5年間の軌跡!
俺は現在11歳になっていた。
大人になる13歳の一歩手前だ。
6歳の誕生日を迎えてからこの5年間色々なことがあった。
◆
まず神殿に行った。
もちろん魔法が使いたいからだ。
神殿は魔国の首都『スラガ』の東に位置していて少し遠い。
だが、行けない距離でもないため歩いて行った。
「リンダー。」
「何ですか?」
「どうして道がないんだよ。」
「闇の神殿なんて誰も行かないですし、そもそも魔族と他種族の戦争で神殿が半壊してますからね。今もあるかどうか…。」
「ないかもしれないの!?」
嘘だろ…、すごい不安になってきた。どうかありますように。
森の中、道なき道をリンダの後をついていく。
「魔物って出てこないのか?」
「一応、魔物が嫌うお香を焚いてますからそうそう出ないと思いますよ。」
「そうなのか、少し残念だな。お香消せない?」
「ダメですよ!ツカサくんは魔法を使えないどころか、そもそもステータスが出ないのですから。」
確かに、ステータスが出ないからHPがわからなくて危ないな。
その後、数時間が経ちやっと神殿についた。
「つ、疲れた。」
「男の子でしょ。しっかりしてください。」
「俺にもステータスが出るようになればすぐにレベル上げするよ。さて、神殿は…、おぉ、これが…。」
半壊していた。ちょうど右半分が崩壊していた。
「これ、入れるのか?」
「かろうじて入り口は無事みたいですね。」
「良かった。ここで入れなかったら泣いてたよ。」
「あはは。じゃあ、入りましょうか。」
石と大理石でできた神殿の中に入る。
半壊しているせいか、中は崩落していてかなり狭い。
「さて、何をすればいいんだ?」
「さぁ。祈っておけばいいのではないですか。」
「テキトーだな、おい。まぁ、それしかやることないよな。」
首と右手が折れている女神像らしきものの前で跪き、両手を交差させ祈る。
俺にステータスをください。どうか、魔法を使わせてください。
ーヒュー
どこからか風が吹いてきて前髪を揺らす。
俺は一通り祈り立ち上がる。
「どうですか?」
「なんか、いける気がする。【ステータス】!」
……。
「何も出てきませんね。」
「おかしいな。ちゃんとお祈りしたのに…。【ステータス】!」
……。
「やはり何も出てきませんね。」
「ちょっともう一回祈ってくる。」
1時間後。
「もぅ、帰ろうか。」
「えっ、でもまだステータス出てきてませんよね?」
「リンダ。もういいんだ。帰ろう。」
どうして何も出てこないんだよぉぉおおお!!
お祈りの仕方が悪かったのか、それとも神殿が半壊してるからなのか、結局ステータスは出てこなかった。
「ツカサくんにはステータスでは測りきれない豊富な知識と創造力があるのですから落ち込まないでください。」
「うぅ、リンダぁ、ありがとゔ。」
異世界にきても魔法が使えないという結果になり、その日はリンダの胸の中で泣きながら眠った。
神殿に行った数週間後に魔法を使うことを諦めて本格的に起業しようとしていた。
事業の主としては、学校経営、電気事業、建築だ。
だが、そのためには莫大なお金が必要で融資をしてくれる人を探さないといけない。
そして、技術者も探さないといけない。
「ひとまずは、『一級建築士のなり方!』の翻訳だ。」
午前は授業をして、午後は翻訳をするという生活習慣ができあがった。
翻訳にあたり、やはり翻訳できない言葉が多々あった。
それについては別紙に記載していくようにしたため余計に時間がかかる。
そして、あっという間に1年が過ぎ去った。
「やっと、できあがった。」
「ツカサくん、お疲れ様です。」
できあがった一冊の本を使って休日に大工をしている子供達の親を招いて授業をする。
授業参観をしたり、子供達の成長姿を見ているせいか、親たちからの信用はかなりあり、多くの親が集まった。
たまに衝突することはあったが、割とスムーズに授業は進んでいき最初の成果として3階建ての一軒家ができあがった。
これを見た他の大工さん達が授業を受けに来て、また新しい建物を作ればさらに大工さんが集まってくるという循環ができあがったところで、起業の話を持ちかける。
