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61.可愛い弟妹です。


お父様と宰相と挨拶を交わしていると、二人の後ろからすごい勢いで白い塊が飛んで来た。

普通なら警戒するが、私は笑顔を向ける。ああ、その後ろにもう一つの人影。


「おねえーさまー!!!!」


そう言って飛び付いて来たマノンをどうにか受け止めた。

実のところ弾丸のような速さのマノンを受け止めるにはかなりの力が必要で、私の足元は少し沈む。

思わず、うっと言ってしまったが、何でもない風を装い笑顔を浮かべた。


「ただいま、マノン」

「おかえりなさいませ!」


マノンの満面の笑みに癒される。

ああ可愛い。

こんなに全力で帰りを喜んでもらえるなんて幸せなことだ。

腕の中のマノンをぎゅーっと抱きしめる。温かい。愛しい。

……生きている。


ソラルが音もたてずにマノンの後ろに立つ。

その降り立つ姿は品があって美しい。

苦笑する姿は、すっかりマノンのお目付け役だ。


だが。


「ソラル!ただいま」


ソラルに笑顔を向けると、彼は泣きそうな顔になった。


「……はい」


マノンを離し、腕を広げる。


「ソラル」


もう一度呼ぶ。

すると、おずおずと近付いてくれた。

私はソラルを引き寄せ、思い切り抱きしめる。


「留守を守ってくれて、ありがとう」

「……っ、はい」

「息災のようで、良かったわ」

「姉上、こそ」


ソラルは頑張ってくれた。

腹黒の大人びた子だけれど、まだ10歳。

それなのに、マノンを守れるのは自分だけだと、気を張ってくれたのだ。


肩にソラルの顔を押し付けると、じんわりと肩口が湿る。


「ありがとう、ソラル」

「っ、お帰り、なさい、ませ」


どんなに大きくなっても、あなたは可愛い私の弟。

大好きな弟。


あなたが生きていてくれて、良かった。


「ソラルにいさまばっかりずるいー!」

「ふふ、マノンもおいで。二人とも大好きよ」


お父様は、二人を可愛がってくれている。

でも、他の子供達より贔屓すると角が立つ。

だから二人を思い切り甘やかせるのは、今は私だけ。


いっぱいいっぱい言おう。

死ぬのは簡単だと、この旅で改めて感じたから。


「待っていてくれて、ありがとう。愛しているわ」



お父様と宰相の寂しそうな瞳は無視し続けた。

弟妹優先!


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