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Colony  作者: Scherz
第七章 古代文明と世界の理
944/994

16-3-5.其れ

 ギギギ…と関節(骨?)を鳴らしながら起き上がる骸骨。怒りの感情が無いのか、タキシードをパンパンとはたき、近くに落ちていたシルクハットを拾うと頭に乗せて位置を調整している。

 そして、髑髏の双眸(空洞)をブリティに向けた。


「な、な、何にゃ!?そんな目玉の無い眼を向けられても怖く無いにゃ!」


 仁王立ちポーズで強がるブリティだが、足がガクガク震えていて…ビビっているのが丸分かりである。


「ミリア大丈夫かにゃ!?」


 ビビりながらも…ブリティは骸骨から眼をそらさずにミリアの無事を問う。


「う…うん。油断しちゃったかな。くうぅ…。ちょっと厳しいね。」


 そう言ってミリアが目線を向けたのは、木の破片が突き刺さった左肩だ。


「…どうするにゃ?」

「やるしかない…と思うな。」

「絶対にクルルに怒られるにゃ…。」

「でも、ここで死んじゃったら元も子もないから。」

「分かったにゃ。じゃあアタイが1発かましてくるにゃ!」


 そう言ったブリティは果敢に髑髏へ向けて駆け出した。

 先述した通り、亜人のブリティは身体能力が人間に比べて非常に高い。それこそ通常の戦闘移動が無詠唱魔法を使っているのでは…と疑いたくなるほどに。

 故に、本気を出したブリティの動きは『目に止まらない速度』という文言がぴったり当てはまる。

 一瞬で骸骨へ肉迫し、両手に装備した鈍い光を放つクローが左右から骸骨へ叩き込まれる。


「アタイが本気を出したら怖いにゃ!骸骨も怖いにゃ!」


 …と、若干ヘタレ気味の台詞を叫んではいるが、その動きそのものは俊速。

 そして、迎え撃つ骸骨も俊速だった。

 瞬く間にブリティと骸骨の間にクローと骨の指先の衝突が生み出す光の輪が多数発生する。

 ブリティの大振りの一撃と骸骨の旋風脚が相殺し合い、2人は距離をとって着地した。


「まだまだにゃ!アタイのサンドクローの力をみっちり味あわせるにゃ!」


 ブリティの両手に装着されたサンドクローに魔力の光が灯る。そして、次の瞬間…後ろに引き絞ったブリティの両腕が左右から骸骨に向けて振るわれ、それに合わせて地面が爆ぜた。そして、爆ぜた地面から砂の爪が出現してブリティの腕の動きに合わせて骸骨に襲いかかる。

 流石にこの攻撃に動揺したのか、骸骨は反応する事が出来ない。結果、両サイドから巨大質量の砂の爪が骸骨を押し潰した。


「にゃはははは!!アタイの圧倒的勝利にゃ!」


 悪党地味たポーズで高笑いするブリティ。

 骸骨を押し潰した砂の爪はギッチリと塊になって動かない。圧死…この言葉がピッタリな骸骨の最後だった。


「にゃははは………にゃ?」


 しかしながら、異変を感じたブリティの高笑いは疑問の「にゃ」へと変わってしまう。

 バァン!

 そんな音と共に砂が爆ぜる。そして…ドォン!と、ロケットのように骸骨がブリティへ向けて飛び出してきた。


「ま、マズイにゃ!」


 完全に油断しきっていたブリティは、反応が遅れてしまう。

 骸骨の鋭利な指先がブリティの脇腹へ伸び…。虹色の光がブリティと骸骨の間に出現したかと思うと、

 キィン!

