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異世界はタバコの煙と共に  作者: 空飛ぶペンギン
第1章 「LUCKY STRIKE」20本入りと共に
9/18

第7話 覇王の息子+αとの闘い

「そうか…………。やはりお前は勇者だったか……」


 衝撃波が過ぎ去り、辺りの煙が晴れ最初と変わらぬ場所に立つ俺を見て、覇王はそうつぶやいた。


「そうみたいだな。これで俺を勇者として認めてくれるな。まあ、これからよろしくな」


 そう言って一応俺は頭を下げる。

 これでこの覇王に認められたはずだ。

 俺は覇王にこの短時間で憧れてしまった。

 そんな男に俺の力が認められた。

 それは異世界でやっと俺の居場所を確立してくれる承認でもあった。


「そうだな。お前は我の『覇壊』を食らっても無傷で耐えた。そんなこと出来る人間はこの世界にはいないだろう。そうだなこちらからも、改めて言おう。異世界に生まれて、この世界に来た勇者サトシ。お前は我の国シンロード王国しいては、人界の希望だ。頼む、これから我と手を組み魔王サタンを倒そうぞ」

「何度でも言ってやる。俺が助ける。俺が倒してやる」


 俺と覇王は顔を見合わせて笑った。






「俺は反対だな。とうとう盲目したか、親父よ。確かにこいつは親父の『覇壊』を受けたが、それだけで勇者として認めていいのか。勇者に必要なのは強さではないか。何物にも負けない強さが」


 そう言いながら、一人これまた大柄で、覇王と同じ雰囲気を纏っている黒髪の男が広間のど真ん中で笑い合っている俺と覇王の目の前に現れた。


「こいつに強さは備わっているのか。見た目からナヨナヨしているではないか。身長もデカくなければ、体つきも貧相だ。そんな奴本当に強いのか。本当に勇者なのか。おい」


 その男はそのまま、俺のことを罵倒し続ける。

 確かに俺は向こうの世界では特に運動していたわけでもないし、まだ魔法も使えないからまだ強くないだろう。

 でも俺には、このタバコがある。

 これさえあれば、人界最強の男である、覇王の攻撃すら防げるのだ。

 これで勇者として十分ではないか。


 その男は俺を見つめ、一つ言った。


「俺と勝負しろ、勇者。この次期覇王であるアレフ=ゼロ=プライムがお前の力見極めてやる。俺たちがついていくに相応しいか、見極めるぞ」


 俺はその次期覇王を名乗った男にあっけにとられる。

 横でニヤニヤしていた覇王は、また笑いながら


「いいだろう。面白い。己がついていくに値する人間かどうか。己が見極める。これは美しい。いいぞ息子よ。やってみろ」


 俺の知らない所でどんどん話が膨らんでいく。

 この王にしてこの息子在りなのかもしれない。


「覇王様、アレフ様、私もよろしいでしょうか。彼は勇者です。二人掛かりでも良いですよね」


 先から俺を殺意の籠った目で見つめていた、三又の槍遣いのおっさんも参戦してくる。


「良いぞ。騎士団長。お前も参加しろ。おい勇者、人界の中でもこの二人は上位の存在だ。舐めてかかると死ぬぞ」


 俺はその覇王の言葉と共に、ついたままのタバコをゆっくりと吸う。

 煙はやはりため息と一緒に空へ上がった。


「わかったよ。でも俺には武器がない。なにか勇者用の武器をくれはしないかな」


 ダメ元で覇王に問う。

 相手の攻撃はタバコを吸っている間は食らわないのは分かったが、他の能力がどうなっているのかは分からない。しかも俺の愛用している「LUCKY STRIKE」はタバコの中でも、すぐに終わってしまう部類である。

