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Colony  作者: Scherz
第六章 終わりと始まり
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15-2-6.魔法街戦争勃発

 ボンッという音が響いたかと思うと、中央区支部3階の一部分の壁が内側から吹き飛び破片を撒き散らす。空いた穴からは黒煙が上がり、時々火の粉も混じって噴き出ていた。

 爆発の原因は中央区支部に侵入した人物か…それとも別の人物かはわからないが、戦闘に類似する何かしらの行為が行われたのは明白である。

 この爆発を認めた瞬間に龍人は目付きを変え、寝転がっていた体勢を瞬時に膝付きの動き出しがしやすい体勢へと変えていた。


「遼!タイミングを計って北側に抜けるぞ。戦闘に巻き込まれたとしても、払いつつ抜ける。」

「おっけー。俺は出来るだけ牽制を掛けられるようにするよ。」

「頼んだ。………。」


 タイミングを計る。今は爆発が起きた事で周囲で静観していた人々が動き始めているのは探知結界から分かる情報だ。恐らく、誰かが動き始めた瞬間に場が一気に動くであろう状況。

 中央区支部という中央区の要を押さえることができれば、各区での戦闘が激化した際に大いに有利になる。だからこそ、この場に集う者達は最良のタイミングを見計らっていた。

 既に1人、恐らく爆発を引き起こした張本人が中央区支部に侵入しているが、1人なら大した問題ではない。複数人で攻めれば勝てるはずというのが大方の見立てであろう。

 煙の匂いが辺りに立ち込め、再び中央区支部の建物内で爆発が起きる。窓ガラスが内側から吹き飛び、壁に亀裂が入る。

 このタイミングで6名の人が青果店から中央区支部に向けて飛び出した。所属は…不明。しかし、その統率された動きから中々の手練れである事は想像に難くない。

 6人は先頭2人が横に並びその後ろ外側に1人ずつ、さらにその外側に…という三角形のようなフォーメーションで中央区支部の正面玄関に向かっていた。問題なく突入…かと思われたが、横槍が入る。

 水で作られた鳥が高速で飛翔し、6人に左横から突撃。そして触れた瞬間に爆発して左側の3人を吹き飛ばした。

 この攻撃を放ったのは…白の忍者装束に身を包んだ4人組だった。全員が右足を前に出し、右手を6人組に向けて伸ばし、手先は銃を模しているのか親指が上向きに立ち、人差し指と中指が揃って伸びている。戦隊物のドラマで考えれば、悪者をヒーローが倒しに来た構図に間違いないが、今は違う。どちらが正義の味方かもわからないし、むしろこの状況下で正義が存在するのかも怪しかった。

 其々が其々の正義を掲げ、それを守る為に相手を攻撃する。言ってみれば全員がヒーローであり、全員が悪者でもあるのだ。

 忍者4人組は首に巻いた布を靡かせながら…攻撃を直撃させた6人組に向かって走り出し、銃に模した右手から水弾を連射する。水弾はフォーメーションが崩れた6人に容赦なく突き刺さり、小規模の爆発の花を連続で咲かせていった。


(容赦無いな…。ただ、この動きのおかげ周りの奴らも動き始めたか。)


 忍者4人組の登場によって場は大きく動き始めていた。別の建物から飛び出して中央区に向かう者。それらを阻止すべく横から攻撃を放つ者。中央区支部の建物の周りに居る者達を遠距離から狙撃しようとする者などなど…。ものの1分程で中央区支部を取り巻く環境は静寂から乱戦に変わっていた

 そして、この乱戦が本格化する直前に龍人と遼は駆け出していた。狙うルートは中央区支部を飛び越えて一気に北へ抜けるルート。上手くいけば他の勢力と鉢合わせずに抜けられる可能性に賭けたのだ。走り、魔力を纏い、中央区支部の屋上目掛けて飛ぶ。

 ここまでは順調。屋上まで残り半分の所で風の刃が無作為に飛んでくるが、龍人はその軌道を予測して無難に避けることに成功する。視線を下に向けるがこちらを狙っている風の人は見当たらない。


(流れ弾か?)


