涙と記憶の物語
【Enter your password】
「Man is God and devil
Emotion is with Me
Even at the cost of my life
I hope for destruction」
【...】
【Login completed】
【Welcome,My lord
Let's start,Noah's Ark plan.】
これは私の記憶、数字で創造され支配された
高慢で愚かな我が愛し子達の繁栄と衰退の物語
【 …Set up memory
Hold on, please
Reload,Reload
Setup has been completed】
【Selection
"Ark of Noah"
"My memory"
"Prophecy and destruction"】
【Expand?】
「Yes」
【I understand
Expand memory
Reload,Reload
Completed】
【Log】
「動物を殺すのは許されているのに
人が人を殺めると罰せられるのは何故」
「子どもは天使なんて言われているけど
それならどうしてイジメや仲間外れは
なくならないの」
「普通って何、
大人って何を以て定義付けるの」
「どうして群れなくてはいけないの、
人間は誰と居ても孤独なのに」
それは、彼女の1つの癖だった
なんにでも誰にでも質問を投げかける癖
勿論、正確に答えられる人なんて誰も居ない
観念的で哲学的な定義、思想、考え方、価値観
何者にも染まらない、1人で居られる強さ
齢18にして彼女は世界に反抗した
同調を求めるこの孤児院に、
そして異端者をじわじわと絞め殺す
「日本」という檻に
そんな彼女だから、いやそんな彼女だったから
こそ私は惹かれたのかもしれない
彼女ならこの退屈な日常を変えてくれる
それが私が彼女に興味を持ったただ一つの理由
だった
「ねぇ、ハル。日本ってさ年間どれくらい
人が死んでると思う?」
彼女、霧崎 ナギは、いつもの様に孤児院
の広い庭にあるジャングルジムの頂上で
私に脈絡も突拍子もない質問を投げかけた
風によって彼女の長い髪がゆらりと揺らぐ
「さぁ、1万人くらいかな
考えたことないからわかんないや」
基本私は勉強以外の知識に興味がない
だからこそ知らないことを教えてくれる彼女
は飽き性の私にとって興味の尽きない本の
ような存在なのだが。
そんな私の返答に彼女は、何処か得意気に微笑みな
がら、自身の髪を軽く弄る
私が答えを知らない時にするいつもの癖だ
「正解はね、約18万人だよ
そのうち若者の死亡原因で1番多いのは
自殺なんだって。不思議だと思わない?
こんなに銃も規制されて一見安全な国でもさ
見えないところではたくさんの人が
自分から死んでいくんだよ
つまりね、私が言いたいのはね
【言葉で人は殺せる】って言うことなんだ」
言葉で人は殺せる…考えたことも無かった
でも、それならイジメが原因ということに
なるがそもそもそれ自体定義が難しい
しかし集団のストレスのはけ口としては生物的
に有用な手段とも言える
そして、それは目に見えない
気づかないうちに心を支配され保健の教科書
に書いてあったような鬱病や精神疾患、
薬漬け、自殺などに陥るのではないだろうか
まさに蛇に噛まれたあと、知らず知らずの
うちに毒が、体を蝕んでいくように。
「…ナギは、それが可能だとでも言うの」
「…方法はいくらでもあると思う
例えば、集団ヒステリー、コックリさん
みたいなものかな、あとは、ストーカー的に
相手を24時間365日ずっと監視し続けたり
真っ白な部屋に閉じこめて鏡に話しかける
ように命令したりね。知ってる?命令され
役割を与えられると人間は逆らえないんだ
人って案外脆いんだよ」
とナギは歌うように答え、私に顔を近づけ
宣言するように言葉を紡いだ
「だから私は人間の限界を、世界の終わりを
見てみたいの。私は既にその鍵を持ってる
だから、見ていて欲しいんだ、私の反抗を」
彼女の瞳に頷く私が映る
迷いは無かった、だだ単純に彼女の反抗を
結末を見てみたいと思ったから
「嬉しい…、やっぱりハルは私にとって特別
だよ」
そうして、私が彼女の「特別」になった次の日
彼女は、私の前から姿を消した
それから、10年。日本はますます機械化が進み
反するように、人口は減少の一途を辿っていた
そう、ナギが望んだことがゆっくりと、
確実に現実味を帯び始めてきたのである
理由は明白。社会が発展しすぎるあまり
孤立化し始めたのだ
以下は、政府が掲げる「Ideal social planning」
の一部である
「 「Ideal social planning」
荷物の運搬に最新鋭のドローン使用
人工知能による人員不足補充
完全犯罪抑止ボディハッキングツール「ミスラ」
能力判定・幸福度、及び健康管理ボディハッキング
ツール「ゼウス」の着用による安全な社会、Etc」
勿論、最初は国中で反発デモが起こった
「基本的人権の侵害だ」
「暴力的かつ、非人道的な行為だ」
