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Colony  作者: Scherz
第七章 古代文明と世界の理
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16-5-4.黄土と砂塵の都

 ミリア達一行は都会議事堂の地下1階に設置されている転送魔法陣を使い、黄土と砂塵の都へと移動する。

 転送に伴う光に包まれ、転送の終わりとともに再び視界から色が戻り始めると…目の前に広がっていたのは。


「砂…砂、砂にゃ!!砂しか無いにゃ!!いや、岩山もあるにゃ!!でもそれしか無いにゃ!!!」


 まるでこの世の終わりのように頭を抱えるブリティ。


「暑いにゃ!!」


 更に頭を抱えながら仰け反る。最早何をしたいのか分からない。ミリアとクルルは当然の如くスルーで、ザンもブリティの過剰な反応に慣れてきたのか、面白そうに見るだけで特に突っ込むことはしなかった。

 ブリティの1人劇場を横目に、砂漠を眺めていたミリアは…ふと思い出した事をザンへ問いかける。


「そう言えば…ザンは遺跡がどこにあるか知ってるんですよね?」

「はい。入手した資料によれば、黄土と砂塵の都の中心点にあるそうです。あ、それと私に敬語は使わなくて良いですよ。仲間として行動するのですから、話しやすい言葉遣いでお願いします。」

「え…じゃあ…分かりまし…分かったっ!クルル達と話すようにするねっ。」

「ありがとうございます。因みに、私はこの話し方が落ち着くので…このままの口調でいきますので悪しからず。」

「まっかせるにゃ!ブリティも友達のように話すのにゃ。」


 最初から変わらないだろう。というブリティへの突っ込みは置いておいて、3人の会話を見守っていたクルルが本題を切り出す。


「それじゃあこれからの方針を話しましょうか。」

「そうですね。主には砂漠での注意点と…遺跡への到達方法についてでよろしいですか?」

「流石は重光の秘書をしているだけのことはあるわね。」


 説明をするまでもなく自分が考える問題点と同じ内容を挙げたザンに首肯すると、クルルはミリアとブリティに説明するように話し始める。


「まず、この砂漠の注意点だけど…そもそも砂漠の注意点って分かるかしら?」


 フルフルと首を横に振るミリアとブリティ。


「まぁ、初めてなんだからそうよね。いい?砂漠は寒暖差が激しいの。地面が熱を溜め込めないのと、陽の光を遮るものがないのが主な理由ね。そして、大事なのは黄土と砂塵の都だから気を付けなければならない事…魔獣よ。」

「え、ここって魔獣がいるのっ?」


 魔獣がいるという事実に驚きを示したのはミリアだった。ブリティは目を爛々と輝かせてシャドーボクシングを始めているので、戦うのが今から楽しみなのだろう。


「そうよ。正確には把握されていないけれど、相当数の魔獣がいるとされているわ。」

「どうしよう…。私、魔獣と戦ったことないよ。」


 心配そうな様子のミリアだが、クルルは至っていつも通りだった。


「大丈夫よ。白金と紅葉の都にいる人々は殆どの人が戦った事が無いわ。寧ろ見たことがある人もいないんじゃないかしら。」

「そっか…そうだよねっ。でもクルルとザンが魔獣の事知ってるし何とかなるよね!」

「ん?」

「はて?」


 己を奮い立たせようと言ったミリアの言葉を聞いて、クルルとザンが首を傾げる。


「あら?私は魔獣を見た事…無いわよ?」

「私もありませんね。文献で読んだ事はありますが。」


 ミリアの動きが固まる。


「え…それじゃあ…ここにいる皆が魔獣と戦った事も見た事もないって事?」

「そうなるのにゃ!しかーし!安心するのにゃ!」


 カットインしてきたブリティが、自信満々に両腕を上に突き出した。


「なんとかなるのにゃ!」


 こうして、黄土と砂塵の都の冒険が始まった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「何も見えないにゃ。歩くの飽きたにゃ。煮干しラーメンを食べたいにゃ。」


