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日常の崩壊(2)

 俺が地球で15歳、中学2年生の時だった。

 俺とレイナとアヤカは仲が良かった。

 3人ともお互いの家を行き来して遊んだりして本当に楽しかった。


 それは、レイナの家で遊んでる時だった。

 レイナの家は財団理事長のためかとても広く、家というよりか屋敷といった方がイメージがあう。


「なぁ、レイナとアヤカってお嬢様だよな。なんでそんなにスマ〇ラ強いの?」


 ピ〇チ姫とゼ〇ダ姫のビンタとキックが俺のMiiファイターの頬と腹部に炸裂する。

 そのまま場外へ。


「お嬢様だってゲームするのよ!」

「そうだぞ、ツカサ。むしろお嬢様だからこそゲームをする。」

「いやいや、むしろってなんだよ!?てか、次だ次!今度こそ勝つ!」


 意気込んで再戦する。

 戦闘が始まった瞬間2人の間に挟まれてリンチにあう。


「これ協力プレイじゃないよね!?」

「そうだよ。」

「そうだな。」

「じゃあ、なんで俺ばっか攻撃するんだよ!?」

「あはっ。」

「ふっ。」

「答えになってねぇー!」


 またも場外に吹き飛ばされて最下位になる。


「あれ、なんで2人は戦わないの?」

「「ツカサを倒したから。」」

「お前ら性格わるっ!」

「あはは。まぁまぁ。私部屋からお菓子持ってくるからツカサとアヤカは対戦してて。」

「了解。」

「なるべく早く帰ってこいよ!」


 レイナは部屋を出て行き、残された俺たちはゲームを再開する。

 俺はマ◯オを選択し、アヤカはルイ◯ジを選択する。


「兄弟対決だな。」

「手加減してねっ!」

「ツカサ、キモいぞ。」

「ひどっ!」


 対戦が始まるとパンチとキックの激しい攻撃が始まる。

 兄が弟にボコボコにされる攻撃が。

 3つあった兄の命は最後、弟の打ち上げによりはかなく散った。


「強すぎだろ。」

「ツカサが弱すぎるんだ。練習しとけ。」

「うぅ。…あれ、レイナはまだ帰ってきてないのか?」

「帰ってきてないな。時間がかかるようなことじゃないと思うが。」

「俺、ちょっとレイナの部屋に行ってくるよ。」

「そうか。私は待ってるぞ。」


 アヤカを残し、レイナの部屋に歩いてむかう。

 すぐに近くにあるのでお菓子を持ってくるのには時間がかかりすぎだ。

『レイナの部屋』と可愛らしくデコレーションされた扉の前に立つ。

 扉は完全には閉まっていなかった。


「レイナー、入るぞー。」


 レイナの部屋に入る。


「シンジさん。何をやってるんですか?」


 普段のレイナの部屋は薄いピンク色を基調とした壁紙に物は整理整頓がなされていて落ち着きがある。


 だが、今目の前に広がっているのは壁には傷が付き、床には衣服や本が散乱している。


 そして、レイナが普段寝てるのであろうベッドを見た。


 見たのは、服はほぼ脱がされ、腕と足も固定され、涙を流したレイナとレイナの上に跨った全裸のレイナの兄『赤沢 シンジ』だった。

 シンジは己の妹の腰を掴み、今まさに情事に及ぼうとするところだった。


 シンジはこちらを見ずこう言った。


「ツカサかァ?お前も混ざるかァ?今ならお前に1番最初を譲っても良いぜェ?」


 その言葉を聞いた時、それを聞く前から頭に思い描いていた行動が実行に移された。


 レイナが何かの大会で優勝した時の金色のトロフィーを手に持ち、俺は大きく振りかぶりそれをレイナの上に跨った『動物』に叩きつけた。


 何度も

 何度も何度も

 何度も何度も何度も

 何度も何度も何度も何度も

 叩きつけた。


 頰にかかる液体はそのまま、叩きつける度に凹んで行く白い固いものを見ながら何度も叩きつける。


 その行為が終わったのは『動物』から吹き出た液体で手からトロフィーが滑り落ちたからだった。


 叩きつけるのに夢中だった俺はここでレイナを思い出した。

 レイナは俺の顔を見ていた。

 だが、表情まではわからなかった。

『動物』から吹き出た液体が瞳を濡らしていたからだ。

 目を拭いながらレイナに手を伸ばす。


「大丈夫か、レイナ。」

「なんで殺したのよ。」

「は?」

「なんで殺したのよ!?お兄ちゃんは心の病だっただけなのに!!」

「え?」

「抑えつけたり、助けを呼べばよかったのに、なんで殺したのよ!!

