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「味噌」と「カレー」と「スープ」と「まん」

作者: 神崎 月桂

「味噌汁じゃない、味噌スープだっ!」


 男子が叫ぶ。手には発泡スチロール製のカップ。


「知らないっての! てか一緒じゃん!」


 女子がそれを受けて、まさかのこちらも叫ぶ。手には黄色で丸いもの。


「一緒じゃねえええっ!」


 現在位置、コンビニの前。


 アホだ。アホがいる。目の前にいる。二人ほどいる。

 てか、恥ずかしくはないのだろうか。とても思う。ちなみに私はこの二人の近くにいるという状況が既に恥ずかしい。


「てか、テメエこそなんでカレーまんとか食ってんだよ」


「カレーまんうまいだろうがっ!」


「肉まんのほうがうまいっつーの! なんなら味噌スープの方がもっとうまい!」


「聞いてねえよ! あとカレーまんのほうがうまいし」


「はあああああ? 何とかまんっつったら肉まんだろうが! カレーまんとか具材の主張が強すぎて生地がゆっくり味わえないだろ。あと味噌スープうまい」


「いやいやいやいや、何とかまんって具材食べるものだろ、なんで生地重視してんだよ。あとさらっと味噌汁挟むな」


「味噌スープだって言ってるだろうがっ!」


 どっちでもいいから落ち着いて。周りの視線に気づいて。

 むしろ私帰っちゃだめ?


「ダメッ!」


 ……そうなんだ。てか見事にハモったね。


「そーもーそーもー! 肉まんってからしつけるでしょ? それなら生地もクソもないじゃん」


「からしとかつけるわけないだろ! あと生地とクソは一緒にしちゃだめだぞ」


 後者については激しく同意。


「あと、醤油も然り」


「なんかその然りみたいな言い方すごいイラつくんですけどおおおおおお!」


 あー、もう。そろそろ止めたほうがいいかな? ギャラリーもかなり集まってきちゃったし。


 ちょっと、二人とも?


「何ッ!?」


 うわあ、すごい食いつきよう。


 で、そこまでいがみ合うなら、ちゃんと住み分けすればいいじゃん。 自分が好きならそれでいいじゃない。ね?


「そうじゃないんだよ!」

「そうじゃないの!」


「このちんちくりんに!」

「このクソ野郎に!」


「味噌スープの良さを!」

「カレーまんの良さを!」


「認めさせたいんだよ!」

「認めさせたいの!」


 あーもう、はいはい、さいですか。


 ……で、本音は? 変なプライドで意地張ってないで伝えたら?


「え、あ、……ま、まあそこまで言うなら味噌汁、飲んであげないこともない、わよ?」


「お、おう。飲め飲め。あとかわりに俺もカレーまん食べてやらんこともない。あと味噌スープな」


 そう言いつつ、互いのものを好感する。とても満足げに。


 全く、二人とも正直じゃないんだから。相手のやつが欲しいから、自分のやつを分けてあげてお礼として貰おうとかまわりくどい。

 その上失敗してるし。


 やっと静かになった二人が、並んで歩き始める。私もその後を追う。


 左手にカレーまん、右手に味噌し……味噌スープを持ちながら。もちろん、自分の。


 まあ、つまりこの二人、そういうことである。


 ……はよ付き合えよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] コンビニに行きたくなりました、ピザまん派の者です。
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