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転生しました!

 そこに、世界が見えた。


 大部分は青い海に満たされ地表は緑に染まっている。

 視線をずらすと砂漠だろうか、茶色い地表も見えた。

 また視線をずらすと緑の中ぽっかりと灰色に染まってる地表も見える。

 都市だろうか。

 あまりにも遠すぎてよく見えない。


 そう思った途端、自由落下を始める。

 約9.8m/s^2の重力加速度に従い速度を上げていく。


 そして、茶色の地表が近くなってきて徐々に動いているものが見えてくる。

 見えたのは、ヨーロッパにあるようなお城とその他のヨーロッパの風情感じる建物、それにツノを生やした人達。


 ここは地球じゃないのか。


 ドンドンドンドン空気抵抗を無視して速度が増していく。


 そして、地面にぶちあたる前に意識が黒に染まった。



 ◆



「んあ。」


 目を開けた。

 空には満点の星空が輝いていた。

 たが、空が物凄く遠くに感じる。


 起き上がろうとした。

 だが、できなかった。

 手足が思うように動かない。


 声を上げようとした。


「おぎゃーおぎゃー。」


 だが、自分じゃない声が自分から出てくる。


「あれ、今泣き声が…。」


 女の人の声が聞こえた近くに建物でもあるのだろうか。

 自分には確認することができない。

 視野も狭まってる気がする。


「あ、こんなところに赤ちゃんが…。」


 そんな声が聞こえると56kgだったはずの俺の体が持ち上げられる。


「わぁ、可愛いですね。これは、本でしょうか。…読めそうもないですね。それよりも、男の子ですか、女の子かですか…。男の子みたいですね。僕ちゃんはどこからきたんでちゅか?」


 俺を持ち上げたのはツノの生えた見た目おっとりしてそうな綺麗な女の人だった。


 女性が俺を見るためにさらに顔を近づける。その女性の目に映っていたのは。


 角の生えた幼い赤児だった。


 これ!俺なのか!?


 どこか他人事のように状況把握をしていたが自分のことをしっかりと確認してしまった今、混乱が極限状態になった。


 ここはどこだ!? なんで角が生えている!? さっきの落下していったときに見えた景色、あれがこの世界なのか!? じゃあ、ここは…。


 異世界なのか?


 突然睡魔に襲われる。

 それもそのはず、女性の目を通して見た俺は赤ん坊だった。

 赤ん坊の仕事はおっぱいを飲んでうんちしておしっこして、そして寝ることだ。


 ダメだ。眠い。


 意識が消えていく。



 ◆



 あの日、綺麗な女性拾われてから5年の歳月がたった。


 どうやら俺は異世界に転生したらしい。

 そして、俺は運良く孤児院の前にいた。

 あの女性はその孤児院の院長だったのだ。

 俺は孤児院の院長に拾われて良かったと思う。

 というのも変な家族の元に転生したら不自由な生活になるかもしれないし、そもそも親は地球にいる母だけで充分だからだ。


 ここでの俺の名前は前世と同じく『ツカサ』。

 あの日、院長に拾われたときに包まれていたタオルに刺繍されていたらしい。

 神様がやってくれたのか、謎だ。


 この世界は共通語と呼ばれ、全種族で言葉が通じる。

 だが、その言葉も文字も日本語とはまるっきり違う。

 しかし、幼い脳みそは優秀ですぐに覚えることができた。

 今じゃ、共通語と日本語のバイリンガルだ。


 で、ここからが面白い。


 なんと俺、魔族に転生しました!


