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Colony  作者: Scherz
第六章 終わりと始まり
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1-8-11.魔法街の壊滅

 魔法街を覆う巨大立体型魔法陣。この現象が魔法街に現れるのは2度目。

 1度目は魔法街が強制的に統一された時に発動した立体型魔法陣の時である。

 そして今回…。空に幻想的な輝きを放つ立体型魔法陣は、見る者達に様々な感情を抱かせる。

 歓喜、恐怖、闘志、渇望、逃避、狂気、興奮、絶望。

 この魔法陣が何をもたらすのか。地上から見上げる者達は想像をするしかなかった。


 中央区で発生していた全ての戦闘が中断し、1人の魔法使いが空に浮かぶ魔法陣に異物を見つけ出す。


「…何かあるぞ。」


 人々は目は凝らす。中央区の空に浮かんだ其れは…人だった。1人の人が悠然と浮かび、眼下にいる者達全てを見下ろしている。

 …何だろうか。遠過ぎて表情は見えないはずなのに、そこにいる人物が愉悦の表情を浮かべている事が伝わってきた。


「やぁ☆この魔法陣が何をもたらすのかが気になってるよねっ?」


 やけに響く声が中央区全域に降り注いだ。拡声魔法を使っているのだろう。大きすぎもせず、小さすぎもしない音量で全員の耳元に届いていた。


「先ずは自己紹介をさせて貰うよ?俺は天地のメンバーだ☆」


 ざわめきが広がる。

 天地…今この魔法街戦争を引き起こした団体のメンバーが、こうしてわざわざ姿を現わす理由が分からないのだ。既に各区陣営は天地のメンバーに攻撃を仕掛けられていて、今まさに戦闘の最中だったはず。


「でね、その天地ってゆー団体のリーダーをしてるんだよね☆つまりだ、今回の戦争は全て俺の作戦通りってなわけ。でだ、俺の名前はヘヴン=シュタイナー。」


 ヘヴンを見上げる者達の間に別のざわめきが広がる。敵の親玉がここで姿を現わすとは夢にも思わなかったのだ。


「俺の目的はさ、単純なんだよね☆この世界の全てを破壊して…いや、破壊する事さ。」


 途端、空から強烈な重圧がのし掛かった。

 ヘヴンの真紅の瞳が爛々と輝く。見えないはずなのに見ていると認識してしまう。

 見る者達に畏怖の感情を感じさせながら、ヘヴンはそれまでの明るいのとはうって変わった口調で語り始めた。


「この世界は腐ってる。どんなに優しい心の持ち主がいたとしても、人々はその優しさに気付かない。触れていても気付かない。考えれば分かる筈なのにね。例え優しい人が命を投げ打ったとしても、失ったものの責任の所在が分からなければ、分かりやすいものに責任をなすり付ける。それが優しい人でも容赦なくだ。そんな世の中に存在意義なんて存在しない。だから全てを消す必要があるんだ。互いの命を、互いの尊厳を、互いの権利を、互いの義務を、互いの命を、責務を友情を愛を喜びを楽しみを悲しみを怒りを憎しみを涙を笑顔を…全てを尊重出来ない限り人は豊かにはなれない。人は豊かになるべきだ。互いを豊かにすべきだ。その為に不必要なものは全てが排除されるべきだ。俺はこの世界に絶望している。こんな世界…消えてしまえば良いんだよ。」


 両手を広げ、まるで教祖のように演説をする姿は…正しい事を言っているかのような錯覚を覚えさせるオーラを放っていた。


「何を下らないことを言っている。」


 そこに1人の男が割り込んだ。白髪をなびかせ、全身に着込んだ黒い鎧を輝かせるのは魔聖の1人…バーフェンス=ダークだ。

 魔法街戦争が本格化してから一切姿を現さなかったバーフェンスは、顔を怒りに歪めながら巨大な闇の刃を連射する。


「お前みたいな異物がいるからこの世界が不幸になるのだろう!?」


 闇刃は恐ろしいほどの質量を誇って容赦なくヘヴンに突き刺さった。そして、着弾と同時に生み出すエネルギーがブラックホールのような爆発を引き起こす。

 一般人なら即死の攻撃。

 だが、爆発が起きて10秒程だろうか。不意に内側から光が漏れたかと思うと、闇のエネルギーは押し広げられるようにして霧散してしまう。


「いい攻撃だね。流石は魔法街で魔聖という称号を得るだけの事はあるよ。けれど…足りない。俺を倒すには足りなすぎる。」


 闇を押し広げた中から姿を現わすヘヴンは、攻撃を受ける前と何ら変わらない姿をしていた。


「くそっ。化け物め。」

「ははっ。化け物か。いいね。確かに僕は化け物だろう。だけどね、世界を大きく変えるためには化け物が現れなければ駄目なんだよ。だから、その為に俺はここにいるんだ。」


 ヘヴンが伸ばした人差し指から1発の魔力弾が放たれる。


「ふん。こんな子供騙しで……………!?」


 馬鹿にされたと判断したバーフェンスが魔力弾を抜き手で払うと…超威力の爆発が巻き起こった。

 魔力の渦が、爆発が空間を席巻していく。青白い光が辺りを照らす中、吹き飛ばされたバーフェンスが垂直に地面へ落下する。


「他愛も無いね。まぁ余興としてはこれくらいで十分かな。じゃあ、魔法街の皆さん。生き残る実力と運を持ってる人だけ、もう1度会えるとよいね。」


 右手を上げたヘヴンの指がパチンと鳴らされた。


 魔法陣に変化が起きる。普通の輝きから虹色の輝きへ変わったのだ。


「神様……。」


 誰かが小さく呟いた。

 魔法街の者達が見たのは空から降り注ぐ大量の隕石群。その数は空一面を覆い尽くすほどで。


「これは…古代魔法のメテオストームなのである…。……総員、全ての魔力を物理障壁と魔法障壁に注ぐのである!」


 これを見たヘヴィーが南区陣営にいる敵味方を問わない全ての人々に叫び掛ける。

 この時、魔法街にいる半獣人以外の者達は一斉に手を空へ向けていた。


 防御障壁が次々と空に向けて展開されていく。それはまるで一種の芸術であるかのようだった。


 皮肉にも、これが初めて魔法街に住む者達の心が1つになり、共に同じ目的を達する為に取った行動でもある。


 そして…。


 魔法街は壊滅した。

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