 この状態で早く、勝負を決めてしまいたい。

 タバコをどんどん吸い続けないと異世界チート能力は持続しないだろうし、ここで大量のタバコを消費するのは痛すぎる。

 持ってきているタバコには限りがあるんだから、ちゃっちゃと済ませたい。

 人界上位と言ったが、人界最強の男の攻撃は無効化したしなにか武器さえあれば大丈夫なはずだ。


「そうだな。でもお前は見るからに弱そうだし、筋肉も足りない。武器を持ったとしてそれを使いこなすことは出来ないだろう……。お前魔法は使えるのか? 先に火を出しているように見えたが」

「いや今は魔法は使えない。あの火はまた後で説明する。ちょっと時間がないんだ。俺は力もあまりないから、出来れば軽い武器が欲しいんだが」


 多分だがこのタバコを吸っている間なら、どんな大きな武器でも操ることが出来るだろう。

 でもその武器を持ってこれから旅をしないとなるなら、それは無理だろう。

 俺は現代人のただの高校生なのだ。

 そんな重い物を持って移動は出来ない。

 急かすように軽い武器を欲しがる俺を楽しそうに見た覇王は手をポンと鳴らし、大声で命令を飛ばす。


「賢者。確か宝物庫にあの剣があっただろう。軽いと言ったらあの剣だ。あの妖刀『恒河沙ごうがしゃ』を持ってこい」

「えっ、でも覇王様あの剣は……」

「こいつは勇者だ。あのぐらい大丈夫だろう。しかもあれは確か悪魔の加護だ。神の加護がついているこいつには意味がないだろう」


 ちょっとばかし不穏な内容が聞こえたが大丈夫だろう。


 正直俺はこの覇王の人間性に惚れていた。こんな大人を今まで見たこともなかったので、俺もこの場の人間とあまり変わらず、この覇王と言う男を盲信していた。それが今後……


 賢者と呼ばれた俺と同じ「眼」をした金髪巨乳美女がなにか唱える。

 すると空中に光る小さい円が生まれた。

 その光る円の中に手を入れ賢者は、なにかを探しているような顔をする。

 すぐにお目当ての物を見つけられたのか、手をその穴から引き抜く。

 手が抜かれるが、その手の先にはなにも持っていない。俺があれッと思ったのも束の間、急に宙が光る。

 そしてその光が収まると、真っ黒な闇に包まれた、真っ黒に色塗られたかたなが浮かんでいた。


「おおそうだ。それだそれだ。おい勇者その剣をお前にやろう。それは昔から我の一族に伝わる妖刀『恒河沙』だ。質量は全くなく。その手に持った者の強さに応じて切れ味も変化する。悪魔の加護が掛かっており誰も使いたがらなかったんだ。…………丁度良い処分になる」


 おい、最後聞こえてるぞ。

 この王め。

 でも本当に丁度いいだろう。悪魔の加護なんて知ったことない。俺には神の加護がついているんだ。しかもこのタバコという、チート能力を与えてくれる最強の物もある。

 質量が全くないのもこれからの使い勝手もいいだろう。

 そして何としてもそのフォルムだ。俺の知っている日本刀と一緒だし、真っ黒。少し厨二感を擽る見た目をしている。これを貰わない手はないだろう。妖刀『恒河沙』は賢者によって取り出されたまま宙に浮いている。賢者が俺を指さすと、その『恒河沙』はフラフラと宙を泳ぎ俺に向かってくる。


