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3.翼が生えていました。
私はしばらく泣いていた。
そういえばさっきまで呼吸をしていなかったことに今更気が付く。
久しぶりの酸素に、きちんと息をすることができない。
周りは、私の知らない言語でザワザワしている。
ここは外国のようだ。
その時、誰かが荒い息をしながら、私を抱っこした。
……この人だ。
さっきまで苦しそうな声を出していた、私を勇気付けてくれた人。
「アンヌ」
彼女は、私にそう言った。
目は見えていないが、間違いない。
「*#$+<%アンヌ……!アンヌ…!!」
他の言葉は分からない。
でも、それだけ理解できた。
私の名前は、アンヌなのだ。
彼女は私を抱っこしながら、なぜか背中を触った。
それにより、毛がふさふさ当たる。
……背中に、毛?
ちょっと気持ち悪く、背中を動かした。
するとその毛がバサッという音を立て、動いた。
……毛が、動く?
いや、むしろ手のように動かせるこれは、毛が生えている手?
そんな馬鹿な。
手と足はある。
4本とも、バタバタと自分の思う通りに動かせた。
が、それだけではないと分かった。
私は……背中の2対の翼も、同じように動かせるのだった。
……はぁ?!