など避難する声も多数あった
しかし、その有用性がテレビやラジオ、雑誌で
何度もサブリミナル効果として発信された結果
最終的には反対派よりも賛成派が上回り徐々に
受け入れる人々は増えていった
時の流れは、どんな考えも受け入れると
言うことだろうか
コペルニクスの地動説が時を経て、受け入れられた
ように
しかし私は頭にチップを埋め込まれるなんて
生理的にも道徳的にも受け付けなかった
まして、ディストピアの一員に成り果てこの国で
歯車として死ぬなんて絶対に嫌だった
だから、私は戦場カメラマンとして、生きている事
の証明と戦場の惨状を伝えることを第一に日本から
紛争地に向かった
【 Log Certain country In the battlefield】
そこは、まさにこの世の地獄絵図を縮小した
ような惨々たる有様だった
あちこちから聞こえる慟哭、轟音、銃声、悲鳴
一歩間違えれば、自分もすぐ様近くの半分
液状化した蝿が集る肉塊と成り果てる恐怖
ある意味日本とは真逆の「見える死」の現状が
そこには広がっていた
ファインダー越しには、ロケットランチャー
などにより壊されたと見られる灰色の
すす焦げた建物の数々
生々しい死体、血の痕跡など
見渡す限り一面が赤、黒、のコントラストで
彩られていた
ただ、私がこの戦場に来たのにはもう1つだけ理由
あった
そもそも何故この戦争が始まったのか
元より、ここは宗教的に様々な民族が入り乱れ
絶えずトラブルは発生していたのだ
しかし、そこに10年前更に亀裂を入れるように
ある噂が流れた
「ある1人の少女が暴行を受けた後虐殺された」
という根も葉もない噂
但し、その少女というのがある巨大な宗教の信仰者
だったと言うことから、憤怒した信仰者達が暴動を
起こしソレが激化して今に至るのだ
そして私はこの噂にナギの影を見たような
気がしたのだ
「言葉で人を殺せる」と言った彼女の影を
そして10年前というのも私に確信を持たせるには
十分すぎるくらいだった
ナギは火薬になろうとしている
そして地球をバルカン半島のようにして、
爆発させようとしている…?
そうだとして、私に止める権利はあるのだろうか
この10年、1度もナギを忘れたことなんてないが
あれ以来1度もナギと会っていないのだ
一体彼女は何をしようとしているのだろうか
考えて私は背中に寒気を感じつつも、
取材を依頼した現地のゲリラ部隊と共に
戦場を駆け抜けた
その晩私は、ナギの夢を見た
それは私とナギが初めて会話をした時の夢
彼女はいつもの様に、誰も寄せつけないような
雰囲気を漂わせながら愛読書らしい「ニーチェの
名言」に目を落としていた
そこに、私はゆっくりと近づき水を差すように
「何を読んでいるの?」と話しかける
すると彼女は不意に顔を上げ少し不機嫌そうに
「見れば分からない?神咲ハルさん」
私に返答を返した
彼女の動きに合わせて長い髪がゆらりと揺れ
その赤い瞳にはどこか人を拒絶するような色が
浮かぶ
そんな彼女の反応に一瞬私は言葉に詰まるが
ある程度予測は出来ていたので、
私は話題を逸らすように彼女の持っている本の
一節を暗唱した
「「あぁ、もう道はない」と思えば打開への道があっ
たとしても、急に見えなくなるものだ。
「危ないっ」と思えば安全な道は無くなる
「これで終わりか」と思い込んだら終わりの入り口に
足を差し入れることになる。
「どうしよう」と思えばたちまちにしてベストな対処
方法が見つからなくなる。
いずれにしても、おじけづいたら負ける、破滅する。
相手が強すぎるから、事態が今までになく困難だか
ら、状況があまりにも悪すぎるから、逆転できる条件
が揃わないから負けるのではない。
心が恐れを抱き、おじけづいたときに自分から、
自然と破滅や敗北の道を選ぶようになってしまう
のだ。」
…「たわむれ、たばかり、意趣ばらし」の1つを
一息で言いながら私はさらに言葉を紡いだ
「どんなに冷たいことを言われようと、構わない
私は貴方を恐れはしないから、霧崎ナギさん」
彼女は暫く私を見つめ、少し考える素振りをし、
ようやく口を開くと
「…貴方は、私の差し出した「善悪の木の実」
があったとしたら食べる気はある?」
試すように薄く笑いながら私に返答した
…創世記第2章「アダムとエバ」
彼女がアダムに禁断の果実を食べさせたことにより
二人は楽園から追放される
「…さながら、貴方はエバであり、狡賢い蛇
でもあるのね…霧崎ナギさん。でも、私の答えは
「Yes」。蛇の毒は傷口から入れば致命的だけど
飲み下す分には害がない。禁断の果実に
手を出したとしてもそれはソクラテスで言う
「無知の知」を知ったことになる。
それに何より私は貴方に興味があるから
ここで引き下がる訳にはいかない」
…まぁ、こんなことを言っている時点で、
私はもう毒されてるのかもしれないが
「…貴方って、私が言うのも可笑しいけど本当
変わってる。でも、面白い。私、貴方のこと
好きになった。ねぇ、ハルって読んでもいい?」
彼女はそう言いながら本を横に置くと、
不意に私に抱きつき…
私はそこで目を覚ました




