5-2-1.対人戦トーナメント準々決勝
その後、3回戦が全て終了した所で、次の試合のアナウンスが入る。1日で全ての試合を行うのかと思っていたが、4回戦…準々決勝は翌日以降に行うらしい。
龍人と遼は早々にグラウンドを後にすると学食へ向かった。それぞれ食べたいものを選んで席に着く。因みに龍人は辛味噌つけ麺、遼はトンカツだ。
話題は自然と明日の試合に関するものになっていた。
「なぁ遼、明日戦いたくない相手とかいる?」
「んー、俺の次に試合してたスイ=ヒョウかなー。今まで戦った事が無いしね。それに、近距離専門ってのが厄介だよね。」
「なんで?近付かれない様に離れながら連射すれば、大丈夫じゃない?」
「んー、基本はそうなんだけどさ。入り込まれたら、あれは逃げられないよ。逃げれたとしても被弾は免れないと思う。」
「そんなもんかねぇ。ってかこのラーメン辛いな。激旨辛だわ。」
「…また急に話題を変えるよね。いつもの事だから、流石に慣れたけどさ。それにしても龍人ってホント辛いの好きだよね。」
「辛いの旨いじゃん!こればっかしは止められないわ。もはや中毒だね。」
「それ、自分で言う?」
「おうよ。」
額の汗を拭きながら何となく入り口を見た龍人は、とある人物を見つけた。
「あ、スイ=ヒョウだ。」
スイと呼ばれた男は黒髪の長髪を後ろで1本に纏めている。筋肉質な身体つきをしていて、顔は細目にやや強面。黒を基調とし、青のラインが入った着流しを身に纏うその姿は、ぱっと見ではヤクザとも言えなくもない。もしくは、時代遅れの侍…だろうか。
スイは誰とも話す事も無く、料理を受け取ると空いてる席に座って食事を始めた。
「なんかさ、一匹狼な感じなんだね。」
スイを見ていた龍人の感想に遼が頷く。
「ちょっと近寄り難い雰囲気はあるよね。」
「話しかけてみる?」
「いや、遠慮しとく。怖いし。」
「だよなー。」
2人はクスっと笑うと、食器を片付けに立ち上がる。
食器を厨房に返して、楽しそうに話しながら食堂を出て行く2人をスイは箸を黙々と動かしながら、目線だけで追っていた。龍人と遼の話が聞こていたわけではない。何かしらの感情があるのかも不明瞭な、落ち着いた目で見ていた。まるで、目の前を通り過ぎる人を何となく視線で追ってしまうかのような、だがそれにしては明らかに何かしらの感情が籠っている目で。
龍人と遼が食堂を出た所で、目線は再びテーブルの上の食事へと向けられた。