 この『人殺し』!!」

「な、んで…。」


 意味がわからなかった。

 どうして、強姦されそうになったところを助けたのに人殺し呼わばりされなければならないのか。


「おい、何を騒いで…っ!」


 様子がおかしいと感じたアヤカもやってきて目撃してしまう。


「シンジ…さん…。ツカサ、お前はっ!」


 アヤカは俺を愕然とした顔で見る。


「人殺し!人殺し!人殺し!」


 レイナは発狂しながら俺をひたすらに人殺しと呼ぶ。


 この騒ぎを聞きつけた家の人がやってきたことで事態はさらに大事になる。

 そして、ついにレイナの父までもがやってくる。

 だが、彼は取り乱すことなく事情を聞いていく。

 もちろん、俺も話を聞かれる。

 間違いなく殺したのは俺だから。


「そういうことか。」

「はい。」

「ひとまず、レイナを救ってくれてありがとう。」

「いえ。ですが、なぜレイナさんは俺のことを『人殺し』と言うのでしょうか。彼女は実の兄に…。」

「ツカサくん!」

「っ!失礼しました。」


 しまった。実の父親の前で話を蒸し返すべきではなかった。


「いや、すまない。怒鳴って悪かった。…人殺しとなぜ言われるのか。君にはシンジのことについて話しておこうか。」

「はい。」


 レイナの父から話がされる。

 赤沢 シンジは狂っていた。

 人こそ殺していないが、落書き、恐喝、暴行、傷害、窃盗、強姦未遂など。

 やったことが、刑務所に送られていてもおかしくないはずのものばかりだった。

 しかし、全て金の力で解決したらしい。

 強姦未遂はこの家のお手伝いさんだったため、なんとか内輪で処理ができたらしい。


「昔はあんなに優しかったのに。」

「赤沢財団の理事長の長男としてのプレッシャーを感じていたのかもしれん。いつからか、こんな狂人のしでかすようなことをするようになった。」

「でも、レイナさんから聞いた話は心の病だって。」

「違うのだ。あまりにも目に余るので自室に監禁していたのだ。今思えば、監禁ではなくしっかりと矯正すればよかったのかもしれない。」


 矯正したところで本当に良くなるのか。

 プレッシャーという理由だけで実の妹に手をかけるだろうか。

 元々、狂っていたのではないか。


「さて、レイナがなぜツカサくんを『人殺し』と呼ぶのかだな。」

「はい。」

「それはな…。」


 あくまで彼の推論でしかないが、父親なりの答えを告げていく。

 曰く、大好きだった兄に強姦されるという衝撃からツカサを罵倒することで目を背けること。

 曰く、心の病だと聞いているから殺されなければ治ったかもしれないということ。


「そういうことですか。」

「あくまで推論だがな。おそらく、レイナはこれからもツカサくんのことを激しく罵ると思う。もちろん、注意はしていくが、ききはしないだろう。ツカサくん、本当に申し訳ない。」



 この事件は赤沢家で処理されることになり、俺は家に帰った。

 後日赤沢家の方から説明があり俺は感謝された。

 母とシオリも俺のことを褒めてくれた。


 だが、事件の起こった翌日から俺はいろんな人から『人殺し』と呼ばれ始めた。

 レイナを怒ろうにも怒れない。

 事実だったから。


 毎日

 毎日毎日

 毎日毎日毎日

 毎日毎日毎日毎日

『人殺し』と呼ばれ続け、レイナを救ったはずなのに頭の中は罪悪感で埋め尽くされていく。

 いつしか、『人殺し』という言葉が聞こえなくなるように、無意識に防衛反応が働き、頭の中に入ってこないようになり、■■■となる。

 そして、幸いにも妹は小学生だったので矛先は向けられなかった。

 だが、少しは耳に入っていたようで毎日のように心配される。

 俺は努めて家では気丈に振る舞い明るく過ごしていく。


 そして、高校2年生の時に彼女達を助け、異世界に転生することになった。

当初は未遂では済まなかったのですが、俺の心がもたず未遂になりました。

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