0-1 山の中の寂れた神社
始めましてSKと申します
この小説を読もうと思っていただいてありがとうございます
この小説に登場するキャラクターは既存のゲームキャラのオマージュが含まれたオリジナルキャラです。
8月中旬、夏真っ盛りの昼。
セミたちがうるさく鳴いているなか、こだまする釘を叩く音。
ハンマーを振るたびに緑色のショートヘアが少しなびく。
黒い巫女服の袖から布きれを取り出して汗をぬぐう。
正直、こんな暑い日の中こんなことをしたくない。
そう思いつつもやらなければならないことなのでもくもくと作業を進める。
壁の一面を一通り修繕したところで
「みどりー ちょっと休憩しようよー」
私―緑宮 類は作業を一旦中断して声の主の方へと歩みを進めていく。
本堂の軒先には氷水が入った茶碗があり,黄色い尻尾の上に座り込んですでにくつろいでいる狐娘―這摩 理尾がいた。
私は彼女の隣に座ると氷水を一気に飲む。頭がキーンとする。でも、この氷水は私にとっては格別だった。
みどり「あー 生き返る このまま熱中症で死ぬかと思った」
理尾「おおげさだなぁ 別にただの氷水だよ?」
みどり「暑い日の肉体労働にはこれが一番なんだって この氷も理尾が作ったの?」
理尾「そんな大したことはしていないよ 山に捨ててあった冷蔵庫を修理して作っただけだよ」
みどり「電力はどうやって調達したの?」
理尾「そのへんは ほら 妖力でバーっと」
みどり「妖力でパーッと」
彼女は頭がいいのだが,人に説明することが大の苦手である。わたしも人の事を言えないけど
理尾「みどり,神社の修繕はどのぐらい進んだ?」
みどり「うーん とりあえずあと少しで壁に開いた穴をすべて埋めることが出来るからここで雨風をしのげる程度にはなるね また後で本格的に修繕する必要がありそうだけど」
理尾「それじゃあ、あと少しだね」
みどり「あとちょっとだけ待ってね」
理尾「それにしてもこの神社、一体何なんだろうね」
みどり「私もこの神社の事については聞いたことがないし... もしかしたら先代の巫女が何かに使っていたかもしれないね」
そう言って本堂の中を見る。特に儀式が行われた形跡もなく、誰かが来た形跡すらない。誰も使っていなかったであろう神棚には人と妖怪らしきものが横並びに立っている偶像がほこりをかぶっている。私はその像をじっと見つめていた
理尾「みどり? どうかした?」
みどり「いや ちょっと ボーっとしてただけ それじゃあ、残りの部分も仕上げるか」
理尾「私は夕飯の準備をしておくよ」
みどり「うん、お願い」
そんな二人を一つの影が林の陰から覗いていた。
「目標発見... すみやかに排除する...」
その陰はそう呟いて二人に近づこうとする。
その時...
「...!!」
足元の土が崩れる。どうやら神社の周囲には落とし穴が張り巡らされていたようだ。体勢を整えられなかったその影はそのまま穴に吸い込まれていった...
世界設定:ここは妖怪が存在する近未来。妖怪たちは山で慎ましく暮らしており、昔は人間とも仲が良かった。しかし、時代とともに人々が妖怪の事を敵視するようになり妖怪を排除していった。妖怪たちは人間たちの圧倒的な技術力に手も足も出ずにどんどん人間たちの侵攻を許してしまっていた...
緑宮 類:先祖代々妖怪退治を生業とした巫女の一族の後継者候補であった。幼いころから先代に妖怪退治の厳しい修行を積まされていたが、ある出来事をきっかけに人間たちを裏切り、家を飛び出す。森の中をさまよっていた際、最初に出会った理尾と仲良くなり共に行動することにした。彼女の黒い巫女服は人間たちへの対抗心の象徴であり、懐の中には鋼鉄製の大幣(巫女がよく持っているお祓いをするための棒)がある。
這摩 理尾:特別魔力が高い狐一族の末裔。人間たちの侵攻に対抗するための方法を模索するために家を出ていき(こっちはちゃんと親の同意を得ている)、道中で緑宮に出会う。手先が器用で、昔から人間たちが捨てていった機械類を分解して分析して遊んでいたので、機械類は一通り扱える。