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Colony  作者: Scherz
第七章 古代文明と世界の理
984/994

16-5-21.6階の試練 ブリティの覚悟

久々の更新です。

お待たせしました。

 興奮絶頂煮干。それは表社会に決して流通する事の無い幻の煮干し。

 口に入れた瞬間に口腔内と鼻孔へ豊かに広がる香りは幸福感を込み上げさせる。そして、舌の上で踊る引き締まった身。ひと口噛み締める毎に染み出す芳醇な味わいは、精神を興奮させ、絶頂のエクスタシーへと導く…。

 一度食べれば中毒のように求めてしまい、最悪…廃人となってしまう危険性も孕んだ至高の逸品なのである。

 故に、裏社会のみで取引され、この煮干しを巡る争いは絶えないのだった。


 …的な妄想ストーリーがブリティの脳内を駆け巡っていた。


「そ、そ、その煮干しさん…食べたいのにゃ!」


 目線は煮干しに釘付け。思考は煮干しで一杯。

 至福の時間が訪れたのだ。

 しかし…。


「この煮干しを食べたいのなら、試練を諦めることね。」


 幸せ一杯のブリティに女の影は冷たく言い放つ。

 その要求は余りにも過酷な内容で…ブリティは戸惑いを隠せなかった。


「そ、そんな…!?アタイにミューチュエルの仕事と煮干しのどちらかを選べと言うのにゃ!?」

「そうね。貫き通す意志を持っているのなら、どちらかを選んで貫き通してみなさい。」

「で、でも…どうすれば良いのにゃ…?」


 両手で頭を抱えたブリティは突き付けられた無理難題(ブリティ的に)を思考する。


「依頼というか試練はまた1階から挑戦すれば…煮干しも食べれるし、依頼もクリアにゃ…?でも、クルルが許さないのにゃ。でも、興奮絶頂煮干は今しか食べれないのにゃ。あれを食べなかったら一生の後悔をするのにゃ…。でも、でも…本当に煮干しさんの為にお仕事を放り投げて良いのにゃ…?」


