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40.ご飯を食べましょう。


村には羽馬車を停める場所もあるとのことだったので、飛んで行くことになった。

先導は縄で腕を縛られたままの襲撃犯達だ。

翼は動かせるので、羽馬車の前を行ってもらっている。


「……はっ、はっ、も、もう少しゆっくりではダメか?」

「羽馬が馬車を支えられないんだ、遅いと」

「く……っ!」

「あ、み、見えてきた!あと少しだ!」

「うおー!」


羽馬の速度に合わせて飛んでいるため、息も絶え絶えの様子。

合掌。


が、おかげで10分程で着いた。とても早い。


開けた場所に羽馬車を停まらせる。

襲撃犯達は地面にへたりこんだ。


「ぜぇ、ぜぇ、また上手い飯もらわねぇと動けないぞ、こっちは」

「分かったわ。でも、村の人達に説明はして来てね。何人か付いて行ってあげて。そしてここまで連れて来て。

私は狩りをしてこようと思うけれど、一緒に行ってくれる人は?」


私が遠征団に声を掛けると、昨日も狩りをしていた人達が手を挙げる。


「それなら、私も行きますよー護衛に」

「……いらないんじゃないか?」


ティモテも手を挙げてくれたが、マテオが横やりを入れる。

……昨日、近くで戦闘を見られたからな。


「狩りをしている者とは別に、護衛はいるでしょう?」

「いや、いらない。昨日あれを見ていないな?お前」

「あれって?」


たまたまティモテはその時離れたところにいたのだ。

私が襲撃犯にお話ししているところくらいしか見ていないだろう。


「……俺どころか誰も気付かなかった奴らに真っ先に気付き捕らえたのは誰だと思っている」

「……え、まさか、え?」


まじまじと見られたので、私は視線を外した。

やんちゃしたのをバレた気分で恥ずかしい。


「噂は誇張ではなかったという話だ」

「……後でその噂聞かせてもらうわね」


何を言われていることやら。



結果、遠征団は3班に分かれることになった。

襲撃犯を連れて村人を集めてくる班。

狩りをする班。

料理の準備をする班。


マテオとティモテは村人を集めてくる班だ。

有翼族はほとんどその班になっている。

今回は人間の方が重宝された。狩りは有翼族でも何人かは剣で応戦できるが、人間の弓の方が効率が良い。

料理は言わずもがな人間の独壇場だ。手伝いと警備に数人残した。


私は有翼族2人と人間3人と共に西側の森へ入っていく。

動物はそちらに多いと聞いたからだ。


私は他の者が見えなくなってから、供の5人を振り返った。


「ここから先、私は身を守るだけで精一杯だった」

「……え?」

「そういうことにしておいてくださいね」


私は動物を入れるための袋から、こっそり持ち出していた弓を取り出す。

人間は全員弓を持っていたので、余っていた料理班の分を拝借したのだ。


驚く彼らを横目に、私は頭上に弓矢を構えた。


パシッ


真っ直ぐに、その矢は鳩を貫く。

落ちてきた矢鳩に、皆呆然だ。


「さぁ、どんどん行きましょう♪」


実は私は王宮の森で弓の練習もしていたのだ。

匿っている人間達の食料確保も兼ねて。


弓は器用な者がどんどん作ってくれたり、落ちていたものや使った綺麗なものを拾ったりして、十分な量があった。

部屋の近くだけでなく、門のすぐ側の森にまで狩りに行っていたため、動物はたくさんいたのだ。

だが、限られた王宮の中の動物を狩りつくすわけにもいかない。

そこで一番狙っていたのが鳥だ。

門を越えて飛んで来る鳥ならば、生態系を壊さない。

だから私は、鳥を射るのが大の得意である。


その後、一緒に来た人間の1人がウサギを1羽捕まえた。

だが他には捕まえられていない。


「食べられる実や葉は、全部採られているわね。さすがに」

「はい……」


森と言っているが、ハリケーンの影響で林と言えそうなのだ。

木々が多くなぎ倒されている。


と、また鳥を見つけて私は射た。

よしよし、鳥肉もうひとつゲット!


