5-2-6.対人戦トーナメント準々決勝
バルクの傷は然程酷くはなかった。場外に蹴り飛ばされてすぐにリリスが駆け寄り、治癒魔法を施している。
龍人と火乃花、遼の3人はバルクの様子を見に駆け寄っていた。
「リリス先生、バルクは大丈夫そうですか?」
リリスは龍人を見るとニコっと笑う。
「大丈夫よ。一番ダメージが大きかったのが、皆からの攻撃が同時に当たった時のダメージだったみたいなの。スイ君の最後の蹴りも、吹き飛ばすだけの蹴り方だったみたいだから、特に痣も出来てないし怪我もないわよ。最後の、首に刀を振り下ろしたのは、びっくりしちゃったけどね。」
龍人はスイの方を見ると拳を強く握り締める。スイはバルクの様子を見に来ることはなく、1人控室へ歩いていた。横にいる火乃花が呟く。
「あのスイって男、何を考えているのかしらね。基本無口だし、目も怖いし。」
「しかもクラスメイトを殺そうとしたもんね。」
火乃花の言葉に頷きながら、遼もスイを見ていた。「殺そうとしていた」という遼の表現が正しいのかは分からないが、刃を止める気のない本気の斬撃だったのは確実であると龍人も分析していた。そんな3人の様子を見たリリスは、口に手を当てクスっと笑う。
「あら、あなた達スイ君をちょっと誤解しちゃってるわ。彼は不器用なのよ。多分、ラルフが自分の刃を止めると確信してたから、全力で振り降ろしたんだと思うわ。」
「あぁ、あいつ、振り降ろす前に俺の方をチラッと見たからな。それは間違いないだろ。」
いつの間にかリリスの横にラルフが立っていた。3人を見るとニヤっと笑う。
「過ぎた事を心配している場合じゃないぞ。スイの実力は本物だ。油断してたら、一瞬で負けるぞ?」
そう言い残すと、ラルフは実況席へと転移していった。