 最早混乱の極みである。

 理性が貫き通すと決めたミューチュエルの仕事。

 本能が貫き通すと決めた煮干しへの愛。

 この2つがブリティの頭の中で大騒乱を繰り広げていた。


「意志が弱いのね。それとも、強すぎるが故…かしら?」


 女の影はブリティを見て肩を竦める仕種をすると、炎の槍を生み出した。


「まぁ、この程度が無難かしらね。」


 クルクルと槍を回しながら感触を確かめた女の影は…悩めるブリティへ向けて行動を開始した。


 結界の外から煮干しに踊らされるブリティを見ているクルルは腕を組み、眉根を寄せる厳しい表情を浮かべていた。


「不味いわね。思った以上に難敵だわ。」

「うん…ブリティに煮干しと仕事のどちらかを選べっていうのは…。」


 普段のブリティを知っているからこそ、クルルとミリアにはブリティが突き付けられている問題を解決する姿をイメージする事が出来なかった。

 しかし。


「そうでしょうか?私からすると…至極簡単な問題にしか思えないのですが…。というより、最初から答えを言っている気が…。」


 と、ザンはブリティが試練の内容で苦しむ事にイマイチ理解が出来ないようで首を捻っていた。


「どういう事?」

「つまりですね…。」


 解を求めるクルルにザンが説明を開始する。

 その横ではザキシャがつまらなそうに翻弄されるブリティを眺め…。

 その横ではナビルンが慌てたようにクルクルと回っていた。


「コレハ由々シキ事態デス。個体ノ意志ガ強ク、試練ノ難易度ガ歪メラレテイマス。修正…不可。今回ノ記憶源ハドレダケノ…。」


 結界内に一切の関与が出来ないからこそ、周りにいる面々は比較的落ち着いて試練の様子を眺める事が出来ていた。

 しかし、それはあくまでもギャラリーが落ち着いているだけであり、試練挑戦中のブリティには全く関係がない。今の状況で落ち着いていられる訳がなかった。


「危ないのにゃ!?なんで武器が変わるのにゃ!?魔具って普通1つなのにゃ!」


 女の槍を弾き、反撃をしようとしたタイミングで女が新たに生み出した剣での迎撃を喰らったブリティが焦ったように叫ぶ。


「…?魔具は1つ…?………あぁそういう事なのね。」


 女の影は何かに納得したのか、ニヤリと笑った雰囲気を醸し出す。


「なら、貴女にはご褒美を用意してあげるわ。さ、煮干しとミューチュエルどちらを選ぶのか決めるのよ。」

「そ、そ、それは無理難題にゃ!」

「どうして?」

「だって、アタイはどっちも大切にゃ。」

「だから、煮干しを手に入れて、もう一度試練に挑めば良いじゃない。」

「う…それはそうなのにゃ。でも、なんか違うのにゃ。」


 煮干しとミューチュエルが頭の中でぐるぐる回る。どうすれば良いのか。何が大切なのか。何を優先するのか。

 女の影が次々と繰り出す攻撃を必死に避けながら(時々被弾して吹き飛ばされながら)ブリティは必死に考える。


(アタイはミューチュエルとして一生懸命仕事をしてきたのにゃ。時々煮干し優先で依頼を微妙に後回しにしてクルルに凄い怒られたけど…諦めた事は無いのにゃ。一応仕事はしっかりとやるのをポリシーにしてるのにゃ。でもでもでもでも…煮干し愛も本物にゃ。アタイは白金の都にある煮干しを制覇した自信があるにゃ。そのアタイが食べたことの無い煮干し…涎が、涎が止まらないのにゃ…!)


 思考の大半が煮干しに偏ったタイミングで、女の影が放った火球の連撃を被弾してしまったブリティは派手に吹き飛ばされてしまう。


「ぐ…にゃ…。強いのにゃ。」


 痛む身体に鞭を打ち、ヨロヨロと立ち上がるブリティ。何度も受けた炎撃によって全身は見た目もボロボロである。まさに強敵。一筋縄ではいかない相手だという事が良く分かる。

 …と言っても、煮干しに思考を惑わされてまともに戦っていないので、実質の所がどうなのかは…甚だ疑問であったりもする。


(どうするにゃ。アタイは…。……ミリアならどうするにゃ?)


 ふと、親友でもありミューチュエルでの相棒的存在であるミリアが頭に浮かんだ。

 基本的に元気で明るいミリア。白金の都の住民達から慕われる彼女なら、この状況をどうするのか。例えば…カルルン人形の超プレミアと依頼を天秤に掛けられたらどうするのか。


(……アタイみたいに頭を抱えて悩みそうにゃ。プッ…。)


