フィルアとお出かけ!
なんとか書き終わった。
ここ魔国で転生してから今までこの国をしっかりと観て回ったことはなかった。
そして学校をやり始めてだいぶ経ったときにボーナスとしてリンダからお給金をもらった。
そのお金で魔国を観光しようと休日の今日の計画を立てていた。
「ツカサ、どこか行くの?」
黒板に書いていた今日の観光の計画表を見てフィルアが尋ねてくる。
「今日は魔国を観光しようと思ってるんだ。」
「えっ!私もついていきたい!」
「フィルアも?別にいいけど。」
「本当!?やったー!」
お給金は結構もらったので1人ぐらい増えてもなんの問題もない。
「もうそろそろ出るから準備してきて、フィルア。」
「はーい!」
リンダにフィルアと出かけてくることを伝えて外に出る。
首都『スラガ』は相変わらずさびれた印象を与えてくる。
全体的に活気がないのが理由の一つなのだろう。
「フィルア、手繋ごうか。」
「うん!」
フィルアと手を繋ぎ魔国を観光する。
「ツカサどこに行こうとしてるの?」
「魔法道具の店があるって聞いたから最初はそこに行こうか。」
その店はスラガの中央にあるようで孤児院からは少し遠い。
「フィルア疲れてないか?」
「大丈夫だよ。【身体強化】も使ってるから。」
「おぅ、そうか。」
マジなんで俺には魔法がないんだよ。ズルいよ、身体強化。俺だって魔法使いたい。あぁ、早く神殿いかなきゃ。てか、そもそもステータスでないのがおかしい。この世界ちゃんと仕事しろよ!
「ツカサどうして泣いてるの?」
「これは砂が目に入っただけだよ。」
転生してからよく泣くようになったな、と思いつつ目的の店に到着した。
外から見るとこじんまりしている。
中に入っても外から見た通りのまんまだった。
「私、初めて来た。」
「将来はよく来ることになるかもな。」
店内は重そうな大剣や鎧、杖などの装備を身に着けた、いかにも冒険者というような人達がいた。
「初めて見たけどやっぱりいるんだな、冒険者。」
「ツカサ冒険者になりたい?」
「昔は思ってたけど、今はみんなに勉強を教えてる方が楽しいから今はなりたいとは思わないよ。」
もっとも、ステータスが俺にしっかり備わっていたら冒険者になりたいと今でも思っていたかもしれないが。
「フィルアは冒険者になりたいか?」
「私はツカサと同じ先生になりたい!」
「おお、それは頼もしいな!ぜひともなってくれ!」
「うん!」
フィルアの夢をききだしたところで、店内の散策を始める。
さすが魔法がある世界だ、と思わせるポーションの類や状態異常を回復させる回復薬、ステータスを一時的に上昇させる薬などがある。
「このポーションどんな味がするんだろ…。」
「さっきの人がまずいって話してたのが聞こえたよ。」
「まずいのか…。でも、気になるな。」
「ツカサが作ってみれば?」
「……。いいか、フィルア。昔、馬の顔の男がポーションを作ってみた、で死にそうになったんだ。だから、素人には絶対そんなこと言っちゃダメだぞ。本当に作っちゃうやつだっているかもしれないんだから。わかったか?」
俺は若干怖い顔になりながらフィルアに言う。
「う、うん、わかった。ごめんなさい。」
「わかってくれれば良いよ。」
ポンポンと頭を撫でてやる。
落ち込んだフィルアはすぐに元気を取り戻す。
「じゃあ、1本ポーションを買って帰ろうか。」
「うん!」
ポーションを1本買ったがまだまだお給金はある。
店から出た俺たちは次の目的地にむかう。
「次はどこ行くの?」
「武器と防具が売ってるお店に行くよ。」
「どこにあるの?」
「確か魔法道具の店のすぐ近くって聞いたけど。」
「あっ!あれ!」
「おぉ!あの店だ!」
見つけた店はなかなかに広い建物で中を覗くと金属でできた重厚そうな物がいくつも並んでいる。
「なんだか緊張するけど行くか。」
「うん!」
お店の中に入る。
すると、さっそく店の店員に絡まれる事態が発生したが見て回るだけだと言うとおとなしく引き下がった。
「怖かったぁ。」
フィルアが俺の腕にしがみつき半泣きしている。
「確かに怖かったな。さすが、武器屋って感じだな。」
「ツカサ、ギュッてして!」
「ここで?」
「うん。」
「まぁ、良いけど。」
ーギュ
ーナデナデ
ハグをすると同時に頭も撫でる。
「ふにゅ。」
変な声が出たフィルアを見て、頭を撫でるその手をツノに触れさせ丁寧に撫でる。
「きゃっ!」
驚いたフィルアが飛び退き距離を取る。
「ツカサ!ダメ!」
魔族のツノは性感帯である。
「フィルアごめん。ちょっと調子に乗った。」
デリケートな部分に触れたことを素直に謝罪し頭を下げる。
それを見たフィルアは顔を赤くしたまま近づいてくる。
「他の女の子にしちゃダメだからね!」
一瞬、リンダが思い浮かんだがあれは『女の子』ではないとすぐに判断し、思い浮かんだ者は消え去る。
「わかった。他の女の子にはしない。」
ん?他の女の子?フィルアには良いのか?
