エルフの国を目指して(2)
隔日更新……。
書いてしまったものはしょうがないよ、ねっ!
リンダに挨拶をした俺はエルシアを起こすためにテントに近づくと、テントが開き中からエルシアが出てくる。
「おはようございます、ご主人様。」
出てきたエルシアはパジャマではなく軽装備に身を包んでいた。
「あぁ、おはよう。ちゃんと寝ただろうな?」
「はい。」
「なら、さっさと朝食を食べてエルフの国に行くぞ。」
2人で3日分しかない食料でエルシアに料理をさせ、簡単に朝食は済ませる。
そして、テントと寝袋など物々をマジックポーチにしまいエルシアに渡す。
「さて、行く前にエルシア。」
「はい。」
「俺にも何が食べられる物なのか教えろ。このままじゃ食料が底を尽きる。食料集めは私の仕事です、とか、申し訳ありません、とかはいらないから教えろ。」
「……はい。」
エルシアの言いそうなことをあらかじめ封じて、食べられる植物を教えてもらう。
「……です。」
「わかった。じゃあ、エルフの国に案内しろ。」
「わかりました。」
エルシアは右側に生えている植物をとり、俺は左側に生えている植物をとって効率化を図る。
ーブチ ーブチ ーブシュ ーブチ ーブチ ーブシュ、
と、植物を摘み取る音と魔物の首を切り取る音が交互に森の中を響かせる。
「なぁ、エルシア。食べられる魔物って何がいるんだ?」
「この森ならおそらくゴブリンやオークです。」
「それって、二足歩行するやつら?」
「そうです。」
エルシアが説明する。
ゴブリンは二足歩行する体色が緑色の魔物で、好んで食べることはしないが冬の食料不足時に重宝するらしい。
オークも同じく二足歩行する豚ヅラをした魔物だが、ゴブリンと違いその肉はものすごく美味しいらしい。
「しかし…。」
エルシアが逆説のあとに続ける。
オークは性欲が強く、様々な種族の女性を襲い、子孫を反映させていくという。
まんま、ファンタジーだな。
けど、そんなことより…。
「肉が食えるといいな…。」
食料が切れた後にベジタリアンな生活になってしまうのは勘弁してほしい。
「肉…。」
エルシアも肉が食べたいのだろうか。
植物を摘み取っていた手を止め何かを考えている。
「エルシア、手が止まってる。」
「っ、申し訳ありません。」
再び、ブチとブシュと千切れるBGMを流しながら森を歩いていく。
この間、エルシアとは会話などなくただ淡々とやるべきことをこなしていく。
夜になればまた同じように交代で見張りをして時を過ごしていく。
次の日も同じように過ごして夜になる。
「これでちゃんとした食料は最後だ。しっかり料理しろ。」
「わかりました。」
3日分あった食料はついに底を尽き、エルシアに渡したものが最後のものだった。
そして、残念なことに明日からは雑草生活が始まってしまう。
そう、肉は未だ獲得できてはいない。
スライムやウォルフなどは数多く出てくるのだが、ゴブリンやオークは全く出てこないのだ。
「いただきます。」
エルシアの準備した料理が目の前にあり、それを口に含む。
ものすごく美味しい。
エルシアは料理が得意なようでこの3日の料理は味も食感も見た目も文句の付けようがないほど素晴らしい。
「美味しいな…。」
「ありがとうございます。」
思わず口から出てしまった言葉はエルシアに聞こえたらしく、少し嬉しそうにそう言う。
俺はまたエルシアに表情が戻ってきているように思える。
しかし、それが良いことだとは特には思わない。
エルフの国に案内してもらえればそれで良いのだから。
美味しかった料理も食べ終わりまた俺は湯浴みをするためにエルシアに目隠しをする。
「あ…。」
エルシアは目隠しをする度に綺麗な声を出す。
いちいち声を出すのはなぜだろうか。
そんな疑問を一瞬だけ抱き、湯浴みをしたら俺はさっさと寝る。
「同じように5時間後に起こせよ。」
「わかりました。」
テントの中に入る。
《圧倒的に食料が足りないですね。》
レベルが高く感じる魔物との戦いと無心の植物摘みで散策中には出てこなくなったリンダが姿を見せる。
「そうなんだよ。けど、食料集めでエルフの国に行くのを遅らせたくはないよ。」
《えぇ、オークの肉食べたくないんですか?》
「そりゃ食べてみたいよ。だけど、物事には優先順位があるんだよ。エルフの国に行くっていう。」
《でも、ちゃんとお肉も食べないとダメですよ。》
「エルフの国でも食べられるだろ。」
《それはそうですけど。》
「じゃあ、俺は寝るよ。おやすみ、リンダ。」
《しょうがないですね。おやすみなさい、ツカサくん。》
その後、時間通りにエルシアに起こされ、エルシアに湯浴みの準備をして寝かせる。
その時に毎回感謝されるがその表情は初日の野宿から大分柔らかくなっているような気がする。
でも、そんなことは本当にどうでも良い。
早くエルフの国に着きたい。
そして、4日目。
魔物のバリエーションがスライムとウォルフの他に大きなムカデみたいなものも参戦する。
「あれ、何?」
「あれはキチキチと言って大きなアゴを使って攻撃してきます。」
「じゃあ、アゴさえ気をつければ良いわけだな?」
「そうです。」
エルシアの説明通りアゴは注意しながら接近する。
シャー、とこちらを威嚇するキチキチ。
俺は今回は刀を使わず魔法で仕留めることにする。
ちょうど隣には大きな池があり、そこから雷魔法を使い電気分解をし、水素を集め圧縮する。
その際、ごっそり魔力を持っていかれるが気にせずさらに圧縮する。
そして、圧縮した水素の塊をキチキチにあて、着火させる。
「【エクスプロージョン】」
ードガンッ!
