38.出発しました。
南部へ!
「忘れ物はないか?」
「はい」
お父様が心配そうな目で聞いてくる。
何度も何度も確認した。支援物資も多く持っている。大丈夫だ。
遂に、出発の時が来た。
移動には羽馬車を使う。
羽馬。本では読んでいたが、実物は今回初めて見た。
白い肢体に、白い翼。
ペガサスじゃん!と口から出かけた。危ない危ない。角はないんだけどね。
普通の馬車とは違い、羽馬同士の距離は遠い。翼を広げるからだ。
そして、1台につき前後2頭ずつが配置されている。前で引っ張るだけだと落ちるからだろう。
合計4頭が、羽馬車5台分いる。
いやはや、圧巻だ。
さらに護衛も、人間の護衛は少数だ。
移動中の襲撃には有翼族でないと対応できないからだろう。
実は、平民の有翼族と会話をしたのも初めてだった。
門を守ってくれている人を遠目で見たことしかなかったのだ。
着ているものが違うのはもちろんだが、栄養状態が悪いのか細く肌が汚い。髪の色も、濃い色の人が多いようだ。
王宮から出たことのない世間知らずだと改めて思い知らされる。
「おねえさま、かえってくるのいつ?」
「そうねぇ、半年以内には帰って来たいわ」
「そんなに?!」
見送りに来てくれたマノンに微笑む。
本当は、1ヶ月程の予定なのだ。羽馬車は速いので、南部の侯爵家までは3日で着くのだから。
だが、上手くいくとは限らない。
思っていたより早めに帰って来る方が嬉しいだろうから、長く伝える。
……永遠に帰って来られない可能性も、ゼロではないのだが。
「早ければ1ヶ月で戻るわ。お留守番よろしくね」
「はい!おきをつけて!」
語彙が増えていて嬉しいことだ。
私はソラルにも顔を向けた。
「ソラルも、お留守番よろしく頼むわ」
「……はい」
ソラルの顔は固い。
もしかすると、危険な旅であることを分かっているのかもしれない。
「ちゃんと帰って来るわ。大丈夫よ」
ソラルの頭を撫でる。
大きくなっても、可愛い。
「おにいさまだけずるいー!マノンも!」
「ふふ、はい」
マノンにも、よしよしする。
ああ、本当に可愛い子達だ。
この子達を守るためにも、頑張って来ましょう!
お父様の後ろに、宰相はいた。
目が合う。
行ってきます、と心の中で呟いた。
「では、行って参ります」
私はそう言って、羽馬車へ乗り込んだ。
ティモテとマテオも同じ馬車に乗る。
「出発!」
「はっ」
「ヒヒーン」
ペガサス達が一斉に地を蹴った。
かなりの揺れが起きる。
思わず座席から落ちてしまった。
「大丈夫ですか。ほら、窓からお手を振ってください」
「はい」
私は急いで座席に戻り、窓から外を見る。
もう遠くなってきていて、慌てて手を振る。
新幹線のようだ。
どんどん小さくなり、やがて見えなくなった。
羽馬車は、高度は高くならない。
ただスピードが馬車の何倍も速いのだ。
窓を閉め、ふうと一息つく。
さぁ、ここからだ。
「ティモテ、マテオ、最後まで練習はしておきたいのです。付き合ってくれますか?」
「もちろん」
「やっりましょー」
本当にこの2人は心強い。
私はそうして、道中ずっとロールプレイングを行っていたのだった。
36話で「誤字か(苦笑)」
今回で「あれ、合ってたの?」
となってくれたら嬉しいです(笑)