 という甲高い音を響かせて骸骨の指は弾かれた。

 骸骨の前に現れたのはミリアだ。負傷していたはずの左肩から傷が消えていた。骸骨の指先を弾いたミリアは、鋭い目付きで骸骨の目があったでろう真っ黒な空洞を睨み付ける。


「もう、好きにはさせないよ!」


 ミリアの細剣が閃く。纏う炎が荒れ狂い、閃光となって牙を剥く。

 一瞬だった。1秒に満たない間に10発以上の刺突を叩き込まれた骸骨は、砕かれた骨を散りばめながら床を転がっていく。


「ブリティ大丈夫!?」

「た、助かったにゃ。やっぱり骸骨みたいなホラーの世界に住んでいる生き物に逆らうのは、人生の終わりにゃ。」

「よしっ。大丈夫だね!」

「うにゃ!もちろんにゃ!ここから反撃するにゃ!」


 頷き合ったミリアとブリティは構えを取る。いつ骸骨が起き上がって反撃をしてきても対処が出来るように、今度は気を抜いたりはしない。

 しかし…。骸骨は動かなかった。

 待てど待てど動かない。死んだふりという雰囲気もなく(骸骨の時点で死んでいるという追求は無粋)…ただ骸骨が転がっているかのような…。


 たっぷり待つ事5分後。


 遂にミリアとブリティは構え解除して骸骨に近寄る事にした。

 勿論、いつ襲われても良いように…という警戒はそのままに。


「…動かないにゃ。」

「ホントだね。ただの骸骨って感じ。」


 おっかなびっくり、そして興味津々に骸骨をツンツンするブリティ。

 不思議な事に骸骨は一切動かない。人形のようにつっつかれている。


「もしかしたら…誰かが操ってたのかもね。」

「そうだとしたらかなりの強者にゃ。操っている骸骨があの強さっていうのは…反則にゃ。」

「そうだよね…。ブリティがサンドクローの力で潰したのに、普通に出て来たもんね。…ん?」


 ブリティが砂を操った事で壊れた床を見たミリアの目線が止まる。


「どうしたにゃ?」

「えっと…なんか…階段があるよ?」

「あれはブリティは作ってないにゃよ?」


 再びトンチンカンな返事をするブリティを置いておいて、ミリアは用心深く壊れた床から見える階段に歩み寄る。


「うにゃ?もう骸骨は良いかにゃ?」


 もう少しツンツンしたかったのか、ブリティは骸骨とミリアの間で彷徨わせた後にミリアを追いかける。


「この階段…どこに続いてるんだろ?」

「きっと地下にゃ!」


 ミリアの肩に顎を乗せながら一緒に覗き込んだブリティが聡明な回答をする。

 目の前にあるのは下り階段。そして今いるのは1階。誰がどう考えても間違いようのない答え。

 こんなブリティの応答に慣れているミリアは特に突っ込むこともなく、階段の下を凝視していた。


「…ブリティ。」

「なににゃ?」

「なんかね、またこの階段の下から嫌な気配がするんだ。」

「…うにゃ!?また呪われるかにゃ?」


 いや。そもそもまだ呪われていない。…はず。


「う〜ん…それは分からないけど、何かがあると思う。……行こう!」

「無理にゃ!これ以上はアタイの心が押し潰されるにゃ!」

「ブリティ。子供達のためでしょっ?」

「う…それを言われたら断れないにゃ。ミリアは悪代官様よりも悪代官様の資質を持ったネゴシエイターにゃ。」

「ありがとっ。じゃぁ…行くよ?」

「う、うにゃ!」


 そして、ミリアとブリティは恐る恐る階段を下に進み始める。

 階段は長く…なんてことは無く、通常の1階分程度の長さで終わっていた。その先にあるドアを開けると…、そこはこじんまりした部屋だった。

 部屋の中央には台座のようなものが置かれ、その上には白い球体が乗っている。

 その球体が怪しかった。ミリアもブリティも嫌な気配を感じて眉を顰める。なんというか…周りから邪なるものを引き寄せている感覚。


「あの白いのが怪しいにゃ。」

「うん。…あれが幽霊を引き寄せてるんじゃないかな?」

「はっ!?そしたらアレを壊せば万事解決にゃ!よしっ!アタイが一撃必殺するにゃ!」


 腕をぐるぐる回しながらブリティは白い球体に近づく。…と、ここで再び異変が起きる。白い球体の前の空間が一瞬ブレたのだ。


「な、何にゃ!?」


 驚きビビるブリティが足を止めると…其れは現れた。

 其れは明確な形を持たない存在だった。霧のような靄のようなものが集まって人型を形成している。故に、目も鼻も口も無い。

 しかし、ミリアは其れが自分を注視していると感じていた。ブリティも同様の事を感じ取ったらしく…。


「お、お、おおお前は何者にゃ!?」


 と、ミリアへの進路を遮るようにして其れへ指を突き付けた。


「…………………………あるカ?」


 そして、其れは両腕をだらりと下げた格好で言葉を発した。

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