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Colony  作者: Scherz
第六章 終わりと始まり
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15-1-4.街立魔法学院、戦略会議



 龍人と遼はヘヴィー達の会話を聞きながら小さい声で話し合っていた。


「なぁ、ラルフの反応が過剰じゃないか?」

「うん。俺もそう思う。なんていうか…区間で戦う事を本気で嫌がっているっていうか、止めたいっていうか…必死な感じがあるよね。」

「だよな。なんであんなに拒否るんだ?確かに区間で戦うのは良くないし、それが天地の思惑だとしたら全力で止めたいよな。ただ、ラルフの場合はなんつーか拒否反応っぽく見えるんだよな。」

「もしかしたら…魔法街戦争の時に何かあったんじゃないかな?」

「それあり得るな。大切な人を失ったとかかな。」

「あの反応を見る限りだとそういう系な気がするよね。」


 あれこれと推測が進む内にヘヴィー達の話は、ギルドの防衛部隊を止める事が難しいので様子見とし、魔導師団がどう動くかの話に移っていた。


「……なるほどなのである。では、そのプランで様子を見るのである。」


 ヘヴィーは第7、8魔導師団の面々を眺めると小さく頷く。


「これより、第7魔導師団は中央区に赴き東区、北区、行政区及び中央区の情報を収集するのである。第8魔導師団は南区内で万が一に備えて待機。内側からクーデターが起きないように目を光らせて欲しいのである。」

「内側からクーデターって、そんな事起きんのか?この状況で天地のメンバーが南区に潜伏している可能性は低いんじゃ無いか?」


 ヘヴィーの眉がピクリと上がる。


「龍人よ、その考え方は甘いのである。今回起きた一連の流れから考えて、各区に天地の工作員が潜んでいるのである。これは私個人の推測ではあるが、今回の防衛部隊募集の依頼をギルドに出したのが本当に南区支部長なら…彼もまた天地の工作員である可能性が高いのである。」

「…!おいおい、支部長が天地の工作員だったら南区が乗っ取られてるも同然じゃないか。」

「他にもあるぜ。支部長がその依頼を出すって事に普通は魔法協会ギルドが怪しむ筈だ。それなのにこれだけスムーズに募集が開始されるってのもキナ臭い。」


 煉火の言葉に龍人は考え込んでしまう。

 ヘヴィーや煉火が言ったことを真実だと仮定するのならば、このまま呑気に動けば…気付いたら敵に囲まれていたという可能性も否めないのだ。


「そうすると…俺達が信じられるのは魔導師団のメンバーとヘヴィー学院長、ラルフ、煉火だけって事か?」

「そうとも言えないわね。」


 異論を挟んだのは火乃花だ。厳しい表情で腕を組んだ火乃花は皆の視線を集めながらも、動じる事なく続ける。腕を組む事で巨乳が強調されているが、流石にラルフもセクハラはしないようである、


「まず、支部長が天地のメンバーである可能性を否定できない以上、ここにいる誰かが天地のメンバーでないとは言い切れないわ。」

「おいおい火乃花。実の兄ですら疑うのかよ。」


 困ったような表情を見せながら、煉火が咎めるように言うが…火乃花は肩をすくめるのみ。


「だってそうでしょ?行政区の警察庁ってエリート組織にいるのに、あんなベストタイミングで現れて、しかも魔瘴クリスタルの売人と戦ってる時に各区が引き寄せられて。…自然と私達と一緒にいるけど、普通に考えたら兄さんは中央区で各区の戦闘が引き起こされないように警備に当たるべきじゃない?」

「だから、それは俺が上層部のやつらに好きに動いていいって許可を貰ってだな…。」

「そもそもその話自体が怪しいって事よ。兄さんだからあり得るけど、普通は上層部にあぁだこうだ言える人はいないわ。そして、兄さんがそうだと分かっているからこそ、私達はその言葉を信じやすくなってしまっている。これは否定できないわよね?」

「う……。実の妹にここまで疑われると、地味にへこむな。」


 ズゥッゥウン。という効果音が見える位に肩をがっくし落とした煉火を見て、火乃花はもう一度肩を竦めた。


「さっきも言ったけど、あくまでも仮定の話よ。この状況だったらそこまで疑わなければダメだと思うわ。もちろん兄さんの事は信じたいとは思ってるわよ。」

「妹よ…!」


 何故か芝居掛かった動きで火乃花に抱きつこうとする煉火。だが、火乃花はヒョイッと煉火を避ける。無表情なのが逆に怖い。


「よっし!そんなら俺達第7魔導師団はここにいるメンバーは信じるもんね!」


 突然、そして爽やかに言い切ったルフトはこれまた爽やかにニカッと笑みを見せた。


「ルフトちゃん…火乃花ちゃんの言う事聞いてたの?誰が敵のスパイでもおかしくないんだよ?」


 ミラージュが呆れながら言うが、ルフトは爽やかな笑みを崩さない。


「だってさ、信じなきゃ。例え敵かもしれなくても、それでも俺達は信じて動かなきゃダメなんだよっ。俺達が南区の柱なんだからね。」

「ルフトの言う通りだな。」


 これに同調したのはラルフだ。


「確かに誰が敵か分からない状況だ。だけど、俺達が信じ合わないと敵の思うツボになっちまう。やつらは…天地は俺達を内側から崩しにくるはずだ。絶対に疑わない信じる仲間がいれば、それだけ俺達に勝機が生まれる。」


 肥満体型で普段はおちゃらけた態度とセクハラしかしないラルフだが、真面目な顔で発言するとそれなりに威圧感が出るものである。

 ラルフの言葉に異論は無いのか、その場にいる全員が無言で頷く。各々の目には力強い光が宿っていた。自然と一体感が生まれる中、それに同調しない者が1人。


「あ〜…っと、俺は別行動をさせてもらう。今回は誰も信じないって決めてるからな。行動指針は一緒だが、魔導師団の中に裏切り者がいたらそれだけで全てが瓦解する。俺はそれを防ぐ最後の防波堤になる。」

「兄さん…少しは空気を読んだらどうかしら?」

「ははぁん。さっき俺を疑うような事言っておきながら、それは無いだろ。良いんだよ。俺は俺だ。」

「ほんと相変わらずよね。」

「ほっとけ。それで良いんだよ。」


 最終的に持論を展開する煉火に呆れ気味の火乃花だが、確かに煉火の言うことも間違ってはいないのも事実。

 ここでヘヴィーが話はおしまいとばかりに手を叩いた。


「話し合いはこの辺りでよいのである。それでは…先程伝えた方針通りに動くのである。私は基本的に煉火と同じように自由に動かせてもらうのである。ラルフは魔法協会南区支部の様子を監視しつつ、中央区との境界線付近の警戒をするのである。」

「分かりました。」


 こうして街立魔法学院における戦略会議は閉幕となったのだった。

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