 ブリティのやる気を削ぐ独り言を聞きながら、一行は黙々と砂漠を歩き続けていた。

 白金と紅葉の都から転送魔法陣で到着した北端の教会から南下する事1時間。

 風景は一切変わらない。

 緩やかな丘陵が延々と続き、進んでいる気が全くしない状況に全員が精神を摩耗し始めていた。


「そう言えば…さっき話が途中で終わっちゃったけど、古代遺跡にはどうやって行くの?」


 再びふと思い出したかのようにミリアが問いかける。

 「一先ずは南下しましょう。」というザンの言葉に従って歩き始めたのだが、流石にそれで正しいのか不安になったのだ。


「あぁ…ちゃんと説明していませんでしたね。」


 ザンはハンカチで額の汗を拭う。クルルの調達した魔道具のお陰で、砂漠の過酷な気温対策はバッチリだが…砂に足を取られながら丘陵の登り下りは地味に体力を消耗するのだ。


「私達が転送魔法陣で到着した北端の教会。そこから真っ直ぐ南下すれば古代遺跡がある筈です。黄土と砂塵の都の中心に位置する…と複数の文献で確認が取れています。」

「あら。それじゃあすぐ到着出来るのかしら。」

「それは…また別の話になるかもしれません。」


 矛盾したような話し方にブリティが首を傾げる。


「なんでにゃ?」

「それは、この砂漠が果てなく続く砂漠だからです。」

「もしや…ゴールの無い迷路なのにゃ?」

「絶妙な表現ですね。大方その通りとも言えます。過去に何度か調査隊が派遣されたのですが、どれだけ先へ進んでも何も見えなかったそうです。挙げ句の果てに道に迷い、魔獣に襲われて調査隊は壊滅…というのが結果ですね。」

「…そうなると、何かしらの妨害があると考えるのが妥当になるわね。」

「そうですね。それが人為的なものによるのか、それとも環境要因なのかは分かりませんが…どちらにせよ、進めば自ずと答えも見つかるでしょう。」

「そしたら進むにゃ!えいえいっおーっにゃっ!」


 元気よく拳を上に突き上げたブリティは、トトトトトッとなだらかな丘陵を駆け上り走り始めた。

 そして、丘陵の頂上付近まで辿り着いた所で、突然しゃがみこんで動かなくなったのだった。


「あれ?ブリティ…何やってるんだろ?」


 活動的なブリティがしゃがんで動かなくなるのは、煮干しを堪能している時くらいなものなので、こういうのは珍しかったりもする。

 ミリアは一応様子を見ようと、ブリティの方へ歩き始めた。

 クルルとザンはミリアの後ろを歩きながら、情報交換を続けている。特にブリティへ気を回していないのは、彼女がそういうテンションを持つ存在だと認識がもてているからだろう。


「ザンは魔獣については何か情報は持ってるのかしら?」

「そうですね…主要な魔獣のパワソリン、リザードマン辺りについては事前に特徴などや行動の傾向は調べています。」

「私と同じような感じね。私としては擬態するパワソリンには要注意だと思ってるわ。」

「仰る通りかと。砂漠にある黒い突起物には十分注意が必要ですね。」

「黒い突起物ってこれの事にゃ?」


 しゃがみこむブリティの足元には…たしかに黒い突起物があった。先端が鋭く尖っていて、棘のようである。


「砂漠にこんなのがあるの不思議にゃ。…はっ!もしかしたら黒いサボテンさんが埋まっているのかもしれないにゃ!掘り起こすにゃっ。窒息回避にゃっ!」


 クルルやザンが止める間もなくブリティは砂に穴を掘り始める。

 ドォン!

 低い音が響き、砂が宙に舞う。


「ふぎゃっ!?」


 衝撃でブリティも宙へ投げ出されていた。

 しかし、ミリア、クルル、ザンの3人はブリティへ意識を向けることが出来なかった。


 何故なら、目の前に巨大な蠍が現れていたのだから。


 ボスッ


 頭から地面に突っ込んだブリティが四肢をドタバタと動かす。


 黄土と砂塵の都における、初の魔獣戦が開幕しようとしていた。


「す、砂が口に入ってくるにゃっ…!」

仕事で夜勤に入ってる関係で執筆と修正がギリギリです。更新時間が遅くなってしまいました。


次回更新は2/6(水)を予定しています。

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