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ツカサだけがいない街

サブタイトルは乗っかりました。

 帯刀ツカサが死んで一か月が経っていた。

 ツカサの立ち位置は人殺しと蔑まれる学内カースト最底辺だった。

 だからか、学校内の大多数はツカサが死んだことに対して特に気にすることはなかった。

 しかし、ツカサの所属していたクラスはちょっとした変化があった。


「あれ、人殺しはいねぇの?」

「あいつ死んだんだって。」

「あぁ、そうだったな。」


 このように割とクラスメイトはツカサの死に対して違和感を感じているようだ。

 さて、クラスにはちょっとした変化で収まっていない人達がいた。

 赤沢 レイナ、牧野 アヤカ、ハウズ・柏木・リリナの3人だ。



 ◆



「レイナー。」


 クラスの女子がレイナに話しかける。

 普段のレイナだったら、なになにっ?と食いつきが良い反応をしていた。

 だが、この1ヶ月で変わっていた。


「なに?」


 レイナがクラスメイトに目を向ける。

 だが、その目に普段の明るい光は宿っていない。

 ただ、深い絶望を孕んでいた。


「いや、なんでもないよ。人殺し死んでよかったよね。」


 ーパンッ!


「いったい!レイナ何するの!?」


 ースタスタ


「ちょっとレイナ!」


 クラスメイトを平手打ちしたレイナは教室を出てトイレに入った。

 周りには誰もいない。


「なんで…なんで、こんな気持ちになるのよ!わかんない…わかんない、わかんない!わかんないよぉ!!」


 涙を流してその場に崩れる。


「あいつはどうして私を、私達を助けたのよ。人殺しって広めていじめてたのは私なのに…。なんでツカサが死ぬのよぉ!!」


 涙を流し続ける。


「それにこの涙はなに!?ツカサはお兄ちゃんを殺した。ツカサを憎んで憎悪して死ねば良いって思っていたのに…!私は、私は…、…わからないよぉ、ツカサぁ!!」


 レイナは気付きつつあった。

 自分の失ったものの大きさを。

 今まで捨て続けてきたものを。


「ツカサ…。」



 ◆



 牧野 アヤカも実はツカサを憎んでいた。

 レイナのような直接的な行動はしていなかったが、それでも己の心の中で静かに憎んでいた。

 牧野 アヤカは恋愛的な意味合いでレイナの兄、シンジを好いていた。

 確かにシンジがレイナに対してしたことは下劣で卑劣なことだった。

 それでもシンジが病気であったからシンジの味方につきツカサを憎悪した。

 憎悪していた。


「どうして救ったんだ。私はお前を憎んでいた。あのままお前は私達を見捨てればお前は死ななかったし、1番いじめてる私達を消すことができたんだ。なのに何故救った。

 これじゃあ……憎めないじゃないか。」


 アヤカもまたレイナと同様、混乱していた。


 目に光るものが宿る。


「ツカサ…。」



 ◆



 ここまでは人殺しという言葉で直接結びついてるツカサとレイナとアヤカだったが部外者であるリリナは人殺しという言葉の意味を知るために色々なところから情報を聞いてまわった。