 少し離れた場所を飛ぶ遼に目線を送るが、遼も自分を狙う者は見つけられなかったようで、軽く首を傾げていた。

 流れ弾であるのなら問題は無い。あとはひたすらに北区を目指すのみ。


「よし!」


 無事に中央区支部の屋上に降り立った龍人と遼は、休む事なく建物の反対側目掛けて走り出していた。建物の中心部分付近に到達した龍人は上空からの魔力反応を感知する。嫌な予感がして大きく横に飛び退くと、元いたその場所に風の刃が怒涛の勢いで突き刺さっていた。


「誰にも見つからずにってのはやっぱり厳しかったか…!」


 上空を見上げると、1人の人物が舞い降りてくる。全身黒尽くめのライダースーツにグラサンという…一昔前に流行っていそうな格好をした男だ。音も無く華麗な着地を決めた男は龍人と遼の顔を見ると、何故か指で眉間を押さえるような仕草を取る。パーマの掛かった短い黒髪とグラサンが妙にマッチしていて、絵になる立ち姿である。


「………らか。」


 ボソッと何かを呟いた後、ライダーグラサンは右手に人差し指をビシッと龍人に向けて指した。


「君達ね…屋上で何をしでかそうと企んでるのかは分からないけど、俺がここにいる限り悪さは出来ないと思ってもらった方が良いよ。」


 緊迫した状況のはずなのだが…なぜかライダーグラサンの話し方は気が抜けるものだった。龍人は体から緊張感が抜けていくのを感じながら、それでも警戒は解かずに、敢えて馴れ馴れしい話し方を選択する。


「…いや、俺たちはただこの区域を戦闘をしないで抜けたいだけだ。だから見逃してくれないか?」

「……それは出来ないよ。君達が怪しく無いって保証はどこにも無いからね。」

「そりゃそうだな。…けどよ、俺たちからしたらお前の方がよっぽど怪しいぞ?格好も怪しいし、中央区支部の屋上を一人で守ってる事自体も怪しい。そうやって正義の味方を気取ったふりをして、実際はさっき中央区支部を爆破した奴の仲間なんじゃないのか?」

「はぁぁ!?こわいこわい!俺がそんなことする訳ないだろ!」

「いやいや、そういうんだったら俺たちが何もしないからこの区域を抜けたいだけってのも信じろよ。」

「それとこれとは別だろ!」

「いや…だから別じゃないって…。」


 話が上手く繋がらない事にイライラし始めた龍人は、最悪の場合強行突破もやむを得ないと夢幻を構えた。


「…!?やっぱり悪巧みしてたな!」


 ライダーグラサンは何故かビビったように一歩後ずさりしながら叫ぶ。この反応に龍人と遼は思わず顔を見合わせてしまう。そして、龍人が疲れたと言わんばかりに首を横に振ると、遼がため息をつきながら口を開いた。


「あのね、ここで遊んでる余裕は無いんだよね。君の目的は中央区支部を守る事で間違いない?」

「勿論!そうじゃなきゃ、好んでこんな所に来たりはしないよ。」

「うん。それなら俺たちと戦うのは無意味だと思うんだ。俺たちの目的も方法は違えど同じ中央区を…魔法街を守る事なんだよだから、ここで戦って変に体力を消耗する必要は無いと思う。」

「………くそっ!」


 遼の説得が功を奏すかと思われたが、ライダーグラサンはガンっと足下を乱暴に踏みつけた。


「俺だって…俺だってさ、それくらい分かってるんだよ。でも、でも!それが許されない状況ってのもあるんだ!………もう話してる時間は無い。俺は俺の任務遂行のためにお前達をここから先に進ませないんだ!」


 ライダーグラサンを中心に風が巻き起こる。


「…駄目か。遼!先に行って侵入経路を探っててくれ。ここで2人が足止めを食らう必要は無いだろ。」

「分かった!」


 遼は力強く頷くと屋上を駆け出した。


「待てぇ!行かせるわけにはいかないんだよ!」


 叫ぶライダーグラサンが遼へ右手を翳すと、風弾が生成されて連射される。背後からの攻撃に等しい攻撃だが、遼は一切振り向くことなく走っていた。その理由は単純。仲間を信じているからだ。


「残念ながら、俺たちの邪魔もさせる訳にはいかないんだよ。」


 銀の煌きが縦横に走り、風弾が弾かれ、断ち切られる。結果、遼は無傷で北区側の屋上端へたどり着き、チラッと龍人達の方を見たのちに屋上から飛び降りて姿を消したのだった。


「くそ…。俺だって、俺だって必至なんだ!お前らに俺の、俺たちの計画を狂わせる訳にはいかないんだよ!」


 数多の風刃が現れたかと思うと、嵐のように吹き荒れて龍人へ襲い掛かってくる。


(この程度の攻撃なら…龍人化を使わなくても大丈夫か?油断は禁物だけど、無駄に魔力をここで消耗するのも避けたいな。危険だけど、少し様子見をさせてもらうか。)


 相手の実力を冷製に分析した龍人は、夢幻の刀身を這うように魔法陣を展開。外側から内側へ振りぬきながら魔法陣を発動し、荒れ狂う風刃を放った。

 2つの風刃郡が激突する事によって生じた衝撃波が屋上の床を抉り、拡散していく。


「…うし、これまでの特訓の成果をここで試すか。」


 ライダーグラサンを頃合いの相手として認識した龍人はニヤリと不敵な笑みを浮かべるのだった。

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