5-1-14.対人戦トーナメント
次の試合は遼の順番だった。相手は普通…と言っては失礼だが、取り立てて目立つこともない上位クラスで真ん中程度の実力を有する男子生徒だ。
試合開始と同時に遼の怒涛の銃撃が相手を襲う。とは言え、単発式の銃による連写だ。避けるのは然程難しくはない。
男子生徒は銃弾を全て躱し切ったと思い近接攻撃を仕掛ける。遼が銃を使う以上、近接攻撃を防ぐのは防御系の結界を使う以外に手段はない。近距離戦闘に持ち込めば勝機が見出せるという判断による行動だった。
この判断は決して間違ってはいない。だが、それは《遼が遠距離用の攻撃しか使えない》という前提に基づくものだ。
そして、銃使いである遼が近距離が苦手であるという自身の弱点をそのままにしておく訳が無かった。
接近する男子生徒に対して遼は新たに習得した弾数増加の魔法を使用。引鉄を引くと、大量の魔弾が放たれる。所謂《散弾》である。
前方広範囲に広がるようにして放たれた魔弾の壁が襲う。突然の範囲攻撃に男子生徒は慌てて防御壁を前面に多重展開をして堪え切る。
防御に回ったことで男子生徒の動きが止まった間に、遼は相手の背後へと回り込みつつ魔力をチャージしていた。
「これで終わらせるよ!」
双銃の先に巨大な重力球が生成される。そして、それは放たれた。あまり早い速度では無いが、確実に相手へと向かっていく。
男子生徒は何とか魔弾の壁を防ぎ切った所で、ホッとして油断が生じてしまっていた。背後から感じる魔力に振り返ると、そこには重力球が迫っていた。もし、すぐに振り返っていれば回避という選択肢もあったはずだが、振り返ったタイミングの重力球との彼我の距離的に難しかった。男子生徒は咄嗟に風の球を生成し放つ。
2つの球がぶつかる。風が重力球を切り裂かんと暴れ狂うが、その風は全て重力球へと呑み込まれてしむう。
そして、風球を呑み込んだ事でその進路を阻む物が無くなった重力球は相手へと直撃する。重力の効果範囲が直撃地点を中心に拡大。地面に向けた強大な重力場を形成した。
重力場が消えると、そこには身体の半分が地面にめり込んだ対戦相手の姿があった。どう見ても戦闘不能である。
斯くして、遼の勝利が決まった。