そのまま独立した人もいたが大方賛同してくれ、俺の会社の従業員になることになった。
これで建築の方は半分は解決した。
あとは、給料や役職の問題だったがそれもリンダが経理兼社長になってもらったことで解決した。
社名は『大魔国建設』になった。
「なんで、私なんですか!?」
「だって、俺まだ子供だし。」
「確かに、大人は私しかいませんけど。」
納得してもらった。
学校の方は、集まった大工さん達の子供達、かなりの人数が新たに通い始めたので校舎を建てることにした。
もちろん建てるのは従業員の大工さん達だ。
できあがったのは、完全に日本の公立校の校舎だった。
「なんか、着々と日本になっていくんだけど。」
「ツカサ、これが日本の学校なの?」
「そうだぞ、フィルア。」
わしわしとフィルアの頭を撫でる。
すると、バシッと手をはたかれる。
「子供扱いしないで。」
フィルアが大人になるにつれてデレデレからツンツンになる。
最近はツンしか見ていない。
これが思春期なのか…。
あんなに甘えん坊だったフィルアは何処に…。
生徒が増えたことにより教師不足が深刻になったので、お金持ちが通っていた学校から教師をヘッドハンティングした。
物理と化学はさすがに教えられないが彼らは数学と国語は教えることができたからだ。
その際、金持ち学校の経営陣から抵抗にあったがマネーパワーで円満に解決した。
ここでのマネーは『大魔国建設』のお金だ。
公共事業も社会貢献のために行っているのだ。
「結局、お金なのですね。」
その日はリンダに肩揉みをしてあげた。
学校は無料にしたので子供達への教育費が減り人口が増えていった。
そんな時、俗に言う天才がまだまだ発電量は少ないが核融合発電を魔法の力と科学の力で生み出した。
「フィルアさん、確かに理論は教えましたが本当に作り出すとは思いませんでした。」
「私だって頑張ってるんだから。早くツカサに追いついてみせるから。」
「いや、もう追い抜かれてるから。」
「まだまだだから!」
なんて向上心の高い子なんでしょう。ちゃっかり地球文明に追いついた、というか超えましたよ?
将来は『大魔国電力』の社長だよ。
食料関連も革命が起ころうとしている。
新たに『大魔国農林』という会社を立ち上げ品種改良を魔法を使って行われている。
これが成功すればオートメーション化されて食べるの困らなくなるはずだ。
会社が2つになったので『大魔国建設』と『大魔国農林』の上に『大魔国グループ』を設立し、会長をリンダにした。
「私、ただの孤児院の院長なんですけど!?」
「リンダお願いします。」
「……。わかりましたよ。」
建設と農林の社長はそれぞれの幹部から昇格させた。
学校の方は『大魔国学校』というそのままの名前をつけて校長は金持ち学校から引き抜いた熱血教師の爺さんになった。
武器のことについても考えていた。
「銃とか出てきたらどうしよう…。」
「銃ってなんですか?」
「武器だよ、金属の玉を高速で射出して相手の体に穴をあけるんだよ。」
「それは、すごいですね…。」
「出てくる前にこっちで造って製造権を得るか。」
銃はすぐ作った。
魔法も駆使して作った簡単な物だったがこれをみんなの前で撃つと顔を青くしていた。
どうやら危険性は理解してくれたようだ。
この後も一通りの武器を発表して、全面的に開発の禁止をし、他国から侵略された場合のみ製造と使用を許可した。
ちなみに、この発表はリンダにさせた。
手が震えながら発表してたのは笑えた。
笑ってたら怒られた。
この5年間で本当に文明が進んだ。
これからもまだまだ発展を続けていくんだろう。
今まで見た魔国で1番活気がある。
さらに活気は増していくのだろう。
ものすごく楽しみである。
そんな時に悲劇は起こる。
しょせんお前らは魔族だ、とあざ笑うように大切なものが奪われていく。
「やめろやめろやめろぉぉおおお!!」
彼女の首もとにあてがわれた刃が紅い鮮血を撒き散らし、彼女の体は地に落ちた。
やっと、平和な日常が終わる。
プロットはたてたはずなのになぜこんなに長くなったのか…。
さぁ、ここからは冒険だ!