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Colony  作者: Scherz
第六章 終わりと始まり
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15-2-13.魔法街戦争 天地の登場

 ルフトとミラージュが文字通り風のように中央区支部へ飛び込んでいったのを見送ったレイラとララは、無言で顔を見合わせていた。

 余りにも派手すぎる突っ込み方で、本当にこの選択が正しかったのだろうか?という考えが2人の頭の中には渦巻いていた。まぁ、後の祭りではあるが。


「レイラさん。私達は周辺の警戒をしながらこの場所を守る事に集中しよう。」

「そうだね。私とララさんが居れば…きっと大丈夫!」


 両手の拳をギュッと握りしめながら、自分自身に言い聞かせるようにして頷くレイラ。そんな彼女の様子を見ながらも、ララは静かに他の区がある方向へ意識を向けていた。ここから先は何が起きるか分からない。ルフトとミラージュが一時的に前線から離れた事を察知されれば、他区から熾烈な攻撃を受ける可能性も否めないからだ。

 長く、そして逃げる事が出来ない時間が始まる。


 ルフトとミラージュが離れてから1時間が経過した。今の所は何も起きていない。

 逆に何も起きなさすぎて不気味…と表現しても良い位に何も起きていなかった。それまで飛び交っていた攻撃魔法すらも、いつの間にか止まっていた。


「なんだか、本当に戦争中なのかなって思うね。」

「レイラさん。そうやって気を緩めていると、いざ何かが起きた時に対処できないよ?」

「あ、ごめん。私…すごい不安で。」

「あ、そうなんだね。私の方こそごめんね。」

「ううん。いいの。…私ね、1つ心配な事があるんだ。」

「何?」

「それが…。」


 異変が起きたのはこの時である。

 空から複数の転移光が中央区支部の屋上に降り注いだ。その光の中から姿を現したのは…。

 ムキムキの肉体を誇る体にスーツをビシッと着こなし、グラサンを掛けた男。

 真っ黒で緑の曲線が彫られた仮面を着け、真っ黒のローブで全身を包み込んだ者。

 白衣を身に纏った、一般的な体型をした特徴のない男。

 銀の長髪を揺らす高身長の男。

 メガネを掛けた優等生のような雰囲気を纏う男。

 額に赤バンダナが垂直に立った赤髪を目立たせる好青年。

 黒髪短髪を右に流した、唇が少し厚めで、顔の彫りが少しだけ深い男。

 ボンキュッボンのナイスバディを揺らし、背中から羽が生えたようなドレスを身に纏う女。

 全身真っ黒で細身ながら、胸だけは巨乳の存在感を強調している女。

 スーツを着こなし、前髪が1番長いという不思議な髪型をかき上げながら肩を揺らす男。

 そして、銀髪のフェザーウルフを風に揺らす、細身の高身長という青年。真紅の双眸が見る者の視線を釘付けにする、底を感じさせない笑みを浮かべる男。

 …総勢11名の人物だった。


「あの人達…なんだろう。」


 突如現れた集団に警戒の眼差しを送りながら、ララは後ろの部隊に警戒態勢を取るように伝える。


「……レイラさん?」


 反応が無い事を疑問に思ったララが振り返ると、顔面を蒼白にして立つレイラが居た。両手を胸の前で組んで震える姿は、恐怖という感情に心が支配されかけている事を物語っていた。


「…あの人達、天地に所属してる人達…だよ。」

「えっ。」


 レイラの口から語られた衝撃の言葉に、ララは体を硬直させる。

 天地という星をまたにかけて活動する組織は一部の者達の間では有名な存在だ。魔法街の為に任務をこなす魔法使い…魔導師が集められた魔導師団に所属するララも、天地の存在は勿論知っている。

 龍人、遼、火乃花、レイラが所属する第8魔導師団が天地と度々衝突し、その度に苦渋を舐めさせられている事も知っていた。第8魔導師団の面々の実力はララが所属する第7魔導師団と比べても遜色が無い。その彼らが敵わない相手という事は…天地に所属する者達の実力は下手をすれば魔法街の魔聖に匹敵するものであるという事。

