5-3-1.対人戦トーナメント準決勝
試合開始と同時に、龍人は風の刃を発生させる。風刃はジグザグの軌道を描きながら火乃花へと向かう。直線的、曲線的な軌道ではないので軌道が読み辛く、避ける事が難しい攻撃だ。
それに対し火乃花は巨大な火球を2発放った。火球が引き起こす風圧が、風刃の軌道を強制的に逸らしていく。そして、いくつかの風刃と火球がぶつかり、互いに相殺する。しかし、相殺出来たのは1つ目の火球のみ。2つ目の火球はそのままの勢いで龍人の目前へと迫っていた。
(この質量の火球を2発連続か。さすが火乃花だな。)
ここで龍人が取り得る選択肢はパッと思い付くので3つだ。水壁で防ぐ。避ける。同じ規模の攻撃魔法をぶつける。これらの中で最善の選択は…。
(水壁だと、余程分厚くないと火球の引き起こす風で吹き飛ばされそうだな。そんで、避けるはいいんだが、回避先で追撃が飛んで来る可能性がある。同じ規模の攻撃魔法が1番安全策だが、戦いが降り出しに戻るだけだ。相手の意表を突いて、尚且つ俺が有利に立てる方法は…そうだ!)
龍人は笑みを浮かべると、周りに光の球を発生させる。そして、火球が龍人に激突…爆発し熱を辺りに撒き散らす。
(何…今の…。龍人君がこのままやられるとは思えないし。わざと直撃を受けた…?)
火乃花は辺りを見回すが、龍人の姿を見つける事が出来ない。
(上空にもいない。となると…地面の可能性が高いわ!)
火乃花は炎の槍を10本、自身の足下へと突き刺す。地面へと刺さった炎の槍は次々と地中で爆発し、地面を抉っていく。相当な火力を込めた攻撃だったのだが…。
「そんな、いない!?」
予想が外れた火乃花は、上空から光を感じ見上げる。そこには幾つかの光球を携えた龍人が居た。
観客席のルーチェは、口に手を当てて龍人の動きをみていた。
(信じられませんわ。あれは私が龍人くんと戦った時に使った魔法ですわ。いや、正確に言えば私の所有属性を全て知らないからこそ、属性【光】で同じ現象を起こした…ですわね。元々使えたのか、1回見ただけで真似をしたのか分かりませんが。…本当に侮れませんわね。属性【全】も、龍人くん自身の…才能も。)