「【ウォーターウォール】」
某アニメの女の子みたいには叫ばず、淡々とこなし、かなりの衝撃波が襲いかかってくるのがわかっていたので冷静に水の壁を俺とエルシアの周りに張る。
「すげぇ、粉々だ。」
水の壁を解除すると周りの木々はキチキチの中心に外側に傾き、そのキチキチは足だけを残して吹き飛んでいた。
「さてと、魔力がどれくらい減ったか…。【ステータス】」
ツカサ 13歳 男 レベル:40
種族:魔族(魔王)
筋力:800
体力:800
耐性:800
敏捷:800
魔力:300(800)
魔耐:800
技能:限界突破・経験値取得倍加・全属性魔法・全属性耐性・魔力自動回復・複合魔法・対勇者・痛分・覇気・刀術・身体強化・虚偽察知
「さすがに水素だけを集めて圧縮は無理があるか。何か、補助器具があれば楽になりそうだけど。」
《ツカサくんはすごいですね。》
「知識があればできることだよ。」
俺ができるということはシンジも使えるはずだ。
こんなことで褒められる理由はない。
後ろにいたエルシアが近づいてくる。
エルシアからは命令で褒めるのをやめさせているから何も言ってこない。
しかし、無表情の中でも驚いているのがわかる。
そんなキチキチを討伐して進んでいくと夜になる。
今日から野菜生活が始める。
「じゃあ、料理しろ。」
「 はい。」
マジックポーチから赤黄緑の他に紫、黒の葉や茎、根、そして果実が出てきてエルシアは料理を開始する。
そして、出来上がったのはシンプルな野菜炒め。
「いただきます。」
色とりどりの野菜を口にする。
すると、口の中に野菜の香ばしい香りが広がり美味しいと感じる脳が喜びに打ち震える。
堪能しながら食べるていると隣のエルシアから声がかかる。
「あの、ご主人様。ご主人様がいつもおっしゃってる、いただきます、と、ごちそうさま、とはどのような意味なのでしょう?」
異世界あるあるの食事の挨拶問題をエルシアから質問される。
俺は俺なりの意味を料理を食べながら答える。
「意味か。俺はこの料理の材料を作ってくれた人と、この料理を作った人に対する感謝の意味だと思ってる。」
「感謝…、ですか。」
おそらく、ありがとうございます、という言葉がエルシアから言われるだろうと思って、少し面倒くさいなと思っていると、エルシアは違うことを口にする。
「…いただきます。」
エルシアも俺の言葉を真似てその言葉を言ってから料理を食べ始めたのだ。
命令したわけではないのに言ったその言葉には俺と違い重みというのが感じられた。
「「ごちそうさまでした。」」
そして、夕飯を同時に食べ終わり俺は湯浴みをするためにエルシアに目隠しをする。
その時、いつもなら、あ…、と言っていたのだが今日は違った。
「ん…。」
相変わらず綺麗な声が出るも、あ…、から、ん…、に変わった理由はよくわからない。
別に知りたいわけでもないので、そのまま放置し準備を済ませ寝る。
そしてまた5時間後に起こされ一日が始まる。
そんな5日目の朝食に事件は起こった。
「エルシア、ちゃんと食べられるものを使ったんだよな?」
「申し訳ありません。」
「俺の質問に答えろ!」
俺は全身の痒みと腹痛と吐き気で声を荒らげてしまう。
「もちろん食すことが可能なものを使いました。」
「そうか…。」
今日の朝食は生野菜だった。
俺は生野菜が嫌いではなく、むしろ大好物だった。
それをぼやいた俺の言葉に従ってエルシアは生野菜を使った料理をした。
だが、初めて生で食べるものばかりだったので俺は食あたりを起こしてしまったのだ。
「エルシア、これは食あたりだ。だから、お前が悪いわけじゃない。」
「治癒魔法をかけます。」
「食あたりの仕組みなんてわからないんだから、そんなことはしなくていい。」
治癒魔法は外傷にはかなりの効き目があるが、食あたりのようなものには仕組みがわからないと効果が薄いのだ。
「一時間横になれば治る。その間、エルシアは食料を集めてこい。」
「…わかりました。」
「腕時計を持たせる。一時間で戻ってこいよ。」
俺はエルシアを送り出し、テントの中に入り横になる。
眠ったりはしないので見張りがいなくても大丈夫だ。
時間も腕時計がないと正確には計れないが、腕時計がない生活の方が多かったため太陽の位置を見ればだいたいの時間はわかる。
《ツカサくん大丈夫ですか?》
「一回経験してるから大丈夫だよ。それよりも早くエルフの国に行きたいのに…。」
《さすがにそのままで出発したら逆に時間がかかってしまいますよ。》
「わかってるよ。だから、休んでるんだ。」
リンダと話しながら時間を潰していく。
「もう、一時間過ぎてるよな?」
《そうですね。何かあったのでしょうか?》
「さぁ。もうちょっと待つか。」
エルシアはレベルも高かったのでこの森で魔物に襲われているとは思えず、もう少しすれば帰ってくると思っていた。
だが、エルシアは戻ってこなかった。
感想の方にも書きましたが、強姦はさせません。