だが、50人近くの食事なのだ。

まだまだ足りない。


「ひとまず、鳥2羽とウサギ1羽を料理班に届けてくれる?ここを真っ直ぐ行っているから、また戻って来て」

「はい、分かりました!」


1人の有翼族をお使いに出す。

お肉で出汁をとった方が美味しいからね。


「では、私は上から獲物を探します」

「ありがとう!」


もう1人の有翼族が自ら言って飛んで行く。

役に立てていないことを気にしたのだろう。


成果をあげられていない人間2人も血眼で獲物を探している。

と、何かが走って来る音がした。


「い、猪です!これはさすがに逃げましょう……!」


上から有翼族が言ってくれるが、私は唾が溢れるのを感じた。

……猪鍋、美味しそう。


「穴を掘るわよ!そしてその中に落ちるよう追い立てるの!」

「しょ、正気ですか?!」

「残念ながら!私とあなたで、追い立てるわよ。少しくらい浅くても良いから穴を掘って、両横から弓矢をありったけ放って!」

「わ、分かりました!」


5人で膝下が埋まる程度の穴を掘った。

足を止めることしか出来ないだろうが、この際仕方ない。


「進行方向がずれているわね。行くわよ!」

「はい!」

「あなた達も横から頼むわね!」

「「「はい!」」」


有翼族組で猪に向かう。

私は猪の前に姿を見せた。

挑発すると、追ってくる。作戦通り!


穴の方へ後ろ向きで向かいながら矢を放つと、猪の左目に当たった。


「ぶふぉー!」


怒ってこちらに向かってくる。

その後ろから、有翼族の護衛が剣を振るう。当たらないが後ろに逃げることは出来ない。


私は前を向いた。

人間の3人が脇に隠れながら弓矢を構えている。良い位置だ!


そして私が飛びながら穴の上を通過した後。


「ぶふぉ?!」


上手く猪がこけてくれた。

今だ!


3人が弓を射まくる。

弱ってきたのを見て、私と有翼族の護衛は剣を構え近付いた。


そして。


「……よしっ!」


猪の首を落とすことに成功したのだった。


私達は全員でハイタッチだ。

達成感がすごい。


が、私が王族であることを思い出したらしく、急に恐縮する。

私は肩をすくめた。


「今だけは、狩りの仲間でしょう?」

「あ、ありがとうございます……!」


と、ちょうどお使いに出した有翼族の護衛が戻ってきた。

これで少しは、猪を持って帰りやすくなったかしら。


「さあて、運ぶわよ!」

「「「「はい!」」」」

「え、猪?!え、ええ?!」


1人付いていけていないのは申し訳ない。




結果として猪は喜ばれたが、私はティモテとマテオにお説教を食らった。


「猪を狩るなんて、上手くいったから良かったものの、死人が出てもおかしくないんですよ?」

「ここまで危険を侵すのはねぇ。立場を考えてほしいです」

「だって猪肉おいし……すみませんでした」


ギロリと睨まれた。しくしく。


だが、そこそこ豪華なご飯が出来たのだ。

ウサギと鳥の雑炊に、猪のシチュー。

汁物が多いのは仕方ない。お腹を壊されても困るしね。持ってきた野菜もたっぷり入っていて栄養満てんだ。


連れて来られた村人達は、老人と女子供ばかりだった。

男はほとんど襲撃に出ていたそう。

その男達が縄で縛られていたため警戒していたが、恐る恐るご飯を受け取るとすぐ、掻き込みはじめた。


「熱々だから気をつけてくださいねー」

「アンヌ様、そろそろ彼らの縄を解きますか?」

「そうね。食べさせるのも大変だもの」


もう彼らは私達に逆らわないだろう。

力の差を見せ付けたうえで、施しを与えたのだから。


「アンヌ様もどうぞ。猪肉が食べたかったのでしょう?」

「ありがとう!」


念願の猪肉!

ふーふーしながら頬張る。うん、美味しい!

きちんと料理人には下処理の仕方まで教えたので、柔らかく臭みもないのだ。


たくさんあった雑炊もシチューも、あっという間になくなった。

餓えていた人達に、よく食べる護衛達。そりゃあそうか、という感じだ。


皆が食べ終えたあたりで、1人の老人が進み出て来た。


「代表の方はどちらでしょうか。私はこの村の村長でございます」


私は立ちあがり、ティモテとマテオに目を向けた。

二人が私の後ろに控える。


「私です。どこかゆっくりお話しできるところはありますでしょうか?」


さて、ここからだ。

状況を把握しよう。


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