 悩むミリアを想像しますブリティは思わず笑ってしまう。元気なミリアが変な事で悩んでいる姿が滑稽に思えたのだ。


「……にゃ?……変な事……。」


 ブリティは自分の思考に引っかかりを覚えた。

 そして…。


「……分かったにゃ。分かったのにゃ!」


 ピンっと立ったブリティは、右手をビシッと上に上げた。所謂、挙手である。

 学生みたいな動きに苦笑いの雰囲気を滲ませながら、女の影は腰に手を当ててブリティを促す。


「何が分かったのか言ってみなさいよ。」

「はいにゃ!」


 元気な返事をしたブリティは、上げていた手を女の影に向けてビシッと指を指す。

 そして、言い放った。


「アタイはその興奮絶頂煮干を食べるのにゃ!」

「あら…じゃぁ…」

「そして!アンタも倒して試練をクリアするのにゃ!どっちかを諦めるんじゃなくて、どっちも諦めないのにゃ!アタイは…強欲の化身なのにゃ!」


 ドーン!と、胸を張って「どうだ」と言わんばかりに威張るブリティ。その表情は煮干しと依頼の間で揺れ動いていた迷いは一切見られない。


「そう…。ふふ…いいわね。そういう割り切り、好きよ。」

「ありがとうなのにゃ!と言うわけで、煮干しを寄越すのにゃ!」


 ややカツアゲ風な台詞である。

 女の影は肩を竦めると、周囲に浮かべていた炎を全て消し去る。


「…にゃ?アタイの気迫に負けて観念したのにゃ?」

「いいえ。貴女が私の交渉に乗らず、信念を貫くときめたのだから…あとは戦うのみでしょ?手加減無しで戦ってあげるわ。」

「なるほどにゃ。つまり、強い人が正義にゃ!アタイも手加減しないのにゃっ!」


 プリティーのサンドクローが気合いに呼応するかのようにギラリと輝く。

 そして、女の影は1本の炎鞭をその手に生成する。

 これまでの炎魔法の乱撃ではなく、凝縮された魔力の感覚にブリティの額を一筋の汗が流れ落ちる。

 お遊びが終わり、真剣勝負が始まる予感に空気がピリピリと張り詰めていき…ブリティの顎から汗が落ちた。

 汗の雫は空気抵抗にあいながら、その形を微妙に変えつつ落下し…床に吸い込まれていった。

 そして、これが音も無い開始の合図となった。


「行くにゃ!」

「はっ!」


 ブリティが身を低くして疾走し、両手のサンドクローを下から斬り上げる。6本の斬撃が閃光のように軌跡を残しながら女の影に迫る。因みに、低姿勢で疾走するブリティはパンチラ万歳状態だったりもする。

 …ともかく、鋭い斬撃が女の影に迫り、更にブリティの両サイドから砂の弾幕が叩きつけるように放たれる。

 下からの斬撃に、横からの弾幕。逃げ場は上にしかない。そして、上に逃げれば燕返しの要領で魔法と斬撃の同時攻撃を叩き込む。

 逃げ場のない、先手必勝の攻撃だった。


「良い攻撃ね。」


 だが、女の影は怯まない。

 いや…怯む必要が無かったのだ。ブリティの攻撃を打ち払う事が出来るのだから。

 炎鞭が弧を描きながら激しく踊り、ブリティの斬撃を弾き、砂の弾幕を難無く叩き落としてみせる。


「にゃ…!?」


 一瞬の荒技にサンドクローを弾かれたブリティは体勢を崩してしまう。


「自分が自信を持つ攻撃ほど油断してはいけないのよ。…貴女、ポテンシャルが高いのに経験が足りないみたいね。」


 女の影は体勢を崩して隙だらけのブリティへ炎鞭を持たない手を向け、爆炎を放った。


「ぐにゃ!」


 ブリティは咄嗟に魔法壁を前面に張って防ごうと試みるが…失敗。爆炎はいとも簡単に魔法壁を砕き、ブリティをのみ込んだ。

 その威力は凄まじく、爆炎の衝撃と高熱に翻弄されながらボロ雑巾のように転がっていく。

 女の影は片手を腰に当てると、やや楽しそうな声色で言う。


「今の反応は良いわね。魔法の選択が甘いけど。私は私の全力を出す事が出来ないけど、私が今出せる全力で鍛えてあげるわ。」

「にゃ…強いのにゃ。」

「当たり前よ。ただ、勘違いしないで欲しいのは…これはあくまでも経験の差ね。戦いはその一瞬一瞬に於ける判断が重要なのよ。貴女はその判断力が弱い。それは全て経験不足によるもの。だから、今ここで経験させてあげるわ。勿論…貴女が諦めなければだけど。」


 試すような挑発的な言葉。

 外野として観戦しているミリアからすると、それに込められた真意が気になるが…。どうやらブリティは深い所を気にせずに、やる気を鼓舞されたようで。


「負っけないのにゃ…!アタイは強くなってミリアとクルルを支えるのにゃ。そして、美味しい煮干しをご褒美で貰うのにゃ!アタイは、アタイは…煮干しの為にアンタを超えるのにゃ!」


