国語の場合!
「今日は作文を書いてもらいます!」
教壇の上に立ったリンダが国語の授業を担当する。国語の授業は文字の読み書きやディベート、作文等を習う。今日は作文をやるらしい。
「お題はなんですかー?」
「そうですね。私について書きましょう!」
「院長先生?」
「そうです。なんでも良いですよ。できれば褒めてくれたら嬉しいですね。」
何を言ってんだか…。子供達は褒めようとしてるらしいが、俺はダメだしをしてやろう。
「それじゃあ、始めてください。黒板が足りなかったら貸し出しもしますからね。」
「「「「「はーい!」」」」」
さて、どうやってダメだししてやろうか。5歳児にマッサージを頼むこととか?いや、これは周りの子供達に聞かせられない。かなりの甘えん坊とか?
うーん。うーん。うーん。
◆
「それじゃあ発表してもらいましょう!」
時間のようだ。
「フィルアちゃんからどうぞ!」
「はい!」
◇
ー私の先生ー
私は魔国の小さな孤児院に住んでいます。
お母さんとお父さんはいません。
でも、私には院長先生がいます。
ご飯が美味しくて、魔法もキレイで、とても美人です。
私の憧れです。
そんな院長先生は最近ツカサと仲が良いです。
よく2人でこそこそ喋ってるし、夜も2人でこそこそ何かしてるし。
羨ましいです。
ツカサと仲良くしてるのが。
院長先生ばっかりずるいです。
私だってツカサと仲良く遊びたいし一緒に寝たいです。
院長先生はいつかツカサが言っていたようにショタコンなんですか?
違かったらツカサを私にください。
フィルア
◇
え、なにこれ。リンダの顔もひきつってるぞ。というか褒めるって話じゃなかったのか?
「ふぃ、フィルアちゃん…。ツカサくんはあげませんよ!」
ええええええええええええええええええ!!
そっち!?自分のことが褒められてないことを気にしてよ!それと5歳児と張り合うなよ。
てかここでモテ期到来!?
突っ込みどころが多すぎる。
「ちょうだい!」
「ダメです!」
「ちょうだい!」
「ダメです!」
周りの子供たちはポカーンとした顔で75歳と5歳の攻防をながめている。
仕方ない。ここは男の甲斐性を見せるか。そもそもここ異世界だったしな。
「リンダもフィルアも嫁にもらうから俺のために争うのはやめてくれ!」
ふ、決まった。まるで主人公。
「何言ってるんですか、ツカサくん。」
「何言ってるの、ツカサ。」
冷えた目で2人にみられる。
あれー、何この状況。ここは2人して頬が赤くなるところでしょ。どうしてそんな目で見てくるの?
「フィルアちゃん、この話はあとでね。」
「うん。」
「じゃあ、次は…。」
他の子供達がリンダに呼ばれて読んでいく。
だが、子供達は褒めるのではなくフィルアと同じ様な懇願書ばかりだった。
「朝が早い。」
「もっと起きていたい。」
「トイレが寒い。」
トイレが寒いのは同意する。
「うぅ、褒めてくれないぃぃ。」
リンダが涙目になっている。
「じゃあ、最後はツカサくん。」
えっ、俺がとり!?すごく嫌なんだけど。
「ツカサくん?」
「は、はい。読みます。」
心底嫌そうにのっそりと立ち上がり、読み始める。
◇
ー感謝を伝える人ー
俺は孤児院の前にいた。
そこで俺はとても優しくて綺麗な人に拾われた。
運命の出会いだった。
その人は毎日、俺の世話して大切にしてくれた。
暑い日は魔法を使ったり自分の手を使ったりして風を俺に送り、寒い日は同じように魔法を使ったり優しく抱きしめてくれたり。
俺をここまで大切に育ててくれた大切な人。
リンダ。今までありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。
ツカサ
◇
うん。ダメだししようとしたけど完全に感謝状になってしまった。普段世話してくれてることに感謝ができてなかったから良い機会だろう。てか、そろそろ誰か反応して!
「えーと。」
「ツカサくん。」
「はい。」
「……。」
「え、なんですか?」
リンダはうつむき押し黙って何かを考えている。
そして、顔を上げた。
その目には涙がたまっていた。
「ツカサくん。嬉しいです。とっても嬉しいです。ありがとうございます!」
ーギュ
リンダに抱きしめられる。
俺もリンダを抱きしめる。
おませな子供たちはヒューヒュー、とヤジを飛ばしてくるが俺とリンダは気にしないで抱き合う。
だが、それを良しとせず実力行使に出る者もいる。
「は・な・れ・て!」
抱き合ってる体の間に腕が侵入してくる。
フィルアだ。
フィルアは腕だけでなく体も割り込ませてくる。
流石に危ないから俺は離れようとする。
しかし、リンダが離れない。
対抗してさらに強く抱きしめてくる。
「ちょ、苦し…、リンダ、離れて…。」
俺は離れようと体を後ろにそらしていた。
その時、パッとリンダの抱擁が解かれた。
「そろそろ大人気ないですね。」
やっと、気づいたか!俺のあんな短文で感動して我を失うなよ!あっ!
「きゃ!」
「危ない!」
リンダが突然抱擁を解いたために身体を割り込ませていたフィルアがバランスを崩して俺の方に倒れこんでくる。
慌てて俺はフィルアを抱きとめる。
そして、そのまま倒れる。
ードンッ!
「いたたた。フィルア大丈夫か?」
「ツカサ…、大丈夫。」
どうやらダメージを負ったのは俺だけの様だ。
「ツカサくん、フィルアちゃん大丈夫!?」
リンダが血相変えて近寄ってくる。
おい、リンダのせいだからな。そんな顔するなら最初から5歳児と対抗するなよ。
「大丈夫。でも、ツカサが…。」
「俺も大丈夫だよ。ちょっとうっただけだからすぐ治るよ。」
本当に?と聞いてくるが大丈夫だと言い張る。
本当に大丈夫だから。
一悶着あったが、みんなでリンダに感謝を伝えてこの日の授業を終わった。
また、泣いていたが今度は抱きしめるという失敗はしなかった。
◆
その夜、フィルアとリンダはリンダの部屋にいた。
約束通りツカサについての案件を話すためだ。
「ツカサを私にちょうだい!」
「それはダメです!というか、フィルアちゃんそんなにツカサくんのこと好きでしたっけ?」
「それは…。」
フィルアはツカサとのお出かけをリンダに話す。
「それで…。でも、私もツカサくんのことが好きですよ?」
「わかってる。今日は私も好きだって言いたかっただけなの。」
「そうですか…。ツカサくんには言わないのですか?」
「恥ずかしい…。」
「えっ?さっきみんなの前で言ってましたよね?」
「あれは焦りからで…、今思い出すととても恥ずかしい…。」
「でも、ちゃんと言わないとツカサくんわかってくれないませんよ。さっきの告白も幼馴染が可愛いこと言ってるなぁ、としか思ってませんよ。」
「そんな…。うぅ。わかった!頑張ってみる!」
「応援してますよ。成功したら1番の取り合いですね。」
「負けないから!」
ツカサがいない女2人のささやかな戦いが始まった。
日常編がなかなか終わらない!
さっさと終わらせたい。