表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/38

エルシアとスニーカー巡り(2)

そろそろ時間的な問題で毎日更新がきつくなってきた。

「ごちそうさまでした。」


 デリシャスフィッシュ10000×2ガロを店主に渡して露店を出る。


「あの人1と7と0をしっかりかけよ。7000だと思ったのに。まぁ、美味しかったから良いけど。」

「申し訳ありません。」


 今日何度目かの謝罪を俺に告げてくる。


「今度はなに?」

「そのような高級な物を食べてしまって。」

「お金のこと?気にしないで良いって。だいたい今日はエルシアにお金を使うんだから。」


 あまりにも美味しかったデリシャスフィッシュのせいで忘れそうになったが、目的はエルシアの身の回りの物を揃えることだ。


「私にお金を使うのですか?」

「そうだけど。着替えとかいらないの?」

「……。」


 俺が質問すると黙ってしまう。

 先ほどからお金のことを気にするあたり気軽に欲しいとは言えないのだろう。

 ご主人様にお金を使わせないと思うのは奴隷としては良いことかもしれないが、欲しい物は欲しいと言ってくれないとかなり困る。


「どうすれば良いと思う、リンダ。」

 《そこで私を頼りますか。命令すれば良いんじゃないんですか?何か欲しいものを言え、って。》

「それで自由とか言われても俺何もできないよ?少なくともエルフの国に行くまでは手放すつもりないし。」

 《それじゃあ、ツカサくんがプレゼントすれば良いんじゃないんですか?エルシアちゃんの心のケアにもなるかもしれませんよ。》

「プレゼントねー。」


 確かに俺からプレゼントとして渡した方が時間もかからないし、エルシアに気を遣われなくて済み、さらに好感度を上げられればあの虚ろな目も消え去るかもしれない。


「リンダありがとう。その手で行く。」

 《どういたしまして。頑張ってください。》


 俺はさっそくプレゼント計画としてエルシアと共に服飾店に行く。

 歯ブラシ、タオルなどは持っているが当然女性の服は持っていない。

 この二日、奴隷処で着ていた服をそのまま着させてしまっている。


「いらっしゃいま…せ…。」


 そこにガチムチの性別不詳の店員さんがいることはなく、普通の人間の女の店員さんが俺たちを出迎えた。

 までは良かったが2人でフードを着てるのが悪かったのか店員がいぶかしむ表情になる。


「こんな姿だが気にしないでくれ。こっちで服は選ぶから。」


 俺はエルシアを連れだって中に入っていく。


 《可愛くしてあげましょう。》

「そうだな。どうせ選ぶなら似合うのを着せるよ。」


 店の中は女性服ばかりで色鮮やかな可愛らしい服からワントーンのゆったりした服、様々な服がある。


「エルシアは銀髪だから…、これとこれだな。あとチョーカーも。ちょっと試着してきてよ。試着したら呼べよ。」


 俺から2着受け取り試着室に消えていく。

 チョーカーを渡したのは奴隷の首輪を隠せるからだ。


 《やっぱりなんだかんだで世話好きですね。》

「そんなことはない。」

 《エルシアちゃんもわかってますよ。》

「それこそ、そんなことはない。」

 《そうでしょうか。》


 わかってるなら良い加減あの目はやめてくれてると思う。


「ご主人様、試着しました。」


 シャッと試着室が開く。

 まずは1着目だ。

 ピンクのズボンとシャツ、いわゆるパジャマを着ている。


 《ピンクが似合いますね。》

「あぁ。似合ってるな。」


 以前からパジャマ女子は可愛いと思っていたがこれは別格だと思う。

 おそらく地球上でこんなに可愛いパジャマ女子はいない。


「エルシア着てどうだ?」

「ご主人様の御眼鏡にかなってなによりです。」

「いや、これは嫌いとか色が違うのがいいとかの感想が欲しいんだけど。」

「不満などありません。」


 いつものように淡々と答える。

 よく似合っているのにその無表情と目で台無しだ。


「そうか。じゃあ、次着て。」

「わかりました。」


 シャッと再び試着室は閉じられ、エルシアは消えていく。


 《可愛かったですね。》

「そうだな。これで感情が出てくればいいんだけどな。」


 そもそも奴隷だからあんな死んだ感じになってるんじゃないか。

 それなら何をやっても意味がない気がする。


