には、全く関心を示さないのに、陸と行った時に限って、そうゆうことを訊くようになったのよ。最近、特に圧が強くなってきたし」


 彼の名は森川陸(もりかわりく)

 二十六歳で、北署の刑事課に所属している。陸は頼んでいたブレンドを飲んだ。


「何か、怖いな。もし、バレたら、どうなるだろう」


「このベイクドチーズケーキ、濃厚で、一口食べると、後からじわ~って、旨いよね、ほんと」


「ね、俺の話し、訊いてる?」


「訊いてるよ。ちゃんと。~ん。ひょっとすると、別れさせられちゃうかもね」


「何だよ、サラって言って。ほんと怖いこと言うね」


「パパ、普段は大人しいんだけど、ここぞっていう時には、怖いからね。冷静な分、余計にそう思う」


「なんか、分かるかも。でも、交際を知ったからって、別れさせられちゃうものなのかな」


「だって、パパ、刑事の嫁にだけはさせたくないなって、昔ね、刑事ドラマを、舌打ちしながら見て、言ってたもん」


「でも、しつこいようだけど、実際のところは、どうなんだろ」


 彼女は、目を吊り上げた。


「私も、本音のところは、分からないけど、でも、保証もできないわよ」

 しばらくしてから麗娜は、大きく腕を伸ばし、背中を伸ばした。

「ああ、こんなことばかり考えていたから、ちっとも映画の内容が頭の中に入ってこなかったじゃない。陸は?」


「俺も」

 ブレンドを飲み干した。


「陸も食べればいいじゃない。ケーキ」


「いい。食欲もないし」


「なんだ。美味しいのに」


「また今度食べるよ」

 麗娜は、いきなり立ち上がった。


「もう、こうなったら、私たちのこと、パパに白状しちゃう?」


 そして、屈託のない笑顔を森川に向けた。


 まるで、お前に、それだけの勇気がある? とでもいいいたげな、そういう笑顔に思えた。


「アタタタッ。頭が痛くなってきた」

 森川は、一人座ったまま、頭を抱え込んでいた。






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