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日常の崩壊(1)

 13歳になる1週間前。

 その日、俺は朝早く起きて1人で神殿に出かけていた。


 この2年間は順調に技術発展も起こり50mのビルも作られるようになり、品種改良された食物もこの土壌に合うか最終試験が行われていた。

 フィルアが作った核融合発電も発電効率も上がり再来年には営業運転が可能になるのではないか、というところまできている。

 その際、めでたく社長になる予定だ。

 リンダは会長職についてからは書類アレルギーになったみたいで孤児院で子供達とひきこもり生活をしている。

 まぁ、リンダはよくやっていると思うので大目に見ようと思う。


 一方、俺はお金の管理をしている。

 ここでお金のことだがリンダにお金はどこで作られているのかと聞いたら、どうやら神殿が作っているらしい。

 神殿は絶対中立で今までお金のことで不祥事はないとのこと。

 闇の神殿は破壊されているため、お金を生産する権限はないらしい。


「てか、この世界全部共通硬貨なんてな…。さすが異世界だよ。」


 ぼやきながら神殿の前に到着する。

 そして、右半分が崩落していて自分の体が大きくなったせいか入るのもやっとな入口をくぐる。


「やっぱり魔法は使いたいよなぁ。」


 7年前に諦めたと言っても異世界にいるいじょう、周りの人たちが魔法を使ってるのを見て簡単には諦められなかった。

 首と腕がない女神像に跪きお祈りする。


「闇の女神様、俺にもステータスをください。どうか、俺にも魔法を授けてください。」


 ーヒュー


 風が俺の前髪を揺らす。


「今度こそ!【ステータス】!」


 ……。


「【ステータス】!」


 ……。


「はぁ、ダメかー。」


 どうして使えないんだろう。

 今回はちゃんと貢物として揚げせんべいもってきたよ?

 それなのにダメなの?


「帰るか。」


 行きで使った魔物除けのお香を捨て新しいお香に変えて孤児院に帰る。

 未だに、俺は孤児院に住んでいる。

 子供の間は孤児院に住むというのがリンダの決めたことなのだ。


 ところで、リンダとの関係は相変わらず耳とツノのマッサージにとどまってる。

 これ以上はどちらも進むことがなんとなくできずにいたのだ。

 しかし、今日の夜にそれを変えようとしている。


「あぁ、今日の夜は大変だ。」


 なぜ、大変なのかというとフィルアが関わっている。

 最近のフィルアは妙にからんできていた。

 好意からきているのはわかっている。

 現に昨日告白されたばっかりだ。

 そこに大変になる理由がある。



 ◆



 湯浴みからグレードアップしたお風呂に入っているとき。


「風呂はやっぱいいなぁ。」


 異世界にきて風呂に入れる喜びに浸り、鼻歌なんかを歌っている最中に起こった。


「ツ、ツカサ!」

「んー、なんだー、フィルア。」


 ーガチャ。


 お風呂の扉を開けられる。

 いきなりなんだと、驚いてそちらを見れば一糸まとわぬ青い髪の長い美少女。

 お胸は小ぶり綺麗なピンク、腰も細くその下は……。

 それ以上はいけないと思い慌てず冷静に顔をそむける。


「フィルア、俺お風呂入ってるんだけど?」

「知ってる。」

「お、おぅ。知ってたか。」

「……。」


 え、なに?その間は何か言えってこと?


「い、一緒に入るか?」


 俺が風呂にいることを知って一糸まとわぬ姿で現れた美少女に言うべき言葉はこれしか思い浮かばなかった。

 結果……。


「……うん。」


 わーい、幼女とお風呂TIMEだー。


 ーチャポン


「……。」

「……。」


 ダメだーー!!これ、リンダにバレたら死んじゃうよー!!


「ツカサくん、フィルアちゃん知りませんか?」


 言ってるそばからーー!!


