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8.不思議な事件が起きました。

「アンヌ様、また来ておりますが、いかがいたしますか?」

「また?」


エデから手紙を渡され、私は思わず苦笑した。


なぜか最近、匿名の手紙が来るのだ。

中身は、どこどこで何時に待つ、というものだが、敵だらけの私からしたら警戒の対象でしかない。


「誰からなのか、まだ掴めていないの?」


お母様がエデに問うが、エデはゆっくり首を横に振った。


「指定された日時には人を行かせているのですが、気配も掴めないそうで……」


私の護衛達は優秀だ。

その彼らが気配すら気付けないとなると、相手はかなりの手練だ。

もしくは手紙がいたずらか。


もし手練であれば、わざわざ手紙を送る意味が分からない。

何も言わず暗殺してしまった方が楽だからだ。

手紙が送られることで、私達はむしろ警戒する。


いたずらにしては手が込んでいる。

警戒している私の護衛や侍女ではなく、城全体の使用人が一人でいるところに上から手紙を落とすのだ。

封筒に「アンヌ王女へ」と書かれているので私に届くのだが、かなり大変に思える。


「いっかい、いってみる?」

「いけません、そんな危険なこと!!」


私の提案にエデがくわっと噛み付いてきた。

思わずびくっとする。怖かった……。


エデの言うことも分かるが、現状のままにしておくわけにもいかない。

現在、総警戒体制になっているため、護衛や侍女がいつもの倍は近くにいるのだ。

それでは皆疲れてしまう。


「でも、このままにしておくのもよくないのではない?」


そう言えば、エデも困った顔をした。

エデもこの状況を良しとは思っていないのだ。


「護衛を連れて行けば良いのではない?

常に手を繋いでいれば、いきなり空から連れ去られても大丈夫よ」


お母様の提案に、エデが唸る。

大切にされているのが分かり、私はにっこり笑った。


「ちかくにいてくれるのでしょ?」


エデはしばらくうんうん唸っていたが、やがて根負けした。




指定された、飛行の練習をする庭園の隅。

私はエデと護衛と手を繋ぎ、手紙の主を待っていた。


手紙が空から降ってきたという情報から、私達は上を警戒していた。

だがこの場所は隠れられる場所の少ない開けたところだ。

空を警戒させて横から来るパターンか?と周りを見渡した時、思いがけない人を発見した。


「……え?」


私は片手で数えられる程度しか、それも近くでは見たことがない。

だが、見間違えるはずがない。

少し癖のある金髪も、高い鼻も、そして金色の翼も、見慣れてきた今の私と同じ。


エデと護衛も、私の視線の先に気が付いた。

私と同じく一瞬呆気に取られ、だがすぐに警戒体制になった。


本当は警戒なんてしてはいけない相手だ。

だが、彼が私を邪魔に思っていても仕方ないと思えてしまった。


彼は、この国の王太子。

そして私の父だ。


彼は私達全員が目を向けたことで身動ぎした。

少し離れた場所にいるのに、視線をさ迷わせているのが分かる。

不思議に思っていると、何事もなかったかのように歩いて行ってしまった。


歩いていて、たまたま足を止めて私を見たようにも見える。

だが私には、彼が私を待っていたにも関わらず視線に負けて逃げたように見えた。


彼は確か、まだ20歳だ。

精神年齢30越えの私からすれば、青臭い。

なんだか不器用で可愛い人に見えてきた。


そう考えて、いや、と思い直す。

権謀術数の王家で王太子をしている人だ。

あれも演出である可能性がある。

では、どのような意図が裏にあるのか。

だがなかなか納得できる理由に紐付かない。


結局その日、私達は1時間程待ち、誰も来ず何も起きないことを確認してから部屋に戻ったのだった。

お母様やマグノリアとウィロウに危害が加えられた可能性も考えていたが、それも杞憂。


さらに、手紙はこの後ぴたりと止み、皆で首をひねることになった。


だが、それから1週間後、急に真相は目の前に現れた。


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