表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

Episode2 夏祭り

 私はカランコロンとせわしく下駄の音を響かせながら、神社へ急ぐ。

 時刻は7時15分、15分の遅刻だ。

『待ってる』と言ったが、待たせてしまっている。

(やばい、護待ってる!)

 鳥居の前に、護が立っているのが見えた。

 だが、浴衣を着ているせいで上手く走れない。

 ようやく護のもとに着いた頃には、息も絶え絶えだった。

「ま、護。遅れてごめん。浴衣着るのに手間どっちゃって……」

 護はこちらを向かず、顔を背けている。

 どうしよう、怒らせたかな……?

「……護? 怒ってる……?」

 恐る恐る聞く。

「……い」

「え?」

「可愛い……」

 真っ赤な顔と、消え入りそうな声で、褒められた。

「あ、ありがと……」

 面と向かって褒められたのは初めてで、こちらも照れてしまう。

 祭りの喧騒の中、しばらく沈黙が続いたが、護が沈黙を破った。

「ま、祭り! 早く行こうぜ!」

「うん!」

 突然、手をつかまれ、

「わっ!?」

「足元、下駄で歩きにくいだろ。手ぇ繋いどけ」

 護が手を引き、私たちは歩き出した。

 少し歩くと、りんご飴の屋台を見つけた。

「あ、りんご飴! 買って来る!」

「ちょっと待ってろ。」

 護は私を屋台の横に待たせ、列に並んだ。

 しばらくして、片手にりんご飴を持った護が戻ってきて、私に手渡してくれた。

「ありがと。お金……」

 払うよ、と言いかけたところで、

「今日は俺の奢り。だから、気にすんな」

 言葉を遮って、護は言った。

 それから、たこ焼きやかき氷を食べたが、全て護が奢ってくれた。

 申し訳なくなってお金を払おうとしたら、全て「彼女なんだから、奢らせろよ」と言われて、結局全て奢られてしまった。


 屋台を楽しんだ後、私たちは神社の石段に腰掛けた。

 8時から上がる花火を見るためだ。

 この花火は『一緒に見たカップルは、ずっと一緒にいられる』というジンクスがあり、毎年たくさんのカップルが夏祭りにやってくる。

 護はこの神社の息子なので、あまり人が来ないところを知っていて、そこへ連れて行ってくれた。

「たぶん、ここならあんま人来ねぇぞ」

「ありがと、護」

「何が?」

「一緒に夏祭りに来てくれた事と、彼氏になってくれたこと」

「俺さ、『いつか彼女ができたら、この祭りに一緒に来る』って決めてた。あと、幸奈のことは幼稚園のときから好きだった」

「……言われてみれば、私もそのぐらいから好きだったかも」

「何だよ、俺ら両想いだったのかよ〜!」

「そうだねー!」

 私と護が笑い合ったところで花火が始まった。

「わー、綺麗!」

「……幸奈!!」

「何?」

 横を向いたその時、

「んっ!?」

 いきなりキスされた。

「え、な、何?」

「……ずっとこうしたかった」

 鳥居のところで見せた表情で護は言った。

 花火が終わり、祭りの喧騒が残る中、私たちは帰路についた。

 この時、私は明日自分を取り巻く環境が変わるとは考えてもいなかった────

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