「ご主人様、試着しました。」


 二着目、白いワンピースを着たエルシアが出てきた。


 《可愛いですね!》

「おぉ、本当によく似合ってる。」


 白いワンピースにスラッとした腕や足と細身の体が包まれ、まるでお忍びで来ているお嬢様のようだ。


「これはどうだ?」

「ご主人様にほめていただき大変喜ばしいです。」


 じゃあ、もっと喜ぶ表情になってほしい。


「それそのまま着てていいから。俺はお金払ってくる。」

「あの、ご主人様…。」


 エルシアが俺を呼び止める。

 自発的に話をしてくるときは目に光が戻っていることに気付く。

 おしゃべりな女子だったら楽だったかもな、と思いながらエルシアに返事をする。


「なんだ?」

「……。」


 話しかけてきたエルシアは自分が着ている服と俺を交互に見て何かを考えている。


「エルシア?」

「いえ、なんでもありません。」


 だが、いつもの虚ろな目と無表情に戻る。

 先は長そうだと改めて思う。

 占めて20000ガロを店員に払い店を出る。


 《いい買い物でしたね。》

「そうだな。現に昨日より注目を集めてるし。」


 隣にいるエルシアはフードを脱ぎさっき買った白いワンピースを着て俺の少し後ろを歩いている。

 フードを脱がせているのは日の光を浴びせて気分が上がってくれればと思ったからだが、こうも注目されてしまうと逆効果になってしまったことは否めない。


「ねぇ、君。今からちょっと遊びに行かない?」


 イケメンがエルシアに声をかけてくる。

 ナンパだ。

 予測範囲内のことだった。

 俺は少しエルシアの様子をこのまま見ることにする。


 《いじわるですね。》


 リンダから非難が飛んでくるが、俺はこれでエルシアがどんな反応するのか気になるのだ。


「ねぇ、君。きいてる?」

「……。」

「ねぇ?」


 エルシアの肩にイケメンの手が乗るがエルシアは無言を貫いている。

 しかし、手が震えていた。

 白かった顔もさらに白を通り越して青くなっていく。


 《ツカサくんさすがに。》

「わかってる。【覇気】」


【覇気】は相手に恐怖を与えるスキルだ。

 魔王病といわれたこの世界に駆け巡った黒い風は【覇気】によるものだ。

 それをこのイケメンに浴びせる。


「ひっ!」


 情けない悲鳴がイケメンから上がる。

 エルシアはイケメンの突然の悲鳴に驚き目を見開いている。


「お前さァ、俺の連れに手ェださないでくれるかなァ?」


【覇気】の圧力をさらに上げる。


 ーポタポタ


 イケメンの股下に滴が落ちていく。


「わかったァ?」

「はいぃぃ!」


 イケメンは地面にしみを作り悲鳴をあげながら走って逃げて行った。

 それを周りで見ていた人も異常に感づいて一歩引いて俺たちを見ていた。


「エルシア大丈夫か?」

「ご主人様、申し訳ありません。」

「いや、こっちこそごめん。すぐ助けに入ればよかった。」


 今回は完全に俺のミスだ。

 人を試すようなことをした最低のことだったと素直にエルシアに謝る。


「ほら、フード被れ。」

「ありがとうございます。」


 ポーチからマントをだしエルシアにかぶせる。


「じゃ、買い物の続きをするか。」


 俺は歩みを進める。

 エルシアも俺の後ろをついてくる。

 だが、その距離はさっきより近づいているように感じられた。


 この後、エルシアの装備を購入することにした。

 武器/防具屋にいくと魔国のものよりも品ぞろえがよかった。


「エルシアって何が得意?」

「弓が得意です。」

「じゃあ、弓を買うか。」


 店員さんに聞いてオススメの弓を聞いてそれを買う。

 防具も彼女にあう、軽装備のものを一式買う。


 《ところでツカサくん。露店巡りはしないんですか?》

「結構時間がかかっているので無理。」

 《そうですよね。じゃあ、またの機会にお願いしますね。》

「はいよ。じゃあ、エルシア他に欲しいものある?」

「ありません。」


 まぁ、そういうよな。

 だから、俺が買い与えているわけだし。


「じゃあ、時間も時間だし。夜ご飯でも食べますか。で、エルシア何が食べたい?」

「また、私に聞くのですか?」

「何が食べたい?」

「……野菜が。」

「野菜な。」


 俺たちはベジタリアンが通うような野菜料理だけしかない店に来た。

 メニューの一番上に今日の野菜というシンプルな料理があったのでそれを頼む。