 結局は煮干しが行動要因の主に置かれているらしいが…まぁやる気を出しているので、及第点なのだろう。

 女の影は炎鞭をしならせる。


「掛かって来なさい。」


 ひと言そう言うと、炎魔法を大量に出現させ…ブリティを蹂躙しにかかった。


「行くのにゃ!」


 圧倒的量の炎魔法へブリティは果敢に立ち向かう。


 そこから繰り広げられたのは…一方的な蹂躙だった。

 立ち向かっては吹き飛ばされ、立ち向かっては叩きつけられ、立ち向かっては地面を転がる。

 目を覆いたくなるブリティのやられっぷりである。


「オカシイノデス。…試練ナノデス。」


 ナビルンだけは何故か挙動不審だが、それを指摘する者はいなかった。それよりも、女の影の戦い方に全員が魅せられていたのだ。

 無駄がなく、攻める時は攻め、守る時は徹底的に守る。攻守の切り替えの判断が素晴らしく、大胆な攻め方や時折織り交ぜる変則的な攻撃はこれまで体験した事が無いものだったのだ。

 そして、吹き飛ばされまくっているブリティが未だに行動不能にならないのも…ひとつのポイントだった。

 女の影の言葉や行動から察するに…ブリティを鍛えているとしか見えなかった。

 それは試練ではなく、最早…鬼の特訓だった。

 しかし、何故古代遺跡を登る者を試練で脱落させるのではなく、試練という名の特訓で鍛え上げるのか。

 その意図は誰にも分からなかった。


「ぐ……にゃぁ!」


 ギャラリーが思考を巡らせる中、数え切れないくらいに吹き飛ばされたブリティは、女の影が放った炎鞭の打撃を腹部に受けながらも、気合いで反撃の攻撃を叩き込む事に成功していた。


「……いい反応と根性ね。」


 残念ながら反撃は物理壁に阻まれてしまったが、これまでやられっ放しだった状況を考えれば…成長した事が窺える。


「アタイは諦めないの…にゃ!」


 物理壁に阻まれたサンドクローが魔力光を放つ。

 すると、女の影の真下から砂の棘が出現して襲い掛かった。

 奇襲的な攻撃。これに対し女の影はバク宙の要領で後方に飛び退り、炎の矢を乱れ撃つ。それは連続発射された砂の棘と空中で相殺しあい、弾け飛んだ砂と熱気が一気に広がった。


