Episode4 涙
離婚するまでで驚いたことが2つある。
1つは、『お父さん』が『お母さん』にDVしていたのが、逆になっていたことだ。
お父さんは外面が良かったから、調停員を騙すことなど容易かっただろう。
もう1つは、お父さんが「クソ女共が住んだ家なんか住めねぇから、てめぇらにやるよ。俺は杏奈ちゃんと一緒に住むからな!」
と言ったことだ。お父さんは浮気までしていたのだ。
それからは早かった。
お父さんは、1つの部屋を埋めつくしていた荷物を全て持って出て行った。
お父さんがいなくなった家は、ひどく広かった。
お盆の頃、玄関のチャイムが鳴った。
出てみると、護だった。
「護!」
「暇だったから、遊びに来た。入っていいか?」
どうせ私も暇だし、いいか。私は護を招き入れた。
「うん。入って」
「あ、おばさん。お邪魔します」
護はお母さんに声をかけた。護の両親は礼儀に厳しいので、見た目は派手だが、礼儀正しいのだ。
「護くん、いらっしゃい」
お母さんがにこやかに出迎えた。
「俺さ、聞いちまったんだ。うちに参拝に来た人の話」
やぶからぼうに、護が言った。
「何?」
何のことか分からない。
「幸奈、お前のお母さん、離婚したって本当か?」
護にバレてしまった。
「…………そうだよ」
「アル中だったとか、暴力ふるってたとも聞いた」
「……それも本当だよ」
「幸奈、気づいてやれなくて、護ってやれなくて……………ごめん!!」
護は泣きながら謝ってきた。
「ごめんな、彼氏失格だよな……」
「護が泣くことじゃないよ。心配してくれただけで……嬉しいから」
近所の人からは腫れ物に触るような扱いを受けていたが、護は今までどおりに接してくれた。護の優しさがしみて、私も泣いてしまった。




