5-2-4.対人戦トーナメント準々決勝
限られた空間での5人だけのサバイバルバトル。
龍人は目眩ましをして誰かを狙うと、自身が後ろを取られる可能性があると判断して、朝イチでストックした魔法陣から風魔法を発動する魔法陣を展開し、発動する。隙を突く為の攻撃では無く、正面からの純粋な攻撃。先ずは相手の出方を伺うことを選択した事になる。圧縮された爆風が前方広範囲に吹き荒れ、他の4人へと襲いかかる。
バルクは右手を地面に固定して耐え、風が止むと石の塊を周囲へと吹き飛ばした。龍人に習って範囲攻撃を選んだのだろう。この石の塊は意図せずして龍人の風との連携を生んだ。
その被害者は遼だ。龍人の風に飛ばされてリング端でなんとか耐えた遼だが、石の塊をモロに受けて更に横へ吹っ飛んでしまう。重力を操って上手くリング上に着地した遼は、口元を拭うと苦い顔をした。
「くそっ。範囲攻撃ばっかじゃん。隠れる場所もないし…距離も取りにくいよね。…このサバイバル不利かも。」
一方、火乃花は焔の鞭で体を固定して龍人の風をやり過ごし、バルクの攻撃も簡単に払い落としていた。
そして鞭を刃に変形させると、石の塊に飛ばされて着地した遼に向けて飛ばす。
(遼君には悪いけど、ここは確実に1人を落とす!)
火乃花の攻撃に気付いた遼は周りの地面に重力弾を撃ち込む。着弾した周辺の重力が強くなり、焔の刃はそれに従い急降下し、遼へ届く前に地面へと落ちた。
思っていたよりも効果力高い遼の重力魔法に火乃花は素直に感心する。
(やるわね…!)
そして、火乃花と遼の動きに気を取られていた龍人の後ろに突然スイが現れた。
「喰らえ。」
冷たい目線で龍人を睨みつけると、日本刀を足に向けて振り抜いた。殺気を感じて振り向いた龍人は、バク転をして白刃の煌めきを紙一重の所で避ける。距離を取ってスイを睨み付けると、龍人の居た所には氷の塊が出現していた。
「あっぶね!何で俺を狙うし!?」
「ふん。お前か遼ならどっちでもイイ。お前達には負けない。」
スイが日本刀を振ると、その軌跡に合わせて氷の刃が龍人へと飛び、龍人も応戦していく。
龍人とスイ。火乃花と遼。この構図にバルクは偶然にも取り残されていた。
(おいおい。俺は完全に無視かよ!)
そんなバルクの気持ちを知ってか知らずしてか、ラルフの実況が響く。
「さてさて、全員がこの後に残られると、強敵だと判断した相手と戦い始めたな!そして!取り残されたバルク!ざまーねぇな!」
「おい!そんな実況あるか!」
思わず実況席へと突っ込みを入れるが、悲しい事にラルフからの反応は無い。まぁ、わざと無視をしているのは間違いないだろう。生徒相手にそういった事を平気でするのがラルフである。
(このまま何もしなきゃ、残れるかもだが、それじゃぁ俺のプライドが許さねぇ。)
バルクはリングの中央へ移動すると、たっぷりと魔力を拳へ集中させ、リングを打ち抜いた。