「知らないなー。」

「そうですか。どこに行ったんでしょう。」


 リンダの足音が遠ざかっていく。


「なぁ、フィルあっ!」


 細い腕に抱かれる。


「ツカサ、大好き。」

「俺も大好きだぞー。」

「違う!そういうのじゃない!」


 あぁ、なんとなくそんな気はしてた。


「なぁ、フィルア。好きって男と女の関係って意味か?」

「……うん。」


 13歳が大人だから12歳でこういう話になってもおかしくないのか。

 そうだな。無責任なことは言えないな。

 フィルアのことはもちろん大切だ。

 正直女としてみることもある。

 だが、リンダもいる。

 俺って最低だな。


「ツカサ、私ずっと前に院長先生にも話したんだ。ツカサのことが好きって。それでね。1番目になるか2番目になるかツカサに決めてもらうんだ。」


 そんな話しをなぜ本人不在のまま決めるんだよ。

 あぁ、でも、これで迷う必要はないな。

 迷ってたのはとても情けないけど、どっちも大切だから。


「ツカサ?」

「フィルア。」

「はい!」

「俺はフィルアのこと好きだよ。」

「それは…。」

「女としてだよ。」

「っ! ツカサ!」

「でも、それはリンダとも一緒に話したいことなんだ。だから、これ以上は待ってほしい。」

「わかってる!院長先生も大事なのは私もだから!」


 あぁ、なんていい子なんだろ。

 今まで、ツンばっかりだったからフィルアとこんな風になるなんてすごく嬉しい…。


 ーガチャ!


「ここにいましたね!」

「院長先生!?」

「リンダ!?」


 そこに怖い顔してリンダが立っていた。


「2人でなにやってたんですか?」

「そ、それは…。」


 フィルア、言い淀むとやましいことしてたみたいだからやめて。


「リンダ。」

「なんですか?ツカサくん。」

「明日の夜、大切な話しがある。」

「っ! そう、ですか。」


 悲しい顔をするリンダ。


 何か勘違いしてるみたいだな。


 湯船から立ち上がりリンダに近づきツノに手を触れ、耳に歯をたてる。


「きゃっ!ツ、ツカサくん!?」

「明日の夜、大切な話しがあるから。」

「っ! そうですかっ!」


 早く上がるんですよぉ、と言ってスキップしながらリンダは戻っていった。


「ツカサ、ズルいよ。それに……、大きいね。」

「へっ?」


 フィルアが指を指す場所を見る。

 ちょうど、お腹の下だった。


 うん、しょうがないよね。

 女の子と一緒にお風呂入ってたんだもん。


「フィルア、なんかごめん。」

「大丈夫。覚悟はしてるから。」


 幼女がそんなこと言っちゃいけません。

 それに俺はまだなにも出せないから期待もしないでください。


「じゃあ、そろそろ上がるか。」

「私はまだ入ってる。」

「そう?じゃあ、お先に上がるよ。」



 ◆



 昨日は、それで幕を下ろした。

 そして、今日。

 大変になると思ったのは、なんてプロポーズすれば良いのか、全くわからないからだ。

 なんせ、2人同時に嫁をもらうことになるのだ。

 これなら、WEB小説じゃなくてリアルの一夫多妻制を勉強すべきだった。

 今更、嘆いても仕方ないが。


「素直に2人とも好きだって言うしかないな。」


 日本にいたら言えない言葉だったな。


 プロポーズの言葉を考えていると段々と家が見えてくる。



 ーブルッ


 なぜだか、とても気持ちの悪い寒気に襲われた。

 胸騒ぎというか、焦燥感というものがこみ上げてくる。


「早く帰ろう。」


 孤児院はここから徒歩で15文明ぐらいだが走って8分で到着する。

 そして、孤児院を見た。


「なんだこれ。」


 孤児院は外壁が落ち、扉も壊され、倒壊寸前の様相を見せていた。


「リンダとフィルア、子供達に何かあったのか!?」


 急いで中に入る。

 中に入った途端、世界が変わった。


 床で横たわる子供達。

 フィルアも同じように横たわっている。


「お前ら!?」


 急いで状態を確認する。

 死んではいない。

 ただ、気絶しているだけのようだ。

 他の子供達も同じような状態になっている。

 子供達を見るために奥の方に歩みを進めると気づく。


「リンダ!?」


 リンダが十字架に磔にされ気を失っている。

 手や足に杭を打たれていないあたり魔法で磔にされているようだ。


「誰だ、こんなことをした奴は!?」


 憎しみと怒りがこみ上げてくる。

 そこで、俺は思い出したくもない声を聞いてしまった。


「久しぶりだなァ〜、ツカサァ〜?」

フィルアは元気キャラから落ち着きのある子に成長しました。

でも、思春期は抜けきれていないようです。

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