 そして、俺の目の前で止まる。


 俺は躊躇なく、その『恒河沙』と呼ばれる妖刀を右手で手に取った。

 するとその妖刀を包んでいる真っ黒な闇が、俺の右手に伸びてくる。怖くなってかたなから手を離そうとするが、何故か離れない。その闇が俺の右手一面を包む。

 そして闇は全て俺の右手に吸収される。

 終わった後には、右手に真っ黒な妖刀を装備しているだけだった。


 その後辺りに、どよめきが流れる。

 これはヤバかったことなのか。正直全く分からないが、特に体に問題はない。

 悪魔の加護が、神の加護に負けたとかそういうことなんだろう。しかし説明してくれよというような目を覇王に向ける。

 するとその姿を見た、覇王と覇王の息子と名乗った男は二人して豪快に笑う。これを見て、ああこの二人は親子なんだと改めて感じる。


「親父。あれ一族に伝わる剣じゃなかったのか。いいのかあいつにあげちまっても。あの剣を」


 息子は笑いながら覇王に問う、息子に笑いながら覇王は答える。


「いいんだ。あれを使える人間はいない。俺ですらあれは使いたくないからな。でもこいつは勇者だ。さあ勝負の時間だ、息子よ。敵は悪魔の加護持ちの妖刀を装備した、神の加護を持つ勇者。肩書としては神話クラスだぞ」


 その覇王の言葉に、ニヤッと心底楽しそうに笑う。


「相手が強ければ、強いほど燃える。それが俺たち一族だろ。親父よ。ではこちらから行くぞ勇者。アレフ=ゼロ=プライムの名において、お前と力勝負だ」


 そう言いながら、アレフは背中に背負っていた剣を抜く。俺の疑問に答えるつもりはこの親子には内容だ。背から抜いた、幅広で厚みのあるその剣を俺に向かって振り下ろす。


「覇壊」


 親父ほどの力はないにしろ、俺に衝撃波がぶち当たる。

 タバコは半分ほどになっているがまだ残っている。


 俺はタバコを口に当て一息する。


「私を忘れないでもらいたいな。若造。君は勇者には、まだ早い」


 突然そんな声が耳元で聞こえる。

 そちらに振り向いた瞬間、顔面に衝撃が来る。薄目で見た先には、おっさんが槍を俺の顔に向かって降りぬいたところだった。

 その衝撃で、俺は数回転しながら後ろに転がり、壁に激突して止まる。


 全く痛くない。あれだけの攻撃をくらったのに、しかも最後のおっさんの槍は顔に直撃した。槍の先が刺さらないようにと叩くように攻撃されたが、痛くもないし顔に傷もない。ちなみに咥えていたタバコも無傷である。

 時間とともに刻々と短くなっていくが…


 でも急な衝撃で吹っ飛ぶことはあるみたいだ。しっかりと踏ん張る必要はあるみたいだな。


 それにしてもあの二人、俺の体に無効化が掛かっていなかったら確実に死んでいた攻撃を打ってきた。恐怖は勿論ある。しかし、やられっぱなしも癪だ。このタバコがある間俺は無敵なのだ。


 体が吹き飛ばされても俺の右手にきちんと収まっているこの『恒河沙』を少し不気味に思いながら、俺は立ち上がり右手に力を籠める。すると俺の右手と『恒河沙』が反応したのか、黒い闇が両方から溢れ出る。

 

 その姿を見て、二人が構えなおすのが見える。

 俺は右手に力を入れつつ、二人のもとに走り寄ろうと足に力を籠める。




……ここでのちに思ったことがあったのだが、俺はこれまでタバコを吸って攻撃を食らったことがあったが、こちらから攻撃したことはなかった。これがこの世界に来ての初めてのチート付き反撃だ。自分の力なんて全く分かっていなかった。そういうことなんだ。




 力を込めた足を踏み込む。


 走り寄れると思った瞬間俺の体は加速し、俺は体の制御を失う。


 前にいた二人は急加速した俺の体に驚き、その場を離れようとする。






 しかし彼らは逃げなかった。






 そう、彼らの後ろにはこの広間に俺を召喚した魔術師たちや魔導士や賢者、その他多くの人間がいたのだ。勿論彼らの後ろには、聖女セリリリスもいた。


 アレフと騎士団長がその場から避ければその者たちの中に俺が突っ込んでしまうのだ。


 彼らはその者たちを守るために壁となり、俺と直撃した。


感想、ブクマお待ちしています!

この三連休も毎日投稿は続けますのでお楽しみください!

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