「じゃあ、お店の中回ろ!」
「お、おぅ。」
再びフィルアと手を繋ぎ店の中を見て回る。
店の中はもちろん武器と防具が売っていて、特にランランできそうな大剣がとても目立っていた。
刀も売ってないか見てみるが流石に売っていなかった。
将来自作しようと密かに誓う。
異世界に刀は浪漫だ。
「フィルア、なんか気になるものとかあったか?」
「ないよー。武器とか防具とかわからないよ。」
「まっ、普通はそうだな。」
この店では何かを買うことはなく早い時間で外に出る。
「やっぱりお店の人怖かった!」
「あんまり大きな声で言うなよ。でも、怖かったな。」
「うん。次はどこに行くの?」
「魔王城を見に行こうか。」
「魔王城?魔王様は今はいないよ?」
現在、魔王は勇者に討伐されて、未だ新たな魔王は出現していない。よって今の魔国は無政府組織のようになってるのが現状だ。
「別に魔王様に会いに来たわけじゃないよ。お城が見たかっただけ。」
魔王城は首都スラガの北の端にある。
どうしてこんな変な場所にあるのだろうか。
「うわー!大きい!」
「これはすごいな。」
100mぐらいある巨大な城が姿を現わす。
某、ネズミの遊園地のお城は約50mだ。
さすが、国のトップが住まうところは格が違うようだ。
「ここに住んだらお掃除が大変だね!」
「それはメイドさん達がやるんだよ。」
「でも、大変だよ!」
「そうだな、それでも大変だろうな。」
2人で口を開けたまましばらくお城を眺める。
「ツカサ、もうそろそろ夕方になるよ?」
「そうだな。じゃあ、最後に孤児院の裏にある丘に行こうか。」
「丘に?なんで?」
「まぁ、着いてからのお楽しみ。」
フィルアの手を取り孤児院の方に歩いていく。
日が傾くにつれて少し気温が下がる。
すると、フィルアがくっついてくる。
「えへへへ。」
可愛い笑顔で身を寄せてくるフィルアはまるで天使の様だ。
俺は思わずフィルアの肩に手を回す。
「つ、ツカサ…!」
「ほら、こっちの方が暖かいだろ。」
「うん!」
スラガの街並みを眺めながら2人寄り添って歩いていく。
孤児院の裏から森に入り丘に登る時は足がつっかえると危ないので手を離し歩いていく。
にも関わらず途中でフィルアは木の根っこにつまずいて足を擦りむいていた。
「ツカサ痛いよ…。」
背中におぶられたフィルアが泣きべそをかいている。
「じゃあ、帰ろうか。」
「待って!丘の上にいこう!」
「えっ、でも怪我してるだろ?」
「一緒にいこっ?ダメ?」
フィルアは痛みに涙目になりながらも丘の上に行くことを訴える。
「ツカサ…。」
「……。わかった。一緒にいこう。」
「本当!?」
「本当だ。」
「やったー!」
痛みを忘れて途端に笑顔になるフィルア。
「それじゃあ、ちょっと走りながら行くからな。舌噛まない様に口閉じてろよ。」
「んんんん!」
「可愛いなぁ。じゃあ、行くぞ。」
「んー!」
丘へは1回行ったことがあるからスムーズに移動ができた。
そして丘に到着する。
「わぁー!綺麗…。」
「本当に綺麗だな。」
俺とフィルアが見たのは夕日が沈みはじめて赤く照らされる魔国の街だった。
「ツカサここに連れてきてくれてありがとう!」
「俺もフィルアと一緒に見れて嬉しいよ。ありがとう。」
お城も上から下まで綺麗な夕日に照らされて赤く輝いている。
「ツカサ大好き!」
「俺もフィルアのこと好きだよ。」
本日はこれまで。
そして、どうしよう…
ストックがもうないぃぃ