 そして、出てきたのは生野菜と温野菜が混在したお皿だった。


「あ、普通においしいなこれ。特にこのよくわからないフルーツがおいしいな。」


 ヘビみたいにグニョグニョ動いているがれっきとした野菜らしい。

 ちょっと引いた。


「おいしい…。」


 デリシャスフィッシュの時のように感情がこもった声が隣からきこえてくる。

 食べるのが好きなのだろうか。

 今度はエルシアより早く食べ終わらないようにペースを合わせて食べていく。


「ごちそうさまでした。」


 隣でエルシアもフォークを置いた。

 食べ終わるといつもの目になる。

 お会計は先に済ませてあるのでそのまま店を出て宿に帰り、同じ部屋に入る。


「エルシア、歯ブラシとタオルを持って。」

「わかりました。」


 エルシアは持って俺の前で待機する。


「いや、隣の部屋に行って。」

「…ご主人様、どういうことですか?」

「朝聞いてなかった?もう一部屋、エルシアの寝る場所をとったんだよ。」


 ーバサ


 エルシアの持っていた歯ブラシとタオルが床に落ちる。


「ご主人様…。」

「今度はなに?」

「私は奴隷ですよ?」

「知ってる。」

「なら、なぜもう一部屋とるのですか。」

「俺がベッドで寝たいから。」

「なら、私を床で寝かせば良いのではないですか。それに椅子に座らせるのもどういうことなんですか。物を与えるのも。一番高い料理を食べさせるのも!」


 エルシアが感情をあらわにし声も大きくなる。

 俺は初めて出た彼女の本音に驚きながらも質問に答える。


「その目をやめてもらうためだよ。」

「目…。」

「そうだよ。なぜそんな虚ろな目をしているんだ。」

「それは…、私が愛玩奴隷になると思っているからです。」

「あ、そんな予定はないから。」


 バッサリ、エルシアの懸念事項を切る。

 それが目的ならさっさとやっている。


「な、ないのですか?」

「ないよ。俺はただ宝玉のことを聞いて、その場所に案内してもらおうとしただけだよ。ちなみに最初はエルフの国に行くから。」

「私の故郷に!」

「だから、今の目でいろ。また、あの目になるのはやめろ。」


 今のエルシアの目には光がうつり、表情が宿っていた。

 その表情は普段の無表情が嘘のように豊かだった。


「わかりました。ご主人様、ありがとうございます。」


 エルシアは頭を下げてお礼を言ってくる。

 その頭を見て、俺は一つあることを言う。


「エルシア、奴隷をやめたいか?」

「いえ、そんなこと。」

「本音を言え。」

「…やめたいです。」

「なら、エルフの国で900万ガロ払え。」


 奴隷の解放条件だ。

 闇奴隷になった子を助けろとリンダが言っていたことを思いだしエルシアにこれを告げたのだ。

 900万ガロは決して無理な話ではない。

 エルフの国で頼れる人がいるなら解放されるかもしれない。


「……わかりました。」


 エルシアからまた表情が消えた。

 無理だと悟ったのかもしれない。

 だが、目は虚ろではなくなっている。

 それに満足した俺は今日はもうさっさと寝ることにする。


「もう荷物持ってむこうで寝ろ。」

「はい。ご主人様、今日はありがとうございました。おやすみなさい。」


 扉が閉じられエルシアがいなくなる。


「あぁ、また湯浴みができなかった。」


 今日もタオルを濡らし体を拭くだけで終わる。


 《最後のあれは意地悪でしたね。》

「別に意地悪じゃないだろ。むしろ交換条件があるだけありがたいだろ。」

 《そうですかね?》

「そうだよ。」


 一生奴隷なんてやつもいるんだからな。


「それより、これでエルシアへの優しいタイムは終了だ。」

 《優しくしないんですか?》

「しないよ。そもそも、優しくしたのはあの目をやめさせるためだろ?やめたならもう優しくするつもりはないし有効活用をする。」

 《確かに、目をなんとかしたいって話しでしたね。けど、ツカサくんは優しくするんでしょ?》

「しないから。」

 《さて、どうでしょうか。》

「……。はぁ、もう寝る。おやすみリンダ。」

 《おやすみなさい。》


 赤いヘアピンを外し、俺は目をつむった。

優しくはしないってことが言いたかっただけです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