「ちょっとはコツを掴めたのかしら?」


 パラパラと煙幕のように広がった砂が落ちる中、女の影は炎鞭を打ち鳴らす。

 打撃点から炎が迸り、熱気による風圧が砂の幕を押し広げていった。


「ボチボチにゃ。」


 視界がクリアになる中、満身創痍のブリティには余裕の表情を見る事が出来ない。根性で立っている…そんな様子を感じさせる立ち姿だった。

 女の影は炎鞭をユラユラ動かしながらブリティへ告げる。


「そろそろ良いでしょ。コツを掴んだら後は貴女次第よ。私の役目は殆ど終わりね。後は、私を倒して見せなさい。」

「…むっ?それは、もう最後って事にゃ?」

「えぇ。今の私が出来る最高の攻撃をさせてもらうわ。打ち破ってみなさい。出来なければ…貴女は試練に負ける事になるわね。」

「分かったにゃ。」


 両者の間に漂う空気が張り詰めていく。

 ブリティはサンドクローの左手を前にして右足を後ろに引き、あたかも格闘家のような体勢を取った。淡く光るサンドクロー。

 そして、女の影は炎鞭に炎を渦のように纏わせる。

 一瞬の静寂。

 それを破ったのは…ブリティだ。


「いっくにゃ!!」


 ドンっという音を鳴らし、砲弾のように女の影へ突き進む。


「来なさい…!」


 迎え撃つ女の影は、炎鞭を操り…上下左右全ての方向からブリティへ打撃を叩き込んだ。まるで炎鞭が無数に増えたかのような圧倒的質量と威力を兼ね備えた攻撃。

 通常であれば怯んでしまいそうな攻撃でありながら、ブリティは迷いなく迎撃に当たる。


「切り裂き、弾くにゃ!」


 サンドクローが縦横無尽に踊る。回転駒の様に高速でブリティの体が動き、サンドクローの動きに呼応した砂が襲い来る炎鞭を迎撃し始めた。

 炎鞭と砂の打撃音が連続で打ち鳴らされ、止めどなき一進一退の攻防が繰り広げられる。


「ここ……にゃぁ!」


 拮抗を破ったのはブリティだった。

 体の周りに砂を渦の様に纏い、魔法壁としての使い方を行ったブリティは炎鞭から放たれる嵐の様な打撃の中へ身を投げたのだ。

 砂の渦による防御を利用した特攻。上手くいくか…に見えたが、炎鞭の猛攻は一瞬で砂の渦を叩き壊してしまう。

 そして、ブリティを無数の打撃が襲うのだった。


「ぐにゃぁ…!」


 断末魔の叫び。

 誰しもがそう思った。ブリティは負けたのだと。

 だが違った。


「ぁぁぁあああ!負けないのにゃ!煮干しさん〜〜!」


 炎鞭の攻撃を受けながら、顔の前で腕を交差させて防御に徹するブリティは、煮干し愛を叫び交差させていた腕をブンっと振り下ろす。


「な…っ!?」


 驚きの声を上げたのは女の影だ。

 それもその筈。ブリティを中心に砂竜巻が発生したのだから。その猛威は炎鞭の攻撃を全て弾き、女の影を喰らう。

 そして、爆発するように広がり、無数の砂刃となって女の影に襲い掛かったのだった。


 砂刃の攻撃による余波で砂が舞う。

 その砂が次第に落ちて視界がクリアになってくると、肩で荒い息をするブリティの姿があった。


「にゃ……つ、疲れたのにゃ。」


 女の影は…見当たらない。ブリティの攻撃で消滅したのだろう。

 つまり…。


「これで試練突破…かしら?」


 クルルの言葉に合わせてミリアも頷く。

 女の影を倒したという事は、試練突破と捉えて良い筈だ。


「甘いわね。まだよ。」


 その声が聞こえると…地面から這うように出てきた影が女の形を作る。


「ま、まだ倒れないのにゃ…?」


 フラフラしながら青褪めるブリティ。今の攻撃で魔力切れ寸前なのだ。

 これ以上の戦闘継続は厳しかった。


「私は影なのよ?役目を果たさない限り消えるわけが無いじゃない。」


 と、女の影は何でもない事のように肩を竦めて言ってのける。

 再び始まるであろう猛攻を想像し、ブリティは気合でサンドクローを構えた。

 負けるわけにはいかないのだ。ここで負けてしまえば、ブリティは自身の信念を貫けない事になってしまう。

 覚悟を、サイドの覚悟を決める。


(アタイは…倒れたとしても…負けないのにゃっ!)


 それは、ブリティが生まれて初めて心に刻んだ…命を懸けた覚悟だった。

 本当に大切なもの。それを守るために、己を顧みない覚悟。


「じゃあ…。」


 女の影が炎鞭を構える。

 そして…。


「これで試練は終わりね。」


 事も無さげに試練の終わりを告げるのだった。


「…ふにゃ?」

「あ、さっきの攻撃で煮干しは全部粉々になっちゃったから、食べれないわよ。」

「……ふにゃっ!?」

「じゃあね。いつか、ちゃんと出逢えると良いわね。まぁ、私は知らないから、気づくかも分からないけど。」


 そして、女の影は薄れて消えていった。


「に、に、煮干し……煮干しさぁぁぁぁぁん!!!」


 最後に残ったのは、ブリティの悲痛な叫び。それだけだった。

結局煮干で終わる。それがブリティです。

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