 魔族に転生したからもちろんツノが生えている。

 どんなツノかと言われれば2つのツノを持つサタンタイプの様なツノだ。

 俺はサタンタイプのツノだが、他にも龍のようなツノ、ユニコーンのような一角タイプと魔族の持つツノは様々。

 大体が親の遺伝で決まるらしい。

 俺を生んだ人はサタンタイプだったかもな、と普通は思うが…。


「今の俺の顔、幼い頃の俺の顔なんだよな。なんか時間が戻ったみたい。ツノあるけど。」


 クイクイっとさわると硬い感触。

 触り方を変えてツツツーとすると気持ち良くなる。

 ツノは魔族の性感帯らしい。


「ツカサ!院長先生がご飯だって呼んでいるよ!」

「おう、わかった。」


 同い年の幼女、言い換えれば幼馴染みのフィルアに呼ばれて部屋を移動する。


 フィルアは青髪ロングの元気いっぱい走る年相応の美幼女だ。


 フィルアたん可愛いよフィルアたん可愛いよ。


「どうしたのツカサ?」

「フィルアは可愛いなー。」

「そう? ありがとう!」

「ぐはっ!」


 幼女スマイルおそるべし。

 俺の17+5歳の心に純粋無垢な笑顔が突き刺さる。


 フィルアと戯れながら、この孤児院の中で比較的広い場所、大広間に入ると既に30人の子供達があまり量の多くない夕食を食べていた。


「ツカサくん、遅いですよ。」

「ごめんなさい。院長先生。」

「いいですよ。ちょっと冷めてしまいましたね。【ヒート】。」


 院長の手に魔法陣が描かれる。

【ヒート】は物体を温める魔法だ。


 そう、この世界は魔法が存在している。

 俺も魔法を使おうとした。

 しかし、なにも起こらなかった。

 WEB小説の定番でMP切れで睡眠をしてMPを上げるという修行があるが、俺の場合そのMPを確認するためのステータスが表れない。

「ステータス」と何回叫んでも出てこない。

 元々、ステータスなんかないのか…。

 悩んだ俺はそれを確かめることにする。


「これで温かくなりましたよ。」

「ありがとうございます。あの、院長先生、後でお話があるのでお時間空けておいてもらっていいですか?」

「随分かしこまった言い方をするんですね? 5歳児なのに。」


 うわ、ヤバい。

 5歳児でこのしゃべり方はおかしかったか。

 でもこれからかなり重要なことを相談しようとしているし、このままかしこまったしゃべり方をしよう。


「院長先生、いや、リンダさん。後でよろしくお願いします。」


 深々と子供には似つかわしいお辞儀をする。


「ツ、ツカサくん!?」


 突然名前を呼ばれて驚いたリンダは手に持っていたコップをひっくり返した。


「リンダさん、溢れてますよ。」

「あっ!」


 コップをひっくり返してあたふたしているリンダを見ながら席に座ってスープを口にする。

 量は少ないが味は薄くなくむしろしっかりしている。

 そのおかげでひもじい思いはしていない。


 スープの他にパンがあったが、すぐにたいらげる。

 その後、少し自室でこれからやることに緊張をしながらリンダが一人になる時間を待つ。


「よし、リンダの所に行くか。」


 リンダがいる個室に足を運ぶ。


 ーコンコンコン


「ツカサです。リンダさんはいらっしゃいますか?」

「またリンダって…。いますよ。入ってください。」

「はい。失礼します。」


 入ると相変わらずおっとりした感じの綺麗な巨乳の女性、リンダがいた。

 5年前から全く容姿が変わらないのは魔族だからだ。

 魔族の寿命は約200年らしい。

 ファンタジー世界だ。


「なんか、すごい目で見てきますね。」

「そりゃそうです。いきなり、院長先生院長先生って無邪気だった子がリンダさんって…。」


 普段の俺は5歳児らしく振舞っていた。


「ツカサくん?」

「院長先生はさっきの5歳児じゃない喋り方が気になったんですよね?」

「さっきではなく現在進行形でですよ。」

「その前に絶対に口外しないと約束してください。お願いします。」

「それは約束しますよ。子供の頼みごとを聞き入れるのが親の役目ですから。」

「ありがとうございます。」

「それで、本題はなんですか?」


 リンダが俺の目を見てくる。

 興味深々というか、何か疑うような視線をむけてくる。

 意を決して俺は口を開く。


「実は俺、転生者なんです。」

「…あぁ。そういうことですか。」


 そういうこと、とはどういうことか。

 リンダの表情を見てもあんまり驚いたようには感じられない。

 むしろ何かに納得したような表情だ。


「驚かないんですか?」

「そうですね、普段から5歳児の言動を取らないことがあったので、もしかしたらと思ってましたから。」

「言動…。」

「はい。外に出るときに、ツカサいっきまーす、とか、外から入ろうとしてくる虫に、無駄無駄無駄ぁぁああ!!、とか、走ってるときに、ア○カツア○カツア○カツ、とか数え切れないほどのおかしな言動がありましたから。」