 その天地のメンバーが11人同時に現れたのだ。

 その脅威レベルはひと言で表すには難しく、最早災害レベルといっても過言ではないだろう。

 彼らの出現に北区、東区、行政区の勢力も警戒しているのか、一切の攻撃行動が止まっていた。


「…レイラさん、天地の人達の能力とか知ってる?」


 ララの質問は的確だった。今最も必要なのは情報。天地のメンバー其々がどのような力を有しているのかが分かるだけで、対策の立て方も大きく変わるのだ。


「私も全員を知ってる訳じゃないんだけど…。白衣を着てる人がサタナスって言って、魔力を吸い取る能力があるよ。銀髪の人がセフ…だったかな。龍人君から聞いた話だと氷を使うって言ってたと思う。その横に立ってる黒尽くめの女の人はユウコで、影と鉄を使う人。仮面をつけた人が機械街にいたクレジって人で、振動を操るの…凄く強い人。髪の毛が黒くて短い人も機会街にいたビスト君で、本気を出すと髪の毛の色が金色になるの。確か…雷を使ってたと思うな。スタイルが良い黒いドレスを着た人がフェラムさんで…火乃花さんがあの人に操られたから、そういう能力があるんだと思う。」

「結構知ってるね。レイラさんありがとう。あの前髪が長くて後ろ髪が短い人は…ラーバル=クリプトンだったと思うよ。魔商庁の元長官だったかな…。」


 今このタイミングで現れた彼らの目的が何なのか。それが1番重要なポイントである。


(それにしても…天地って本当に星とか関係ない団体なんだね。)


 現れた天地のメンバーは魔法街や機械街で有名な者達ばかりであった。

 そして、レイラが知っている者達は…その実力はピカイチである。その彼らが同時に現れるなど、もはや悪夢でしかなかった。

 レイラの視線の先でフェザーウルフの青年が右手をゆっくりあげ、パチンと指を鳴らすと同時に…天地のメンバー達が一斉に動き出す。


 さて、時間は天地が中央区支部の上に現れるほんの少しだけ前に遡る。

 場所は中央区支部の玄関。役者は…ルフトとルーチェだ。空気を操って高速で中央区支部に突っ込んだ2人は、特に誰の妨害を受けることも無く内部への侵入に成功していた。


「…ルフトちゃん。嫌な予感がビシビシくるんだよ。」

「そうだね…。これは……何がいるんだろう?」


 中央区支部内の様子をひと言で表すと、異世界が1番しっくりくる表現だった。人ではない何か…そして、魔獣でもない何かが潜んでいる感覚。

 ふと、視界の端を何かが横切り、そちらを見ると…。


「…龍人?」


 曲がり角を曲がるところまでしか見えなかったが…今の後姿は紛れもなく龍人だった。

 だが、ここに龍人がいるという事にルフトは違和感を覚えざるを得ない。何故なら、龍人は遼と共に北区へ潜入しているはずなのだ。しかもここ数日は音信不通の状態が続いている。

 その龍人が何の連絡もなしに主戦場のど真ん中である中央区支部に潜んでいる必要性が無かった。あるとしたら、他人の空似か…罠か。


「ルフトちゃん?龍人ちゃんがここにいるはずないんだよっ?」


 どうやらミラージュも同じ考えらしく、「龍人…?」と呟いたルフトをみて首を傾げていた。


「いや、見間違いだろ。…それより、俺たちの他に誰かがこの建物内に居るみたいだね。へへっ。ちっとばかし楽しくなってきたね。」

「…でた。戦闘狂のルフトちゃん。」

「そんな失礼なっ!」

「大丈夫だよっ。ルフトちゃんが戦闘狂なのはみ〜んなが知ってる事実なんだもんね!」

「ぐぬぬ…!」


 コントのようなやり取りを続ける2人だが、そんな事をしながらも周囲の状況はしっかりと把握していた。

 建物内には不思議な魔力が流れ…渦巻いていた。それはルフトとミラージュが今まで感じたことのないような異質な魔力。

 何よりも不気味なのは、その魔力の発生源が全くもって不明瞭だという事だろう。これだけ濃い魔力が流れていれば、その発生源がすぐに分かって然るべきだが…。


 コン


 何かが音を鳴らす。それを耳にしたルフトとミラージュはコントを中断して周りを見回した。

 薄暗く、埃が舞っている中央区支部内は不気味のひと言に尽きる。


「ミラージュ。ちょっとばかし真面目に行こっか。嫌な予感がしてきたかも。」

「うん。そうだね…っ。私も嫌な予感がするんだよ。」


 頷き合ったルフトとルーチェは、意を決して建物の奥へと進んでいったのだった。

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