第八章 犯人の行方 一、俺が父親で悪いか
「陸、お前ら付き合ってどれくらい経つんだ?」
「は?」
いきなりのことで思考が止まった。
「だから、麗娜とだよ」
西嶋が、少し怒りながら言った。
「ああ・・・。一年になります。あの時も暑かったのをよく覚えています。
あの書店でのやり取りの後、何処かのカフェで待っていればよかったのに、僕は麗娜さんのバイトが終わるのを、ずっと外で待っていたんです。暑かったな。まだ陽射しも強くてね」
「ふん。あいかわらず物事を考えてから動くタイプではなく、猪のように猪突猛進の男だな」
西嶋は思った。こいつらしい。ほんと、刑事としては足りないが、男としては誠実で、悪くはない。
「よく言われます。でも待った甲斐がありました。だって麗娜さん物凄く綺麗でしたから。
働いている時と服装は同じだったんですが、プライベートになった途端、何か綺麗になったなっていう印象で、僕はドキドキしました。
それで、ぼくらは近くのカフェに行き、そこでコーヒーを飲みながら、話しをしました。
そして、話しが進むうちに、麗娜さんがとてもしっかりしている人だということを知りました。さすが西嶋さんの娘さんだな、と思いましたよ。
こんな人が、彼女になってくれたら、って本気で思いましたよ。でも、な、何せ父親が西嶋さんなわけで・・・・・・」
「俺が父親で、悪いか?」
「いや、あの、怖かったし、何より、絶対、認めてくれない、どうしょう、って思いました」
「当たり前だろ。俺の大事な娘を、お前みたいな男と付き合わせるわけがないだろ」
西嶋は、眉間に皺を刻み、言った。
「ですよね・・・・・・。いや~暑いですね」
一通り喋った後、森川が言った。
「夏だからしょうがないだろ。何を今更、暑がってるんだ」
「そうは言いますが。これが言わずにおれますか、ってなもんですよ」
「ところで、お前、娘の何処が気に入ったんだ?」
「全てですよ。優しいところから、しっかりしてるところ。それから、笑ったところが最高なんです。ほんとうに楽しそうに笑うんですから、こっちまで楽しくなってきます。
あと、外見は多分、母親似、なんでしょうが、目が西嶋さんに似ているんでしょうね。女性は、男親の方に似る、って言いますもんね」
その名残なのか・・・・・・・。目はインパクトがあるからな・・・・・・。
とにかく、睨まれた時は、怖い。
「俺に似て、美人だろ?」
森川は、変な顔を見せた。
「なんだ、その顔は?」
「なんでもないっすよ」




