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Colony  作者: Scherz
第六章 終わりと始まり
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15-1-3.街立魔法学院、戦略会議

 街立魔法学院学院長室のドアを開けると最初に声を掛けてきたのは金髪のフェザーウルフヘアを揺らす青年団だ。


「よっ!龍人とレイラじゃん!久々…?だよねっ!」

「ルフトか。って事は後ろにいる人達が第7魔導師団の皆さんか?」

「ん?…あ、そっか。そう言えば第7と第8であった事なかったんだね。そしたら紹介しちゃうんだもんねっ!」


 身長が185cmある龍人よりも身長が高いルフト=レーレは、爽やかに笑うと隣に立つ魔法少女風の格好をした女の子を指差す。


「この魔女っ子がミラージュ=スターだよ。性格はお転婆系だけど、光魔法のスペシャリストかな。」

「ちょっとルフトちゃん!私がお転婆系っていうのは納得がいかないんだよっ。…ニシシ。そんな紹介するんならルフトちゃんのあられもない話を私がタップリと…。」

「あー!!分かった分かった!ミラージュは癒し系の女の子だよ!」

「ニシシっ!それなら黙っといてあげるんだよ。」

「おいおいっ!今ここでいつものコントはやらなくていぃだろっ。」


 額に手を当てながら溜息を吐いたのは腰まである赤髪をふわっと一本で後ろに纏めた姿が特徴的で、パッチリとした目、身長は一般的よりも低めな…一見すると女性に見えなくもない青年だ。


「お、カイゼか。久しぶりだな。…そっか、そういや禁区で会った時に第7魔導師団って言ってたっけ。完全に忘れてた。」

「龍人…同じ魔導師団なんだからそれ位は覚えておいてくれよっ!」

「悪い悪い。でもってカイゼの隣にいるのが第7魔導師団のもう1人か?」


 龍人が視線を向けた先に立っているのは、肩甲骨辺りまであるゆるいウェーブが掛かった黒ロングヘアーを揺らし、タラコ唇っぽいアヒル口と眠そうだけどパッチリ二重か特徴的な女性である。可愛らしい顔をしているのだが、裏の表情もありそうだな…と龍人が思ったのはここだけの秘密である。

 その女性はペコリと頭を下げる。


「龍人君とレイラさんだよね。私はララ=ディヴィーネ。よろしくね。」


 その話し方は特徴的で…なんと表現すれば良いのか…話し方が何となく諭す系の雰囲気を漂わせていた。


(これは敵に回したら…というか口論をしたら完敗しそうな気がするな。うん。仲良くしよう。)


 密かに決心した龍人は第7魔導師団の4人を見回す。


「一応改めて自己紹介するな。俺は第8魔導師団の高嶺龍人だ。」

「あ、私はレイラ=クリストファーです。」

「ニシシっ。よろしくねー!そう言えば残りの2人はどうしたの?」

「それが…火乃花の兄さんの煉火と一緒にキール=ビルドって奴の店に向かって、その後に今回の事件が起きたからどうなってるのかが分からないんだ。」

「えっ!?煉火って…霧崎家の長男の霧崎煉火?」


 驚いた表情で固まるのはルフトだ。


「ん?そうだけど…そんなに驚く事か?」

「いやいや驚くでしょっ?!だって極属性家系で有名な霧崎家で歴代最強と言われてる人物だもんね。」

「煉火ってそんなに凄いんだ。」

「そんなにどころじゃないって。魔法の強靭さ、柔軟性とかどれを取ってもヤバイよ。多分だけど…魔聖に匹敵する強さだもんね。警察庁でも上の人達に平気で噛み付く精神力も持ってるみたいだしねっ!」

「…警察庁で上に噛み付くって凄いな。」

「でしょっ!?それでもって異名が…。」


 パンパンパンッ!

 龍人とルフトが煉火の話題で盛り上がりを見せているところで、手が叩かれる。何事!?…と、音のする方を見るとフカフカしてそうなソファーに街立魔法学院学院長のヘヴィーか座っていた。

 ついさっきまで防撃結界を張っていた筈なのに、いつの間にかに戻ってきているのだから驚きだ。


「ほっほっほっ。この状況においても気落ちする事なく、いつも通りなのは良い事なのである。ただ、ラルフも来たからの。そろそろ本題に入るのである。」

「いや、ラルフは正門の辺りで南区の人達を対応してたから来れない気が…。」

「龍人。俺はここにいるぞ?」

「ん?…お、良くあれを収めたな。」

「まぁ収めたってか、あいつら全然いうことを聞かないからな。転移魔法で全員街魔通りの真ん中あたりに転移させといた。」


 さらっと言うラルフだが…そんなぞんざいな扱いをして怒りがヒートアップしないかという不安は残る。ヘヴィーも同じ事を感じていたらしく…。


「ラルフよ。それでは解決していない気がするのである。」

「まぁそうですね。」


 肥満体型のラルフは顎についた肉をポニョっと触りながら眉根を寄せた。


「ただ、これから調査をして方針を決めるって言っても、他区にやられる前にとか、どうやって区同士をもう1度切り離すのだとか、普通にその場で答えられるわけが無い事ばっかりを喧しく聞いてくるんですよ。流石にイラッとしますよね。まぁ…あいつらも不安の捌け口が欲しいだけだと思うので、そんなに問題はないかと。」

