20.離れられません。
私は今日も、マノンの部屋にいた。
「マノンー!ばあっ」
「あー」
ご機嫌さんだったので、いないいないばあをやってみた。
まだ表情は動かないが、喃語は話すようになってきた。
可愛い。ヴィクトー先生の授業の疲れが取れていく気がする。
私の癒しだ。
「ふぇ、ふぇ」
近くで泣き声が聞こえるが、そちらは乳母の子だ。
「すみません、一度出ます」
慌てて乳母のニナが抱き上げるが、私は苦笑した。
「気にしないで。マノンも泣くなら、その時はその時よ」
マノンはキョトンとしている。
大丈夫そうだ。
ニナは申し訳なさそうに、ありがとうございますと呟いた。
どこの世界でも、赤子を持つ母親は頭を下げてばかりなのだなと思う。
少し、前世の姉を思い出した。
「失礼いたします。そろそろオムツの交換かと」
「ありがとう」
一緒に部屋に来ていたマグノリアがオムツをくれる。
彼女の秘書としての能力は本当にピカイチだ。
まだ9歳であることを考えると末恐ろしい。
ニナもオムツを受け取り深々と頭を下げている。
私はテキパキとオムツを交換した。
こういう作業は大得意だ。
少なくともマグノリアよりは。
一度やってもらった時は、あまりの遅さと不快感にマノンが大泣きしてしまった。
それ以来、マグノリアはサポート担当だ。適材適所である。
「本当にお見事ですね」
ニナが感嘆の声をあげる。
そう言うが、彼女もとても手際よくオムツ交換を終わらせていた。
「あなたと変わらないわ。
でも有翼族としてはあれだから、秘密にしてね」
「はい」
ニナが頷くのに満足して、マグノリアを振り返る。
「あとを頼んで良いかしら。もうすぐエデも戻るでしょうし」
「はい。行ってらっしゃいませ」
「ニナも、根を詰めすぎないでね。マグノリア、上手く休憩を取らせて」
「かしこまりました」
マグノリアが頭を下げる。
ニナはまた、恐縮し泣きそうになりながら、ありがとうございます、と繰り返した。
「また後でね、マノン」
プニプニの手をつつく。
とても可愛い。
すると。
「あー」
そう言いながら、指を握ってくれた。
ああ、もう!可愛すぎる!
「どうしましょう。可愛すぎて離れられない」
「お勉強頑張ってくださいませ」
マグノリアに冷たくあしらわれた。くすん。