「タテワキさんはレイナちゃんのお兄さんを殺した。原因はわからないけど。」


 情報は秘匿されていた。赤沢財団が権力を使って一切を隠したのだ。


「タテワキさんが人殺し。でも、彼は自分の命と引き換えに私達、私を救った。」


 右手にあるハンカチを見る。


「タテワキさんが悪い人なわけがない。」


 右手のハンカチを胸に寄せる。


「タテワキさん、願わくばもう一度会いたい。」


 赤くなった頰を隠すようにハンカチを顔に寄せてキスした。



 ◆



 1ヶ月経ったクラスの様子を見たがもっと深刻な変化が起こった人がいた。

 帯刀 栞だ。


「兄さん…。」


 シオリはツカサの死をきっかけに引きこもりになっていた。


「兄さんどうして私をおいていったの…?」


 引きこもりになったと言っても自分の部屋にいるわけではない。

 ツカサの部屋に引きこもっていた。

 ツカサの匂いが染み付くツカサの部屋に。


「はぁ、兄さん…。」


 シオリはツカサのベッドに体を沈め、周りはクローゼットから引っ張り出したツカサの衣服で埋め尽くされている。


「兄さん、大好き。大好きだから帰ってきて。私、兄さんがいればなにもいらないから。」


 ツカサの抱き枕を裸になり全身で感じるために強く抱きしめる。


「兄さん…。」


 ートゥルルル


 携帯電話が鳴り始める。

 着信元を見ると、シオリの親友 櫻井 ミカ からだった。

 引きこもって1ヶ月毎日のように電話がかかってくるが取り上げることはなかった。

 だが、1ヶ月経ち電話をとる気力だけは出てきた。


「もしもし。」

「あっ!繋がった!シオリ大丈夫!?」

「ミカ、大丈夫じゃないけど生きてるよ。」

「よかった〜。…お兄さんのこと残念だったね。」

「……。」

「ねぇ、これは友達から聞いたんだけどお兄さんって学校でいじめられてたの?」

「えっ?」

「なんかね、学校で人殺しって言われてたって…。」


 もちろん、妹であるシオリもレイナの兄をツカサが殺したことは知っている。


「どうして…。」

「レイナっていう人が主犯格だって。」


 レイナのことも知っている。

 昔はよく遊んでいた。


「レイナさん…まだ…。でも、だからって兄さんを…!」


 ーギシ


 携帯が軋みをあげる。


「シオリ?」

「ごめん。やることができたから切るね。」

「えっ、ちょっとま」


 ーブチ


 携帯を切ったシオリは急いで身支度を整えて、セーラー服に着替えて家を出る。

 向かうのはツカサが通っている高校。


「君、中学生だよね?」

「今日は学校見学に来ました。」

「おぅ、そうなのか。どうぞ。」


 セーラー服で来たのはこのため。

 警備員をやり過ごしツカサが通っていたクラスに一直線に向かう。

 クラスはツカサの生徒手帳で確認していた。


「ここは連立方程式を解いて…。」


 若い大人の女の声がする。

 どうやらまだ授業をしているようだ。


 ーガラガラ


 授業をしているがおかまいなしに扉を開け、クラスを見回す。


「兄さんをいじめてたクラス…。」


 顔が憎悪に染まる。

 クラスを見渡す。


「見つけた。」

「シオリちゃん…?」


 レイナの方に向け歩みを進める。

 クラスの人はまだ再起していない。


「レイナさん。どうして兄さんを殺したんですか?」

「えっ?」

「とぼけないで!どうして兄さんを殺したの!?」


 レイナの胸ぐらを掴む。


「殺して…。」

「殺したんでしょ!兄さんをずっと人殺しって苦しめて…。」

「それは…。」

「どうしてそんなことをしてたの!どうして!ねぇ、どうして!」

「おい、もうやめろ。」


 シオリの後ろから肩を掴む人がいた。

 シオリは振り返りその人を見る。


「アヤカさん…。」

「シオリちゃん久しぶりだな。」

「アヤカさんも兄さんを人殺しって言ってたんですか?」

「いや、それはない。」

「じゃあ、なんで兄さんを助けなかったんですか!?」

「……。」

「黙ってないでなんとか言ってください!」


 レイナの胸ぐらを掴みながらアヤカにも胸中を吐き出す。


「ちょっと、やめてください!」


 シオリからレイナとアヤカを引き剥がされる。


「邪魔しないで!」

「あなたはタテワキさんの…。」

「妹です。あなたは何ですか?」

「私はハウズ・柏木・リリナ です。」

「あなたも兄さんをいじめていたんですね。」

「そう、ですね。私は見て見ぬ振りをしていた、いじめに加担した加害者ですね。」

「そう…。」

「でも!私はあのとき!」


【勇者を召喚します。】


 クラスに突然女の声が響く。

 どこから聞こえるのかわからない。

 まるで直接頭に響いているよう。

 そこでクラスの大半は再起した。

 そして、見た。


「おい、なんだこの床の文字は!?」

「魔法陣…?」

「めっちゃ光ってる!」

「ツイッターに投稿しなきゃ!」


 床には白く輝く魔法陣。

 文字が円形の魔法陣に沿って回転している。


【勇者を召喚します。】


 一層強く光り、視界を白に塗りつぶす。


「「「「「きゃーー!!」」」」」

「「「「「うわーー!!」」」」」



 ◆



 目を開けた。


 目に映ったのは美しいお姫様だった。


 そのお姫様はこういった。


「勇者様、どうか魔王を倒してください。」

シオリは明らかなヤンデレ…

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