「ラルフちゃんが問題無いって言ってたら大丈夫なんだよっ。」


 自信満々に言ってのけたのはミラージュだ。キラキラした瞳をラルフに向けていた。


「ふむ、である。まぁ、彼らの対応をしていて状況が好転する訳でも無いのは確かであるな。なら…しょうがないのかのぉ。」


 何やら思案するようにしながら、ヘヴィーは右手人差し指にはめた黒い宝石がついた指輪を触る。そして、横に置いてあった杖に手を伸ばした。色は漆黒。上部は半円を描き、その中には6つの花弁を持つ星の輪郭を形どったモチーフがはめ込まれている杖だ。


「…悩んでいてもしょうがないのである。まず、魔法街の状況の整理と、今後の行動方針を伝えるのである。」


 スッとヘヴィーが纏う雰囲気が優しいお爺ちゃんから、魔聖としてのそれに変わる。


「これから起こりうると予想される事態じゃが、中央区を主戦場とした北東南区間による三つ巴の戦いなのである。」

「いやいや、そんな簡単に戦いへ発展する事はないと思いますよ?」


 肉付きの良い顎をポニポニ触りながら、首を傾げるラルフ。


「ラルフよ、甘いのである。私達は天地の存在を知っているから冷静にいられるのである。今、この星に住む人々はこの状況をどのように認識しているとわかるのであるか?」


 と、ここでガチャリ。…とドアが開き、学院長室に赤い髪の巨乳女性…霧崎火乃花。短髪黒髪の面長な狐顔で切れ目のイケメン…藤崎遼が入ってくる。その後ろからは縁に赤と黒の刺繍が入った白い制服を着て、金色の杖が刺繍された帽子を被った男が入って着た。


「やっと到着であるか。火乃花、遼、そして霧崎煉火よ。」


 話が中断されたのにも関わらず、ヘヴィーは穏やかな声色で入ってきた3人に声を掛けた。


「あぁ。遅くなって悪かったな。天地のキールって奴とやり合ってたんだけどさ、まぁー中々な実力者でよ。中央区を破壊しないようにって制限の中で戦ってたから押しきれなかったんだよな。」

「ほぅ…制限があったとしても、お主とやり合うとはそこそこの実力者であるな。」

「だな。んで、ヘヴィー学院長が言ってた事なんだけどよ…。」


 ここで煉火は一旦言葉を区切って学院長室にいる面々を見渡した。

 このタイミングで火乃花が意味ありげな視線を龍人に向けてくるが、その意図を理解しきるのは難しかった。だが、何やら嫌な予感がするのは…煉火が言った言葉を聞いて間違いがなかったと龍人は知る事となる。


「この星に住む人々は…いや、各区に住む人々は今回の事件は他区による陰謀だと思ってるだろうな。魔法街統一思想を浸透させ、ひとつの方向に纏まって向かい始めた矢先に謎の人物が現れ、魔瘴クリスタルが魔法協会の各区支部で見つかり…挙げ句の果てに区同士が引き寄せられる。極め付けに各区から各区へ中規模程度の攻撃魔法が放たれる…と。」


 煉火は帽子のツバに手を掛けるとポンっと脱ぐ。赤い髪がサラッと流れ、エロい雰囲気を漂わせた。


「俺達が何かを言ったとしても、もう手遅れだ。あの謎の人物でさえ、どっかの区によるパフォーマンスだって言われちまってるからな。魔聖が止めても、魔導師団が止めても区間の衝突は避けられない。現に…ギルドでは防衛部隊の募集が始まってるしな。」

「はぁっ!?そんなん聞いてないぞ!?」


 激しく反応したのはポニポニ顎を触るのをやめ、眉間にしわを寄せて腕を組んで大きな声を出したラルフ。


(…ラルフにしては反応が過剰な気がすんな。)


 原因は分からないが、いつものニヤニヤ笑いを浮かべてセクハラを堂々と繰り返すラルフとは別人の様な態度である。


「煉火。ギルドが防衛部隊を募ってるってどーゆー事だ?もし、防衛部隊が区の境目に常備でもされてみろ。戦闘の意志ありとみなされるだろ。それこそ収まりがつかなくなっちまう。」

「そうなんだけどよ…防衛部隊の募集をかけてるのは南区支部長だぞ。俺はてっきりヘヴィー学院長とか、ラルフが言ったのかと思ってたんだけど…どうやら違うみたいだな。」


 煉火は額に手を当てると憂いたように溜息をつく。ナルシスト…とかいう訳ではなく、ナチュラルに、そしえいやらしさなくやっている辺りが、世の男性からしたら憎らしい事この上ないだろう。


「…むぅ、困ったのである。どうやら私の知らない所で様々な思惑が入り乱れているみたいなのである。」

「このままだと確実に区間の戦闘が始まるな。」

「それだけはダメだ。もう2度とあんな悲劇は繰り返しちゃダメなんだ。俺は…例え仲間を売ったとしても、魔法街戦争の再来は防ぐぞ。」


 ヘヴィー、ラルフ、煉火の3人による話が続く中、龍人は先程から感じている違和感について遼と小声で話していた。

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