「はっ!」

「ニヤニヤしながら言ってたので正直気味が悪かったですよ。」

「ぐはっ!」


 リンダひどい。もうちょっとオブラートに包んでくれてもよかったんじゃ…。


「で、それを私に伝えてどうしたんですか?」

「聞きたいことがあったんですよ。転生者って魔法が使えないんですか?」

「そんなことありませんよ。過去には何人か転生者がいたことがあるらしいのですが、皆類稀な魔法を使っていた様ですよ。」

「……。俺、魔法使えないんですけど。というか、この世界ステータスってありますか?」

「え?ありますよ。ほら、【ステータス】。」


 リンダの前に青白い四角いものが浮かび上がる。


 リンダ 75歳 女 レベル:85

 種族:魔族

 筋力:255

 体力:850

 耐性:255

 敏捷:425

 魔力:850

 魔耐:850

 技能:闇魔法・治癒魔法・生活魔法・剣術


「ええええ!? ステータスあるじゃん!? じゃあ、俺なんでないの!?」


 俺はあまりの衝撃に絶叫をあげてしまう。

 だが、リンダがさらに衝撃的なことを告げる。


「え?そんなことはあり得ませんよ。生まれたときからありますから。」

「だって、出てきませんよ! 【ステータス】!」


 やはり何も出てこない。何度叫べど出てこない。


「こんなこと聞いたことありません。」

「……神殿に行けば良いんでしょうか?」

「どうでしょう。」


 この世界には炎、水、雷、風、闇、光のそれぞれの神がいて、それぞれの神に神殿が存在している。

 俺の考えはそこで神に認知されればステータスの恩恵を得られるのではないかということだ。

 実際に、神がいればの話だが。


「目下のところは神殿に行くということですね。」

「そうですね。」

「それより、リンダさんは75歳だったんですね。」

「年は見ちゃいけませんよ!」

「おばさん?」

「キーーー! そういうツカサくんこそ何歳だったんですか!?」

「当時は17歳。」

「あ、…。すみません。」

「なんで謝ってるんですか?」

「だって、余りにも早すぎて…。」

「そんなこと。」


 家族のことは心残りだが死んでしまったものはしょうがない、と俺は割り切っている。

 だが、リンダは気にしているようだ。


「じゃあ、この後の子供達へのお話の時間で俺がいた世界と俺のことについて話しますよ。」

「世界…。」

「では、そろそろ湯浴みでも行きます。お話きいていただいてありがとうございました。失礼しました。」


 リンダのいた個室の扉を閉め、湯浴みスペースにむかう。

 他の子達はもう終わってるらしい。


「冷たっ! 魔法を使えたら温かい水作るのに。【ステータス】。」


 何も表れてはこない。


「はぁ。シオリ、母さんは今頃何してんだろうなぁー。」


 久しぶりに家族のことを考えたせいで気になってしまう。


「さて、そろそろお話の時間だよな。」


 湯浴みを終え、体を拭き、着替え大広間に戻ってくる。

 子供達は床に座って今か今かとお話を待っている様だった。

 俺も腰を下ろす。

 隣に風呂上がりの良い匂いのフィルアがいる。


「今日は私ではなくツカサくんが皆のためにお話をしてくれるそうです。ツカサくん来てください。」

「ツカサ、呼ばれて…、どうして私の匂い嗅いでるの?」

「良い匂いだから。」

「良い匂いなの? やったー!」


 幼女素晴らしい。特にフィルアが素晴らしい。俺は今、5歳児だし合法だよね、と考えていると、


「ツカサくん!」

「はい!」


 目の前にリンダがいた。

 物凄い怖い顔してる。

 そのリンダが俺の耳元に口を近づける。


「ツカサくん、女の子に手を出したらどうなるかわかってますよね?」

「ひっ!?」

「早くお話をしてください。」

「わ、わかりました!」


 すぐに了承してしまう。

 だが、このまま負けっぱなしというのも嫌だと感じてしまう。

 前世があんなんだったから若干負けず嫌いになってるというか、リンダにはなんか負けたくない。


「リンダさん、その前に、ちょっと。」

「なんですか?」

「リンダさんには手を出しても良いんですか?」

「5歳児が何を言ってるんですか。」


 やれやれ、みたいな顔をしている。

 それに若干カチンときた俺は耳元に口を寄せ、敬語も使うのをやめ、出来る限り低い声で言う。


「じゃあ、大人になったら手を出すよ、リンダ。」


 耳に歯をたてる。


「ひゃっ!?」


 ほほぉ、どうやらリンダは耳が性感帯らしいな。弱点発見。ふふふ。


「じゃあ、お話してきます。」


 リンダが顔を赤くして睨みつけてくるが無視する。


「お話を始めます。」


 パチパチと皆手を叩いてくれる。


「これは俺が夢で見た話です。」

ステータスについては適宜、編集していきます。

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