5-2-3.対人戦トーナメント準々決勝
翌昼、グラウンドのリング中央には準々決勝進出者達が集まっていた。そのメンバーは以下の通り。
高嶺龍人
藤崎遼
霧崎火乃花
バルク=フィレイア
ヒョウ=スイ
この5名が、準々決勝に駒を進めた1年生上位クラスの面々だ。観客席は、前日に引き続き満席である。上級生も沢山見学に来ているので、わざわざ授業を抜け出したのか…もしくは授業をわざわざ休みにしたのだろう。暇…と言ってしまえばそれまでだが、新入生がどの程度の実力を有しているのかを確認するいい機会だからこそ…かも知れない。
腕を組んだり、空をボケッと見上げながらリング中央で待つ5人の下に、何故か顰めっ面をしたラルフがやって来た。その手にはマイクを持っている。
「さて、皆さん!集まってくれてありがとな!これから準々決勝を行うぞ。と、その前に、問題があるんだ。今現在、5人が勝ち残ってる。円滑にトーナメントをするには復活戦で8人にするっきゃないんだけど…面倒臭いんだよなー。」
顰めっ面の理由は面倒臭いからなのだろう。ラルフらしい発言に、火乃花は額に手を当てて盛大に溜息をついた。
「はぁー…!またお決まりの面倒臭いですか!?」
観客達も無言で顔を縦に振る。どうやら街立魔法学院の生徒の中では、同じような認識がラルフに対して為されているらしい。
龍人はラルフの口がいつものニヤリ笑いを形作った様に見えた。ラルフの斜め後ろに立っているので、正確な事は言えないが、恐らく、多分、確実に口角が上に上がっている。
そして、そのニヤリとした笑みを浮かべた通りの通りのセリフが飛び出した。
「ってなわけで!これから脱落者1人のサバイバルをする!ルールは簡単だ。5人同時にリング上でバトルをして、リング外の地面や建物等に触れた奴が負けだ!リング外の物を投げつけて触れても失格にはならないぞ。そんなトンチはお断りだ!ははっ。」
ラルフ以外は勿論…誰も笑わない。
「つまんなかったか…。俺もまだまだか。じゃ、そんな訳で今から試合スタート!」
1人で勝手に反省して勝手に解決したラルフは、いきなり試合再開を告げると…そのまま転移をしてしまった。
一瞬、静寂が会場を支配する。そのすぐ後、リング上の5人はほぼ同じタイミングでハッとした顔をすると、後方に跳び、リングの端に立ち、構えた。そう、試合はいきなりだったが始まっているのだ。
惚けていた観客達も、その動きを合図に声援を飛ばし始める。
「たーかみねっ!たーかみねっ!」
「藤崎くーん!こっち向いてぇー!」
「火乃花様ー!素敵ですー!」
「イケイケバルク!筋肉の力を証明だ!はっするー!!」
「スイ様ー!!きゃークールーーー!!」
声援から察するに、それぞれがそれぞれの人気を博しているようだ。
全員が睨み合ってイマイチ動き出しづらい状況を打開するため、龍人はポッケからコインを取り出した。
「さっきの合図じゃ戦いにくいから、このコインが地面に落ちたらバトルスタートにしようぜ。」
「お〜い龍人!先生を馬鹿にすると、成績下げるぞ!」
ラルフの声がスピーカー越しに響くが、龍人は無視をした。ここでラルフの言葉に反応していては、コインを出した意味がない。
コインを親指の上に乗っけると強く弾く。コインはクルクル回転をしながら落ちていく。
地面まで
1m
50cm
25cm
10cm
1cm
1mm
キィン!
金属音が響くのと同時に全員が動き出した。