5-2-5.対人戦トーナメント準々決勝
バルクの拳を中心にリングが外側へ向けて一気に爆ぜる。それはまるで大地の津波の様。龍人とスイ、火乃花と遼は急激なその変化に対応しきる事が出来ずに巻き込まれ吹き飛ぶ。
ぱっと見では全員の不意を突いた絶妙な攻撃。更に連続して属性魔法を行使していけば誰か1人を失格に追い込む事が出来るはず。だが、属性【地】を使い始めのバルクに魔法の連撃を繰り出す事は難しく、結果としてラルフの放ったこの攻撃が、バルクの予想を超えた事態を引き起こす。
「邪魔すんなし!」
「横やり入れないで!」
「ちょっとは大人しくしててよ!」
「目障りだ」
4人がバルクに向けて攻撃魔法を放ったのだ。飛んで火にいる夏の虫…いや、ちょっと違うか。
「お、お、お!マジか!」
4方向から同時に放たれた攻撃を避ける事が出来ず、バルクは虚しくも直撃を受けてその場に崩れ落ちた。
「がっ…ぐ…。」
「ふん。弱い分際で邪魔をするからだ。消え去れ。」
いつの間にかバルクの横に立っていたスイは、日本刀をバルクの首に向けて振りかざした。白人が首筋へ向かって煌めく。
「おい!それはないだろ!」
龍人、遼、火乃花はスイの予想外の攻撃に初動が遅れてしまう。3人はスイの攻撃を阻止しようと魔法を放つ。…が、間に合わない。日本刀がバルクの首筋に吸い込まれていき触れる。
キィィィィン
バルクの首が落ちることはなかった。首と刃の間に1つの剣が差し込まれ、バルクを守っていた。その剣を握るのはラルフ。
「おいおい、スイ。ちょっとやり過ぎだな。」
スイが全力で振り降ろした日本刀を受け止めるラルフの剣はビクともしない。
「…ふん。まだ試合は終わってない。」
スイは剣を引くと同時に身を屈め、右脚を軸に時計回りに回転をしながらバルクへ蹴りをかました。脇腹を抉る衝撃にバルクは吹き飛び、リング外へと落ちる。
「ったく、容赦ねぇなお前は。そーゆー事してると、いつか自分に返ってくるぞ。」
ラルフは頭を掻きながら、マイクを取り出した。
「バルクが場外により失格!30分後に準決勝を行うぞ~!」
こうして、バトルロイヤルの脱落者がバルクで決定となった。




