5-1-9.対人戦トーナメント
ルーチェは両手を龍人に向けて、眩い閃光を放つ。戦闘に於ける常套手段のバッドステータス…目眩ましを狙った攻撃だ。
龍人は咄嗟に腕で閃光から目を守る。後ほんの少し遅ければ、一時的ではあるが視力を奪われていたはずだ。
だが、この腕で目を守るという行為も一瞬ではあるが、視界を閉ざす事に変わりが無かった。龍人が目を開けると、風景が一瞬で様変わりしていた。
(なんだこりゃ。砂漠の蜃気楼みたいにユラユラしてやがる。)
視界に入る物全てがユラユラと揺れ、歪んでいる。平衡感覚が乱される感覚に龍人は警戒心を強める。周囲の物全てが歪んでいる事から、ルーチェの魔法による効果範囲がかなり広く、それを操るルーチェの実力を窺い知る事が出来る。
(光を操って、まともに認識させないつもりか。こりゃあ、対抗策が全然思いつかないなぁ。)
どう動くか悩んでしまう龍人の視界の右端がキラっと光る。反射的に目をそちらに向けると、光が一直線に龍人を目掛けて走ってきていた。龍人は防御壁を右側だけでなく、自身の周囲に展開し衝撃に備える。…とある懸念が頭を過ぎったからだ。
ドガァン!
左からの衝撃に龍人は思わず右へと倒れてしまう。
(やっぱりか!目に見える物が全てその位置にあるとは限らないってか?)
そう、右から来ると思った攻撃の衝撃は無く、代わりに左から衝撃が龍人を襲ったのだ。周囲が歪んでいた事から、視覚の撹乱があると予想して、念の為に周囲に防御壁を展開したのが功を奏したようだ。
(さて、こんなんじゃ戦いにすらならないな。…だったら、いっそのこと全部見えなくしてみるか。)
龍人が手を上に翳すと、少し大きめの魔法陣が展開された、辺り一面に濃霧を吐き出し始めた。
 
 




